1. 富士山の地質と火山 The geology of Mt. Fuji and volcano.

富士山の地質

 富士山は均斉のとれた美しい成層火山である。最高峰は富士山測候所があった剣が峰で海抜高度3776mある。地形図で見ると、その等高線は北西ー南東方向に長軸を持つ楕円形をしている。この長軸の方向に多くの側火山(寄生火山)が分布している。この方向性は箱根火山、伊豆大島でも同じである。このような方向性は、この地域がフィリッピン海プレートの北西方向への移動による力を受けていることを示している。北西ー南東方向が圧縮軸で北東ー南西方向が引っ張り軸である。地殻の割れ目は圧縮軸の北西ー南東方向に生ずる。
 富士山の西方には天子山地、北方には御坂山地、北東方には丹沢山地があり、いずれも第三紀の地層からなる。
 また、富士山の南方の愛鷹火山は約30万年前に、東方の箱根火山は約40万年ほど前に活動始めた古い火山である。
 富士山の北の山腹には小御岳という古い火山の一部が顔を出している。また小御岳火山の下には、別の古い火山(先小御岳火山)が隠れているようである。
Fuji Volcano is a composite strato volcano consisting of alternating lava flows and pyroclastics. It is composed of three different volcanoes, Pre-komitake, Komitake, Fuji volcano(Ko-Fuji and Shin-Fuji).
Fuji Volcano located around a four junction of North American, Eurasian, Philippine-Sea and Pacific Ocean Plates.
A parasitic cone of Mt. Fuji is distributed from the northwest in the southeastern direction.





富士山の地形と側火山( The topographic map of Mt. Fuji.)
 富士山の側火山( ・ )は北西から南東方向に約70個分布している。(津屋1943)
従って、次の噴火活動もこの方向に行なわれる可能性が大きい。


富士山の地質図(The geologic map of Mt. Fuji.町田1965,津屋1968に加筆)
 赤色(8)の最新期溶岩流(約2000年前から)は丸尾(まるび)と呼ばれている。それぞれの溶岩流の火口は富士山頂側の高所にある。
 画像の上にマウスポインタを置くと全体の地質図になる。
 1:基盤の新第三系,愛鷹山、箱根山
 2:小御岳火山 
 3:古期富士1期の噴出物(10万〜3万年前)
 4:古期富士2期溶岩流(約1万年前、三島溶岩など)
 5:扇状地砂れき層
 6:新期溶岩流(約5000年前)
 7:御殿場泥流(約2500年前)
 8:最新期溶岩流(青木ケ原溶岩、剣丸尾など)
二ツ塚(富士山の南東山麓にある寄生火山)

二ツ塚
 二ツ塚は富士山の南東山麓にある側火山である。水ケ塚駐車場より撮影。
This twin parasitic cone is FUTATSUDUKA.
富士山の代表的な玄武岩の溶岩

富士山の岩石
 富士山が噴出する溶岩は玄武岩である。
写真は青木ヶ原の玄武岩溶岩である。
白い大きな斑晶(1〜10mm)はシャチョウ石、
黒い数mmの輝石、暗緑褐色のカンラン石も肉眼で観察できる。
写真の黒い斑点は大部分が気孔である。
This rock is basalt lava on Mt. Fuji.


 富士山は成層火山に属する。成層火山のように多数回の噴火でできた火山は複成火山とも呼んでいる。複成火山は、繰り返し噴火することによって、地下にマグマの火道が太いパイプ状にでき、このパイプを使って何回でも噴火を繰り返すのである。日本の複成火山の平均的な寿命は数十万年で、体積は100km³程度である。富士山は噴火を始めてから約10万年で,体積は約400km³あり、ずば抜けて大きい。
 この複成火山に対して、1回(約一ヶ月)の噴火でできた火山を単成火山と呼んでいる。マールや砕屑丘はほとんど単成火山である。単成火山の場合には、マグマが割れ目に沿って貫入し、割れ目が地表に達すると、噴火が始まる。マグマの補充が少なく、噴火は短期間で終り、割れ目や火口のマグマは冷え固まり、次の噴火は別の場所で起こる。
 宝永噴火のような側噴火は、単成火山で、割れ目噴火から始まり、次第に噴火が偏っていき、直線上に第1火口、第2火口、第3火口が並ぶようになった。このように単成火山は大型の複成火山の側火山として分布することが多い。しかし、伊東市を中心とする大室山、一碧湖、小室山、矢筈山、1989年の手石海丘などの東伊豆単成火山群には主となる複成火山がない。このような単成火山群を独立単成火山群( Indepent group of monogenetic volcanoes )とよんでいる。
 
火山について

 マグマが地表へ、溶岩として流出したり、テフラ(スコリア、軽石、火山灰、火山ガス)として噴出し、火口周辺に堆積して火山となる。また、マグマが地表へ噴出しなくても、地表を隆起させたり、水蒸気爆発により、火口が生じた場合も火山という。一般に、火山地形は、第4紀の火山活動によって形成されたものであり、第三紀以前の古い火山地形は浸食や地殻変動で原型が残っていない。
 火山活動は、火山の直下にあるマグマ溜まりからマグマが上昇することから始まる。上昇に伴い、火山直下の浅いところに群発地震が発生し、次第に激しくなる。火山体の膨張もおこり、ついに噴火が始まる。噴火活動は、火山によって様々だが、一つづきの噴火活動(一輪廻の噴火)は、数十日から数百日継続する。

(1)火山の形態、構造からの分類

久野 久は形態的及び構造的に、火山を下図のように分類している。

 
灰色:テフラ、  ピンク:溶岩、 :水

(2) 火山活動に使われる用語

 重量%⇒  珪酸 酸化
アルミニウム 
 酸化鉄  酸化
マグネシウム
 酸化
カルシウム
酸化
ナトリウム 
 酸化
カリウム
水・その他   計
 玄武岩
(富士山)
 51  18  10  5  10  3  1  2  100
安山岩
(浅間山) 
 60  16  7  4  7  3  1  1  99
デイサイト
(有珠火山) 
 70  16 4  1  4   3  1  1  100

(3) 火山噴火の形式

(4) マグマについて

  マグマは図のような、島弧 island arc、ホットスポット hotspot、海嶺 ocean ridge などでつくられる。

島弧 island arc では、沈み込んだ海洋性プレートの上面が深さ100km〜150kmに達するとメルトmelt(岩石が融け始めた液体)ができ、上昇を始める。この真上を火山フロントと呼び、火山列を形成する。日本列島には、北海道から東北地方、中部地方を経て伊豆諸島からマリアナへ連なる、東日本火山帯と、、大山から九州を経て、琉球列島へ連なる西日本火山帯がある。前者は太平洋プレートの、後者はフィリピン海プレートの沈みこみが原因の火山フロントである。島弧における岩石の上昇流は沈み込むプレートが水を含んだ堆積物や付加体を上部マントル(100〜150Km)へ持ち込むためと考えられている。水を含む沈み込んだプレートは著しく融解温度が下がり、メルトが生ずる。メルトを含むと密度が小さくなり、浮力が生じ、上昇流となる。上昇するメルトを含むマグマは周囲の岩石の密度と同じになった所で、上昇を止め、マグマ溜まりをつくる。マグマは液体のメルト、蒸気、高温の状態で結晶する鉱物などからできている。

ホットスポット hotspotはハワイ諸島のようにプレート内にできる海洋島で、プレートより深いところからマグマを形成するマントルプリューム mantle plumeという上昇流を考えている。

海嶺 ocean ridge はプレートの裂け目に大量のマグマが入り込んでくる大規模な火山現象で、プレートが誕生している場所である。大洋底に連なる大山脈は海嶺で、大西洋中央海嶺、東太平洋海嶺、インド洋中央海嶺などがある。

 
マグマの発生場所
 マグマは沈み込み帯の島弧、ホットスポット、海嶺など
特定な地域で生産され、火山活動を行なう。

 ・ 沈み込み帯におけるマグマの発生。
 沈み込むプレートの表面に沿って深部へ持ち込まれた含水カンラン岩は脱水分解反応を行い、反応で放出されたH2Oが増加していく。
下図のA付近ではソリダス温度に達していないのでメルトはできない。B付近(深さ110Km)でソリダス温度になり、角閃石や緑泥石などが脱水分解反応をおこない、メルトができ、密度の低下により、浮力を受けて上昇し、海溝側火山列のマグマができる。C付近(深さ170Km)では金雲母などが脱水分解反応を行う。この付近で背弧側火山列のマグマがつくられる。海溝側火山列で、より多くの火山ができるのは、H2Oの供給量が大きいためである。
(巽 好幸 1997 「沈み込み帯のマグマ学」より)

 

 上部マントルにおけるカンラン岩(ペリドタイトperidotite)が溶けてさまざまな組成のマグマができる。
 カンラン石、輝石、ガーネットなど複数の鉱物からできているペリドタイトを熱すると、ある温度でメルト(マグマ)が生じる。この温度をソリダス温度という。更に温度を上げると、さまざまなマグマができる様子を相平衡図で結晶A、結晶Bの2成分について,理論的に考えてみる。(藤井敏嗣 1997を参考にした)

 

 高温実験で、結晶Aと結晶Bの組成比がXA:XBの岩石を加熱していく。温度がTeになったとき、Eの組成をもつメルト(マグマ)が最初に生じた。この温度Teをソリダス温度と呼んでいる。さらに温度を上げ、Tbになると結晶Bは溶解してなくなり、さらに温度を上げていき、Taになると結晶Aも溶解し、すべてマグマ(液体)となる。Taをリキダス温度と呼ぶ。またメルト(マグマ)の化学組成はEからXに向かって変化し、Taになったとき、メルト(マグマ)の組成はもとの岩石の組成と同じXとなる。
このように温度がTeからTaに変化する間に、ペリドタイトが溶けていき、その間、メルト(マグマ)が移動すればさまざまな組成のメルト(マグマ)が発生することになる。

・ 玄武岩質マグマの分類
 玄武岩質マグマを単斜輝石 Ca(Mg,Fe)Si2O6 ・ 斜方輝石 (Mg,Fe)SiO3 ・ カンラン石 (Mg,Fe)2SiO4 ・ 斜長石 CaAl2Si2O8-NaAlSi3O8 ・ネフェリン NaAlSiO4 ・ 石英 SiO2 の組み合わせで表わすと下図のように4面体を3つの部分に分けられ、次のように分類される。
@ アルカリ玄武岩 alkaline basalts :ネフェリンnephelin を含む.。その他カンラン石、単斜輝石、斜長石を含む
A 石英ソレアイト quartz tholeiites :石英を含む。その他単斜輝石、斜方輝石、斜長石を含む。
B カンラン石ソレアイト olivine tholeiites :ネフェリン、石英とも含まず、カンラン石、単斜輝石、斜方輝石、斜長石を含む。

 

 高温のカンラン石ソレアイトマグマから初期に晶出する鉱物のカンラン石・単斜輝石・斜長石などが晶出した残液は石英ソレアイトマグマの化学組成領域に入る。従って、石英ソレアイトマグマはカンラン石ソレアイトマグマから結晶分化作用でつくられることがわかる。しかし、カンラン石ソレアイトマグマとアルカリ玄武岩質マグマの間ではそうした関係がない。そういう意味で、臨海面はアルカリ岩と非アルカリ岩(カンラン石ソレアイト、石英ソレアイト)の境界である。非アルカリ岩は沈み込み帯に多い。
非アルカリ岩の中には、SiO2の増加にしたがってFeO+Fe2O3が増加するソレアイト系列(tholeitic rock series)と、FeO+Fe2O3が減少するカルクアリカリ系列(calc-alkaline rock series)とがある。
 富士山の玄武岩溶岩はカンラン石ソレアイトである。

  
 上部マントルにおけるカンラン岩(ペリドタイトperidotite)の融点(ソリダスsolidus)と温度・圧力の関係

 地下の温度上昇は場所によって違うが、1Kmにつき約20℃である。深さ100Kmになると2000℃になり、地表付近ならば岩石はどろどろに溶けてしまう。しかし、地殻やマントルは地震のS波(横波)が伝わることから、固体の状態である。岩石のソリダス(※1)は温度と圧力に関係あることが分かる。

 
縦軸は圧力(GPaギガパスカル)深さ、横軸は温度である。
Takahashi.E1986,J.Geophysに加筆

 上図は地球内部の温度と圧力環境をつくり、カンラン岩のソリダスやリキダスliquidus(※2)を調べた実験結果の概略である。
地下深い所では圧力が高く、岩石は温度が高くても溶けにくいことが分かる。地殻やマントルは図の灰色の環境にある。
図の矢印で示すように、上部マントルの島弧、ホットスポット、海嶺などでカンラン岩の上昇流が発生する。上昇する岩石は圧力の低下により膨張する。この膨張する仕事に熱エネルギーを使うので温度が下がる。しかし、圧力が下がることによる岩石の融点温度低下が大きく、上昇する岩石にはメルトが生じ、ソリダスを超えて図のピンクの環境になり、メルトが増えていく。メルトの量が増えると融解熱に熱エネルギーが使われるので温度は下がるのだがメルトは増えていく。このように上昇する岩石のメルト発生機構は温度より、圧力の減少に主な原因があり、「減圧融解の機構」と呼ばれている。
 上昇するマグマは減圧による膨張や揮発性成分の発泡が行われて密度が小さくなって、上昇するのだが、地殻の岩石密度は小さいので、上昇するマグマの密度と周囲の地殻の岩石密度が等しくなり、浮力を失い、上昇を止めてマグマ溜まりをつくることになる。地震のS波などの伝わり方の調査から、多くの火山の地下数Kmから十数キロのところにマグマ溜まりが存在し、その直径は約10Kmと推定されている。(兼岡一郎 「火山とマグマ」)

・ マグマ溜まりのマグマが再び上昇し、火山噴火するのは次のような時と思われる。
@マグマ溜まり付近で地震があり、地殻の圧力が小さくなり、マグマ溜まりのマグマの発泡が盛んになったとき。(気圧が下がると水の沸騰する温度が下がるように)
A新しいマグマの補充があり、マグマ溜まりの温度が上昇し、膨張して密度が下がり、浮力をもったとき。
B外部からの刺激がなくても、時間が経過して、マグマの発泡が進み、マグマ溜まりの上部へ気泡が集まり、気体の膨張圧力が増したとき。

※1 ソリダスsolidus:岩石の温度を上げていき(或いは圧力を下げる)、鉱物の間に最初の液体のしずく(メルト)ができた温度をソリダスという。さらに温度を上げていく(圧力を下げていく)とメルトが増えていく。
※2 リキダスliquidus:ソリダスからさらに温度を上げていくと、メルトが増え、岩石全体が液体状になった温度をリキダスという。高温で結晶する鉱物は含まれている。

 マグマの変化 
 マグマには、下の表のように色々ある。玄武岩質マグマから安山岩質マグマ、そしてデイサイト質マグマ,、流紋岩質マグマへの変化は、N.L.Bowenなどによる@結晶分化作用とA異なるマグマの混合による変化があり、地下深所では条件の違いにより、この両方法が考えられている。

マグマ  玄武岩質マグマ  安山岩質マグマ  デイサイト質マグマ  流紋岩質マグマ 
二酸化珪素SiO2(重量%)   45,5%  53,5  62,7  70以上
 密度(g/cm³)  2,7  2,4  2,3  2,2
 噴出温度(℃)  1000-1200  950-1200  800-1100  700-900
 やわらかさ   さらさら  どろどろ  ねばねば    やわらかさがない
 噴火様式  溶岩流  溶岩流、爆発  溶岩ドーム、火砕流、爆発  溶岩ドーム、火砕流、爆発
 噴出物の色  黒  灰  薄灰、薄茶  薄茶、白


@結晶分化作用
 マグマの中に高温で結晶する比重の大きい鉱物は晶出すると、重力によって降下する。この鉱物が除かれた残りのマグマの成分は変化する。この結晶分化作用のみ行われるのは、ダイアピル周辺の地殻の岩石が溶けるまでに至らない場合であろう。多くの場合は結晶分化作用とマグマの混合は並行して行われるに違いない。

A異なるマグマの混合
下図a :ダイアピル(メルトを含むマントル物質の巨大な塊) がマントル内を上昇してくる。
下図b :地殻の下まで上昇したダイアピルは 地殻の岩石の密度が小さいので上昇出来なくなる。ダイアビルにはメルトが増加し、玄武岩質マグマの火山活動がはじまる(富士山)。ダイアピル周辺の地殻の岩石は溶けてデイサイト質マグマができる。このデイサイト質マグマと玄武岩質マグマとの混合により、安山岩質マグマができる。
下図c :火山は安山岩質の溶岩を噴出するようになる。最後に玄武岩質マグマの供給が無くなり、デイサイト質マグマや流紋岩質マグマを噴出するようになり、島弧の火山は数十万年の一生を終る。

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