三島市及び周辺の湧水 (2018年7月再調査を開始する。)

 三島市は、「水の都」といわれ、1970年代まで、1年を通して街の各所に、湧水が見られた。しかし、現在、冬の季節には、その多くが涸れてしまうようである。湧水は災害時の貴重な飲料水となる。
 三島市及び周辺の湧水地を富士山系と箱根山系に分けて調査している。2006年7月調査を開始し、調査は中断していたが、10年程経過したので、どのように変化したか再調査してみる。 
 下記の調査対象以外の湧水をご存知でしたら、教えて頂きたい。(aihara@mxz.mesh.ne.jp )

ー富士山系湧水ー

 調査途中だが、これまでの調査対象としている湧水地は 柿田川、清住湧水群、南本町湧水群(三島梅花藻の里雷井戸、水の苑緑地等)、竹原湧水池、白滝神社南西などである。
 写真は2005年から2018年にかけて写した写真である。湧水量は、降水量の変化、街や工業の発展による影響を大きく受ける。
謝辞
富士山系湧水については山口氏、高田保明氏、長野利男氏から情報を頂いた。



F1 柿田川  、F2 南本町湧水群(三島梅花藻の里、雷井戸, 水の苑緑地)、
  F3 清住湧水群 、 F4 竹原湧水池(窪の湧水) 、F5 白滝神社の南西

F1 柿田川(2007年4月写す)
 柿田川は三島市の西隣の清水町にある1級河川である。湧水地から約1200mで狩野川に合流する。きれいな湧水で、流域にはクレソン、ミシマバイカモが繁茂し、鮎やかわせみも観察できる。
狩野川との合流地点で水を比較するときれいさに驚かされる。
柿田川の湧水量はここ数年、冬でも1日あたり百数万トンを維持してきたが、2007年2月98万トン、3月96万トンと減少し、心配されている。(4月17日朝日新聞)
F3 清住湧水群(2018年7月30日写す)
 三島市と清水町の境に「クボッタ」とも呼ばれる湧水群がある。三島市立西小学校の田んぼやビオトープがあり、ハヤやトンボが観察される。

 
F3 清住湧水群(2018年7月30日写す)
 
F3 清住湧水群(2018年7月30日写す) 丸池
F2 南本町湧水群(三島梅花藻の里)(2018年7月27日写す)
 三島梅花藻の里は道路を挟んで佐野美術館の西隣にある。湧水のようすや三島梅花藻(ミシマバイカモ)を観察できる。

南本町湧水群は冬の季節も水が涸れない。
F2 南本町湧水群(雷井戸)(2018年7月27日写す)
 雷井戸は三島梅花藻の里の北西約30m住宅地の中にある。
直径約3mの円形井戸で、昔 簡易水道の水源として使われていた。

F2 南本町湧水群(雷井戸から約10m北)(2018年7月27日写す)
雷井戸の周辺の湧水は南本町湧水群と呼んでいる。

F2 南本町湧水群(雷井戸から約100m北)(2018年7月27日写す)
山口さんの案内で雷井戸周辺には4箇所ほど湧水があった。
F4 竹原湧水池(2018年7月27日写す)
 竹原湧水池は安政東海地震(1854年12月23日)、安政南海地震(1854年12月24日)のさい、湧き出したと古文書に記されている。
 三島扇状地の末端、高さ約10mの崖下から湧水している。扇状地の末端にはよく湧水が見られる。近くを久保田川が流れている。付近に富士溶岩の露頭は見られない。
窪の湧水、泉湧水池とも呼ばれている。雨量の少ない年は冬涸れることもある。
マウスポインターの写真は2018年7月27日)
F5 白滝神社南西の湧水  (2011年4月16日)高田保明氏、長野利男氏からの情報

白滝神社横の道路を隔てた南西の長野利男氏宅前の側溝に湧水がありました。長野利男氏によると、側溝のふたがされる前は溶岩の間からの湧水が観察できたそうである。
楽寿園や白滝公園を覆う三島溶岩流で最も海抜高度が低い場所のようである。
今年は冬でも湧水が枯れなかったが、今後どうなるか観察したい。


ー箱根山系湧水ー

 現在(2018年)調査している湧水は竹倉湧水群、夏梅木川湧水群、滝川神社、馬渡橋湧水群(仮称)、谷田押切の自噴井戸(プチ公園の泉)、新田の自噴井戸などである。
 2007年1月21日 の調査では竹倉湧水群夏梅木川湧水群滝川神社とも夏と冬で水量に変化が見られない。箱根山系のこれらの湧水は富士山系と違い、冬でも湧水量に変化がないようである。
 新田の自噴井戸の湧水量は冬になって3分の1に減少した。近くの川や背後の水田に関係した地下水と思われる。
 
 2007年3月24日の調査で、滝川神社の上流約500m、馬渡橋付近に数箇所の湧水があった。
 2007年4月7日の調査で、国立遺伝学研究所の北西崖下に谷田押切の自噴井戸があった。
 
 謝辞
 箱根山系湧水の調査については、志村 肇氏、杉本光信氏、杉本昭夫氏、坂本進氏、山本正治氏、西島 正(JA2BTW)氏などから情報を頂いた。




H1 竹倉湧水群、夏梅木川湧水群、H2 滝川神社、  H3 新田の自噴井戸、 H4 谷田押切の自噴井戸
H5 馬渡橋湧水群、 H6 山田川自然の里湧水群  


H1 竹倉湧水群(2018年8月5日写す)
 竹倉湧水は箱根火山西麓の三島市竹倉にある。
厚い溶岩の割れ目から湧き出ている。近くの旅館ではこの湧水を風呂に使っている。美味しい水で新茶を飲むのに使ったことがある
H1 夏梅木川湧水群(2018年8月5日写す)
 竹倉湧水群の南へ50m、夏梅木川の南岸には箱根火山の厚い溶岩がブロック状に分布している。このブロックとブロックの境目に5箇所湧水が見られる。湧水口での水温は16℃である(07年2月3日11時測定)
H2 滝川神社(2007年1月21日写す)
 箱根火山西麓の三島市川原ケ谷にあり、別名 「瀧不動」ともいう。
 豊富な湧水が滝となって山田川に注ぎ、昔は修験者のみそぎの霊地であったと言われている。
 鳥居の向こうが参道や社ではなく、滝が見えるのは珍しいし、素晴らしい。美しい滝が鳥居の中央に見えるように鳥居の位置を考えたに違いない(明治29年12月9日建之)。水を信仰する人々の思いが伝わってくる。
 この滝は滝川神社のご神体であり、またみそぎの神聖な湧水である。鳥居から綺麗な滝が見えるようにしたい。(
マウスポインターの写真は再建された滝川神社、2015年6月15日写す。)
湧水が豊富な山田川について
 山田川に私は縁が深いようである。

 初音ケ原遺跡出土礫の岩石調査(1998年)をしたことがある。 この旧石器時代の遺跡から出土する石器を作製する礫を探しに山田川をたびたび訪れた。山田川の河川礫には、ガラス質黒色安山岩という石器を作製する礫が見つかる。
 川原ケ谷という地名のように山田川に沿って、田んぼや畑が分布し、隠れ里を思わせるような、静かな里である。畑仕事をする古武士の風格がある老夫は、「戦乱を逃れてこの里へ住むようになったという伝説がある。」と語っていた。山中城から逃れてきたのかなと思った。
H5 馬渡橋湧水群(仮称、2007年5月18日写す)
 滝川神社の上流、約500m馬渡橋付近には数箇所の湧水があり、水道水や、水田に使用されている。
 伊豆循環道の橋脚の工事で1時期涸れたが、その後回復した。
湧水量は多く、1年中変化しない。
湧水口での水温は約15℃である。(2007年3月23日11時30分測温)

写真は杉本さんの池。マウスポインターの写真も馬渡橋湧水群である。(2007年5月12日写す)
飲ませていただいたが、何れも大変美味しい水でした。
馬渡橋湧水群(2007年6月21日写す)
湧水で育てる水田、美味しいお米ができるに違いない。
H4 谷田押切の自噴井戸(2018年7月30日写す)
 国立遺伝学研究所の北西崖下、三島市谷田押切1275にあり、地元では「プチ公園の泉」と呼んでいる。
 昭和20年代後半に簡易水道の水源としてつくられた自噴井戸で、貯水槽もある。道路を隔てた近くにも貯水槽がある。
 湧水量は1年中変化しない。過去に地震で一時止まったことがあるが、その後の手入れで元の湧水量を回復した。(三島ホタルの会会長 志村肇さんの説明)
 水温は2007年4月7日10時、2008年1月7日11時に測定したがともに15℃であった。水質検査もされた美味しい水である。
H3 新田(しんた)の自噴井戸(加茂川町) (2018年7月31日写す)
 願成寺の北西約200m、山本正治氏 私有の自噴井戸である。
山本氏によると明治9年頃掘った井戸で、約130年間水は涸れたことがない。
 付近には数箇所自噴井戸があったが、開発が進み、最後に残った貴重な自噴井戸で大事にしたい。山本正治氏は逝去されたが、自噴井戸はしっかり残っていた。

H6 山田川自然の里湧水群、2010年6月11日
滝の周辺は湧水が豊富で、山田小学校の棚田がある。

H6 山田小学校の棚田 2010年6月11日