死刑執行

アー、ハアー。
手が冷たい季節になってきました。
季節は、晩秋。
いや、もう初冬ですね。
早いもので、私が入社してから約一年の月日が経とうとしています。
色々な事がありました。
良いこと、悪いこと。
まあ、ともかく無事に一年が終えられれば、それでいいですね。

さて、私の会社ですが、上層部の動きが怪しくなってから2週間がたちました。
会社全体の雰囲気が浮き足立っていて、社員の気力低下が至る所で見受けられます。
私の周りの雰囲気も変わり、先輩社員が何か隠している気がします。
「何かあったんですか?」
と説いても、
「いや別に。」
の一点張り。
でも、何か隠していることは明白です。
私もバカではありませんから、何を上層部で話しているかは分かります。
「いよいよ解雇かなー。」
と確信したのもこの時です。

そんな折り、
「ZZZ ZZZ」
と、私の内線電話が鳴ります。
「はい、馬場です。」
と出ると、
「もしもし、○○だけど、馬場君、明日、食事でもしないか?」
と、社長直々のお誘いです。

確定です。
「くび」
が。
ついにリストラです。
初めから覚悟をしていたとはいえ、ガビーンです。
目の前真っ暗。
やる気が一発で吹っ飛んだぞー!!

ういう訳で、死刑執行が明日に迫った私。
今後どうするか、考えます。
「ローンで買ったパソコン、どうしよう?いや、今後の行く末をどうしよう?」
と、将来の事が頭をよぎります。
生きられる時間はあと僅か。
悩みます。

悩む、悩む、悩む、悩む、悩む、悩む、悩む、悩む、悩む、悩む、悩む、悩む、悩む、悩む。
と15回くらい悩んで結果が出ます。
その結果とは、
「悩んでもしょうがないや。なるようにしか、ならないや。別に命を取られる訳でもなし。」
と、腹をくくります。
(我ながら、あんちょくだなー。(~_~;))

刑執行当日。
良い天気です。

いつもと変わらず出社です。
いつもと変わらず仕事をこなしていきます。
いつもと変わらず昼食を食べます。
いつもと変わらず再び仕事をします。
いつもと違うことに、今日は、8時に退社します。
こんな早く退社したのって、この会社に入って初めてじゃないかな?
町に人がたくさんいるぞー!
ちょっと感動。

そんな感動を胸に、社長との待ち合わせのお店へ、向かいます。
足取りは軽やかにとは、流石に行きませんが。
お店に着くと、社長はもう席についています。
「馬場君、何か飲み物たのみなよ。」
といいます。
適当に紅茶でも頼みます。

まあ、ここで、会社の現状は、あーだ、こーだといった話がでます。
要約すると、
「仕事がなくなって人があまってしまったため、人員をここ数ヶ月かけて削減しているとのこと。
ここ数ヶ月の解雇は、その一つにすぎないこと。
将来的には、もっと少なくするとのこと。」

と、いった話です。
そういった会社の話が終わると、いよいよ死刑執行です。

緊張があたりを包み込みます。
時間が止まります。
社長が口をひらきます
「そういった訳で、馬場君にも協力して欲しい。」
と。
私も一言、
「分かりました。」
と。

スポーン
と首が舞います。
たまやー!!
と、誰かが言っている声が聞こえます。(私か)。
自分の首が無い体を、見ながら意識が遠くなっていきます。

死刑された感想ですか?
もっと、痛いかと思った。

次回は「デジタルクリエイターになったけど」です。