意見書,補正書の作成方法 | |
特許庁から特許を与えるべきでないと判断された場合は拒絶理由通知書が送られます。あきらめてはいけません。この拒絶理由通知書は、通常、既に公開されている先行出願(出願公開公報)が複数引用されて、これらの先行出願をもとに「当業者が容易に発明できたもの」とする内容になっています。拒絶理由通知の内容と引用されている先行出願(出願公開公報)をよく検討します。また、あらためて自分の出願内容も検討します。拒絶理由通知書が来たからといって、直ぐにあきらめていては特許にはなりません。直ちに特許される出願はまれで、多くは、意見書,補正書を提出することで特許になります。このとき特許庁への料金は無料です。 そして、意見書では、拒絶理由通知書により示された先行出願とはこれこれの点で相違するという反論をします。技術的な効果などがある意味のある相違点を主張します。補正書では、この相違点を明確にするために、特許請求の範囲や明細書等を補正します。なお、出願時の明細書や図面に記載されている範囲で補正します。つまり、新しい内容は入れてはいけません(ニューマター禁止の原則)。 | |
拒絶理由通知書の例(架空の内容です) なお、上の「備考」の内容を下に拡大します。 ・備考 (a)請求項1に関して 引用文献1には水差しの取手にすべり止めが形成され、引用文献2にはきゅうすの 取手にすべり止めが形成され、引用文献3には金属カップの取手にすべり止めが形成 される記載がなされており、これらの記載に基づいて、請求項1に係る発明のように ビールジョッキの取手にすべり止めを形成することは、当業者が容易に想到しうるも のと認められる。 (2)請求項2に関して 引用文献3には金属カップの取手に複数の突起状のすべり止めが形成される記載が なされており、よって、引用文献1、2、及び3の記載に基づいて、請求項2に係る 発明のようにジョッキグラスの取手のすべり止めとして、複数の半円球状の突起を設 けることは、当業者が容易に想到しうるものと認められる。 |
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拒絶理由通知の内容と引用されている引用文献(先行出願の出願公開公報)をよく検討する 引用文献は、拒絶理由通知書の公報番号(2枚目の( )書きの部分)をたよりに自分で電子図書館でプリントアウトするなどしなければなりません。引用文献のページ数は多数枚になることもあるが、そのうち具体的にはどの部分が、今回の発明の特許性を否定する基として引用されているかを見極める必要があります。ここでは説明に便利なように、それぞれの引用文献で、下記の図面が引用されていることとします。なお、下記の図は説明のための架空の内容です。 引用文献1(実開平3−*****号) 引用文献2(実開昭48−*****号) 引用文献3(実開昭55−*****号) |
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自分の出願内容の検討 (この出願も架空のものです(念のため)) 検討の結果、3つの引用文献に対し、出願内容は突起が「半円球状」であることが、「手が痛くな」く、さらには「半円球状の間に汚れが溜まりにくい」という効果を有するようですので、意味のある相違点となりそうです。 |
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意見書による反論(意味のある相違点を主張する) (一般には補正と一体的として反論の意味がでます。補正をしないで意見書だけで特許されるのは、審査官が勘違いしているなど稀なケースになります。引用文献との相違点を主張することになりますが、発明の課題に沿った技術的な効果などを伴う意味のある相違点でなければなりません。 [相違点が見つからない場合の反論の論法] 相違点が見つからず、しかもいわゆる新規性がない(特許法29条1項違反つまり同一発明)の場合には、あきらめるしかありません。 しかし、有効な相違点が見つからない場合であっても、いわゆる進歩性がない(特許法29条2項違反)とされる場合には、反論が認められるための論法があります。一般的な論法を2つ説明します。やや専門的になります。この論法は、判例の積み重ねにより形成されたものです。 すなわち、拒絶理由通知では、複数の引用文献が引用されて、いわゆる進歩性がない(特許法29条2項違反)とされる場合がほとんどです。つまり、出願の発明は、引用文献AとBを組み合わせることで容易に発明できたものであるから、特許できない、というものです。 これに対して@一つ目の論法では、AとBを組み合わせることによって得られるであろうと思われる技術的な効果を越えて、予測できなかった有利な技術的効果が、出願の発明では得られるので、発明は「容易」とは言えず、特許がなされるべきである、と反論するものです。これを効果の非予測性などといいます。A二つ目の論法では、AとBを組み合わせることには無理があることがAやBの記載などから説明できる、すなわちAとBの組み合わせを阻害する理由が存在するので、発明は「容易」とは言えず、特許がなされるべきである、と反論するものです。これを組合せには阻害要因がある(阻害事由の存在)などといいます。またAとBを組み合わせる動機づけが存在しえないので特許がなされるべきである、と反論するものです。これを組み合わせるための動機づけが不在であるなどといいます。ご自分でこれらの論法を使用される場合には、これらの論法に関連する具体的な例を勉強されることをお勧めします。 ⇒ 阻害要因の例や動機づけ不在の例 意見書の作成方法 用紙は、すべてA4サイズで、各ページが50行、各行が40字です。 以下の例を見て、同じ書式にしてください。 黒色のところは、全く同じようにしてください。法律の規則で決まっている部分、または特許の明細書で慣用的な言い方だからです。 赤色のところは御自分の場合に合わせて書き直してください。 (青色)は注意書きです。実際には記載しません。
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補正書(相違点を明確にする) (意見書でのべる相違点は、通常は請求項1へ補正がされていなければなりません。通常は請求項1がメインの発明だからです。この相違点から主張できる技術的効果は、発明の効果へ補正がなるべくされていなければなりません。なお、明細書や図面に記載がない新しい内容を付け加えるような補正は許されません(ニューマター禁止の原則)。) 補正書の作成方法 用紙は、すべてA4サイズで、各ページが50行、各行が40字です。 以下の例を見て、同じ書式にしてください。 黒色のところは、全く同じようにしてください。法律の規則で決まっている部分、または特許の明細書で慣用的な言い方だからです。 赤色のところは御自分の場合に合わせて書き直してください。 (青色)は注意書きです。実際には記載しません。
なお、以上の補正のケースとは異なりますが、請求項へ明細書などの内容を昇格して補正することも可能です。(なお、「昇格補正」は法律用語ではありませんが慣用語です。経験が浅く知らない人も居るようです。) (例)もし仮に明細書中に複数の突起の整列する仕方(例えば千鳥状に突起が整列する)について記載があり、その技術的な効果も記載されていれば、「千鳥状に整列した突起」という内容を請求項へ昇格する補正をし、あわせて、その技術的な効果を発明の効果へ昇格する補正をすることができます。拒絶理由通知は何回か来ることがありますが、上記請求項への昇格補正は、最初の拒絶理由通知に対してのみ可能です。 「手続きの流れ」へ トップページへ |