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『柏木(尊経閣文庫本)』
皇女たちは、おぼろけのことならで、悪しくも善くも、かやうに世づきたまふことは、え心にくからぬことなりと、古めき心には思ひはべしを、いづかたにもよらず、中空に憂き御宿世なりければ、何かは、かかるついでに煙にも紛れたまひなむは、この御身のための人聞きなどは、ことに口惜しかるまじけれど、さりとても、しかすくよかに、え思ひ静むまじう、悲しう見たてまつりはべるに、いとうれしう、浅からぬ御訪らひのたびたびになりはべめるを、有り難うもと聞こえはべるも、さらば、かの御契りありけるにこそはと、思ふやうにしも見えざりし御心ばへなれど、今はとて、これかれにつけおきたまひける御遺言の、あはれなるになむ、憂きにもうれしき瀬はまじりはべりける」
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第五章 夕霧の物語 柏木哀惜
[第二段 母御息所の嘆き]
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