検索結果詳細


 『澪標(大島本)

 津の国までは舟にて、それよりあなたは馬にて、急ぎ行き着きぬ。
 入道待ちとり、喜びかしこまりきこゆること、限りなし。そなたに向きて拝みきこえて、ありがたき御心ばへを思ふに、いよいよいたはしう、恐ろしきまで思ふ。
 稚児のいとゆゆしきまでうつくしうおはすること、たぐひなし。「げに、かしこき御心に、かしづききこえむと思したるは、むべなりけり」と見たてまつるに、あやしき道に出で立ちて、夢の心地しつる嘆きもさめにけり。いとうつくしうらうたうおぼえて、扱ひきこゆ。

 63/281 64/281 65/281

  第二章 明石の物語 明石の姫君誕生  [第三段 乳母、明石へ出発]

  [Index]