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『木の子説法』 青空文庫
鰻屋《うなぎや》の神田川――今にもその頃にも、まるで知己《ちかづき》はありませんが、あすこの前を向うへ抜けて、大通りを突切《つっき》ろうとすると、あの黒い雲が、聖堂の森の方へと馳《はし》ると思うと、頭の上にかぶさって、上野へ旋風《つむじかぜ》を捲《ま》きながら、灰を流すように降って来ました。ひょろひょろの小僧は、叩きつけられたように、向う側の絵草紙屋の軒前《のきさき》へ駆込んだんです。濡れるのを厭《いと》いはしません。吹倒されるのが可恐《おそろし》かったので、柱へつかまった。
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