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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 うむ、と呻かれて、ハッと開くと、旧《もと》の足で踏みかける。顛倒して慌てるほど、身体《からだ》のおしに重みがかかる、とその度に、ぐ、ぐ、と泣いて、口から垂々《だらだら》と血を吐くのが、咽喉《のど》に懸り、胸を染め、乳《ち》の下を颯と流れて、仁右衛門の蹠《あしのうら》に生暖《なまあたたこ》う垂れかかる。
 あッと腰を抜いて、手を支《つ》くと、その黒髪を掻掴んだ。
 御免なせえまし、御新姐様、御免なせえまし、と夢中ながら一心に詫びると、踏躙《ふみにじ》られる苦悩の中から、目を開いて、じろじろと見る瞳が動くと、口も動いて、莞爾する、……その唇から血が流れる。

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