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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 が、雨垂《あまだれ》とも、血を吸《すい》膨れた蚊が一ツ倒れた音とも、まだ聞定めないで現でいると、またぽたり……やがて、ぽたぽたと落ちたるが、今度は確《たしか》に頬にかかった。
 漸《やっ》と冷いのが知れて、掌で撫でると、冷《ひや》りとする。身震いして少し起きかけて、旅僧は恐る恐る燈の影に透したが、幸《さいわい》に、の点滴《したたり》ではない。

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