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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
また余りの静《しずか》さに、自分の身体《からだ》が消えてしまいはせぬか、という懸念がし出して、押瞑《おしつぶ》った目を夢から覚めたように恍惚《うっとり》と、しかも円《つぶら》に開けて、真直《まっすぐ》な燈心を視透かした時であった。
飜然《ひらり》と映って、行燈へ、中から透いて影がさしたのを、女の手ほどの大《おおき》な蜘蛛、と咄嗟に首を縮《すく》めたが、あらず、非ず、柱に触って、やがて油壺の前へこぼれたのは、木の葉であった、青楓の。
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