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『高野聖』
泉鏡花を読む
若狭へ帰省する私もおなじ処で泊らねばならないのであるから、其処で同行の約束が出来た。
渠は高野山に籍を置くものだといつた、年配四十五六、柔和な何等の奇も見えぬ、可懐しい、おとなしやかな風采で、羅紗の角袖の外套を着て、白のふらんねるの襟巻をしめ、土耳古形の帽を冠り、毛糸の手袋を嵌め、白足袋に日和下駄で、一見、僧侶よりは世の中の宗匠といふものに、其よりも寧ろ俗歟。
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