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『眉かくしの霊』
泉鏡花を読む
境は胸が飛んで、腰が浮いて、肩が宙へ上つた。ふはりと、其の婦の袖で抱上げられたと思つたのは、然うでない、横に口に引銜へられて、畳を空に釣上げられたのである。
山が真黒に成つた。いや、庭が
白
いと、目に遮つた時は、スツと窓を出たので、手足はいつか、尾鰭に成り、我はぴち/\と跳ねて、婦の姿は廂を横に、ふは/\と欄間の天人のやうに見えた。
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