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 『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

 処で、お艶様、その御婦人でございますが、日の中一風呂お浴びになりますと、(鎮守様のお宮は、)と聞いて、お参詣なさいました。贄川街道よりの丘の上にございます。――山王様のお社で、むかし人身御供があがつたなどと申伝へてございます。森々と、もの寂しいお社で。……村社はほかにもございますが、鎮守と言ふ、お尋ねにつけて、その儀を帳場で申しますと……道を尋ねて、其処でお一人でおのぼりなさいました。目を少々お煩ひのやうで、雪がきら/\して疼むからと言つて、こんな土地でございます。ほんの出来あひの黒い目金を買はせて、掛けて、洋傘を杖のやうにしてお出掛けで。――此れは鎮守様へ参詣は、奈良井宿一統への礼儀挨拶と言ふお心だつたやうでございます。

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