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『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む
風呂がお好きで……勿論、お嫌な方も沢山ございますまいが、あの湯へ二度、お着きに成つて、すぐと、それに夜分に一度、お入りなすつたのでございます――都合で、新館の建出しは見合せてをりますが、温泉ごのみに石で畳みました風呂は、自慢でございまして、旧の二階三階のお客様にも、些と遠うございますけれども、お入りを願つて居りました処が――実はその、時々、不思議な事がありますので、此のお座敷も同様に多日使はずに置きましたのを旦那のやうな方に試みて頂けば、おのづと変な事もなくなりませうと、相談をいたしまして、申すもいかゞでございますが、今日久しぶりで湧かしも使ひもいたしましたやうな次第なのでございます。
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