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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 根が悪徒ではござりませぬ、取締りのない、唯ぼうと、一夜酒が沸いたような奴殿じゃ。薄も、蘆も、女郎花も、見境はござりませぬ。
 髪が長けりゃ女じゃ、と合点して、さかりのついた犬同然、珠を頂いた御恩なぞも、新屋の姉えに、藪の前で、牡丹餅半分分けてもろうた了簡じゃで、のう、食物《たべもの》も下されば、お情も下さりょうぐらいに思うて、こびりついたでござります。

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