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 『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

 雪道を雁股まで、棒端をさして、奈良井川の枝流れの、青白いつゝみを参りました。氷のやうな月が皎々と冴えながら、山気が霧に凝つて包みます。巌石、ぐわうぐわうの細い谿川が、寒さに水涸れして、さら/\さら/\……あゝ、丁ど、あの音、洗面所の、あの音でございます。」
「一寸、あの口を留めて来ないか、身体の筋々へ沁渡るやうだ。」
「御同然でございまして……えゝ、しかし、何うも。」

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