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『日本橋』
青空文庫
小
紅
屋の奴、平の茶目が、わッ、と威して飛出す、とお千世が云ったはその溝端。――稲葉家は真向うの細い露地。片側|立四軒目で、一番の奥である。片側は角から取廻した三階建の大構な待合の羽目で、その切れ目の稲葉家の格子向うに、小さな稲荷の堂がある。傍に、総井戸を埋めたと云う、扇の芝ほど草の生えた空地があって、見切は隣町の奥の庭。黒板塀の忍返しで突当る。
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