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『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径
病人が雪の下なる家を出でしは、三年前の事とぞ聞く。或は救助《すくひ》の遅くして、下枝等は得三の為めに既に殺されしにあらざるか、遠くもあらぬ東京に住む身にて、かくまでの大事を知らず、今まで棄置きたる不念《ぶねん》さよ。もし下枝等の死したらむには、悔いても及ばぬ一世の不覚、我三日月の名折なり。少しも早く探索せむずと雪の下に赴きて、赤城家の門前に佇みつゝ云々《しか/゛\》と呟きたるが、第一回の始まりなり。
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