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 『泉鏡花自筆年譜』 泉鏡花を読む

 明治六年十一月四日、金沢市下新町二十三番地に生る。名は鏡太郎。父は清次、政光とて、金属の彫工なり。母は鈴、江戸下谷の出生、葛野流の鼓の家、中田氏の女(じょ)にして、能楽師松本金太郎の小妹。金太郎は中田の家を出でて、松本の養子となれるなり。
 明治九年四月、年四つの時、父に伴はれ、土地の向山に遊び、はじめて城の天守を望み、殆ど町の全景を覧る。山中の蕎麦屋にて、もり三杯を服し、往復を歩きて、健脚健啖を、しばしば一つ話にさる。健啖は知らず、その後五里以上の道を歩行し得たる覚えなし、嘲笑すべき男の足弱なり。

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