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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 貴僧、それでもお眠ければ御遠慮なさいますなえ。別にお寝室と申してもございませんが其代り蚊は一ツも居ませんよ、町方ではね、上の洞の者は、里へ泊りに来た時蚊帳を釣つて寝かさうとすると、何うして入るのか解らないので、梯子を貸せいと喚いたと申して嬲るのでございます。
 沢山朝寐を遊ばして鐘は聞えず、鶏も鳴きません、犬だつて居りませんからお心安うござんせう。
 此人も生れ落ちると此山で育つたので、何にも存じません代り、気の可い人で些ともお心置はないのでござんす。

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