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 『義血侠血』 青空文庫

 翌年の初夏金沢の招魂祭を当て込みて、白糸の水芸は興行せられたりき。渠は例の美しき姿と妙なる技とをもって、希有の人気を取りたりしかば、即座に越前福井なるなにがしという金主附きて、金沢を打ち揚げしだい、二箇月間三百円にて雇わんとの相談は調《ととの》いき。
 白糸は諸方に負債ある旨を打ち明けて、その三分の二を前借し、不義理なる借金を払いて、手もとに百余円を剰《あま》してけり。これをもってせば欣弥母子《おやこ》が半年の扶持に足るべしとて、渠は顰みたりし愁眉を開けり。

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