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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 「何を貴方、勿体もない。私《わし》もはい法然様拝みますものでござります。吝嗇坊《しわんぼう》の柿の種が、小判小粒になればというて、御出家に土の団子を差上げまして済むものでござりますかよ。」
 真正直に言訳《いいわけ》されて、小次郎法師は些と気の毒。
 「何々、そう真に受けられては困ります。この涼しさに元気づいて、半分は冗戯《じょうだん》だが、旅をすれば色々の事がある。駿州の阿部川餅は、そっくり正《しょう》のものに木で拵えたのを、盆にのせて、看板に出してあるといいます。今これを食べようとするのを見てその人が、」

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