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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
「何々、そう真に受けられては困ります。この涼しさに元気づいて、半分は冗戯《じょうだん》だが、旅をすれば色々の事がある。駿州の阿部川餅は、そっくり正《しょう》のものに木で拵えたのを、盆にのせて、看板に出してあるといいます。今これを食べようとするのを見てその人が、」
と其方を見た、和郎《わろ》はきょとんと仰向いて、烏もおらぬに何じゃやら、頻に空を仰いでござる。
「唐突《だしぬけ》に笑うから、ははあ、この団子も看板を取違えたのかと思ったんだよ。」
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