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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 縁側へ遣つて来て、お嬢様面白いことをしてお目に懸けませう、不躾でござりますが、私の此の手を握つて下さりますと、彼の蜂の中へ突込んで、蜂を掴んで見せませう。お手が障つた所だけは螫しましても痛みませぬ、竹箒で引払いては八方へ散らばつて体中に集られては夫は凌げませぬ即でございますがと、微笑んで控える手で無理に握つて貰ひ、つか/\と行くと、凄じい虫の唸、軈て取つて返した左の手に熊蜂が七ツ八ツ、羽ばたきをするのがある、脚を振ふのがある、中には掴んだ指の股へ這出して居るのがあつた。

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