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 『義血侠血』 青空文庫

 車中声なく、人は固唾を嚥みて、その心を寒うせり。まさにこれ弁者得意の時。
「証拠になろうという物はそればかりではない。骸のそばに出刃庖丁が捨ててあった。柄の所に片仮名のテの字の焼き印のある、これを調べると、出刃打ちの用《つか》っていた道具だ。それに今の片袖がそいつの浴衣に差違《ちがい》ないので、まず犯罪人はこいつとだれも目を着けたさ」

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