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 『婦系図』 青空文庫

 向うの真砂町の原は、真中あたり、火定の済んだ跡のように、寂しく中空へ立つ火気を包んで、黒く輪になって人集《ひとだか》り。寂寞《ひっそり》したその原のへりを、この時通りかかった女が二人。
 主税は一目見て、胸が騒いだ。右の方のが、お妙である。
 リボンも顔も単《ひとえ》に白く、かすりの羽織が夜の艶に、ちらちらと蝶が行交う歩行《あるき》ぶり、紅ちらめく袖は長いが、不断着の姿は、年も二ツ三ツ長《た》けて大人びて、愛らしいよりも艶麗《あでやか》であった。

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