検索結果詳細


 『人魚の祠』 青空文庫

 動止《うごきや》んだ赤茶けた三俵法師《さんだらぼふし》が、私の目の前に、惰力で、毛筋を、ざわ/\とざわつかせて、うツぷうツぷ喘《あへ》いで居る。
 見ると驚いた。ものは棕櫚の毛を引束《ひツつか》ねたに相違はありません。が、人が寄る途端に、ぱちぱち豆を焼く音がして、ばら/\と飛着いた、棕櫚のいのは、幾千万とも数の知れない蚤の集団《かたまり》であつたのです。

 96/122 97/122 98/122


  [Index]