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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 八橋楼の亭主得右衛門は、黄昏時の混雑に紛れ込みたる怪しき婦人を、一室《ひとま》の内に寝《やす》ませ置き、心を静めさせむため、傍へ人を近附けず。時経たば素性履歴を聞き糺し、身に叶ふべきほどならば、力となりて得させむず、と性質《うまれつき》たる好事心《かうじしん》。かうしてあゝしてかうして、と独りほく/\頷きて、帳場に坐りて脂《やに》下り、婦人を窺ふ曲者などの、万一《もし》入り来ることもやあらむと、内外に心を配り居る。

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