≪BACKMENUNEXT≫

しょにょはちー。

 妹を探してるんです。
 そう言ったのは 。特徴を訊いたら、双子で同じ顔、髪の毛は長くて後ろに一纏めにしています。そう教えてくれて。
 10年前に に会った。
 そう言ったのは政宗。同じ特徴を言って、だけどそれは10年も前の事で。
 政宗だけでなく、幸村も佐助も、 が10年間ずっと姉を探しているのだと思っていた。それは確かにそうだったろうが、しかし。
「何しやがるーーーっ!!」
 がばと跳ね起きて、 に叫ぶ。
 はっきり言ってこんな再会は望んでいない。明らかに は敵で、しかも何故か余裕綽綽で此方の方が分が悪い。
「…っ、幾ら昔世話になったからと言っても、俺の邪魔をするンなら相手にとって不足は無ェ! …アンタ、俺の敵になる気か?」
「べっつに〜。 は誰の敵にも味方にもなりませんよ。単に今回はいっちゃんに義理があるから手助けしてるだけ。いっちゃんさえ助かれば他はどうでも良いです、この際。」
 けろりと言う にいつきがギョッとする。他はどうでも良いと言われても困るが、 はいつきに「そう言うことだから。」と念を押す。
「そいつに義理があるなら、俺への義理はどうなんだ! アァ?」
「先刻言ったでしょう、女の子優先だってば。…いっちゃん助けてくれるなら、梵ちゃんの敵にはなりませんよ?」
 ドキリ、とした。懐かしい響き。だがそれと同時に一抹の寂しさもある。 にとって自分は未だ子供なのだ。泣いて、縋った、子供のまま。
 動きの止まった政宗と反対に、幸村と佐助は の妹であろうと、自分達の前に立ち塞がる以上は敵となる。血縁同士で敵味方に分かれるのはよくある事。情けは無用……の筈なのだが、どうにも調子が狂うのは否めない。
 何せ と瓜二つで、それは双子なのだから当たり前として、 を気に入っていた二人としてはやりにくい事この上ない。それに聞いていた限りでは より10歳年をとっている筈なのに、実際に見ると歳はそう変わらない気がする。思わず素直に訊いてしまう。
「あんた本当に ちゃんの妹の。」
「そですよー。疑っちゃ厭ですよ、佐助さん。」
「それだけ顔が似てれば疑いようも無いけどさ……。」
 言いつつ、佐助は驚いた。少しは疑っていた筈なのに、それが無くなっている。それよりも が初めて会った時、佐助の名前を知っていたように。
ちゃんがいるから武田軍と伊達軍が一緒にいるって訳か。Roger。」
  の中で先程からの疑問が解けた。赤と迷彩を見た時は、武田軍がいるのかと思ったがその割にいる兵士は赤揃いではない。さてどう言う事かと考えていたが、外部要因が働いたのなら納得だ。この場合それは自分ではなくて だったようだ。
ちゃんが見つかる前にゲームが始まったかと冷や冷やしたけど、まぁ居場所が判ったならAll OK。さて、どうする?  は敵になる気は無いけど、まだ続ける?」
「上等だ、やられっ放しでいられるか!」
 売り言葉に買い言葉とでも言うのだろうか、 の言葉に政宗は乗ってしまった。政宗の言葉に は小さく「それでこそ独眼竜。」と呟いた。
「それじゃあ、いつきちゃん、この円から出ないでねー。危ないかもしれないから。暇なら雪玉でも作ってて。」
「ど、どうするだ?」
「続きをね。」
  はそう言うと、自ら雪の上につけた円から出た。
「んじゃ、It's show time! …かな?」


 先ず仕掛けたのは幸村。武器の長さを生かして の持つ武器――どう見てもそれは巨大な筆だった――も長かった。先に攻撃を仕掛けた筈なのに、 が武器で空を一閃し「防壁。」の一言で跳ね返される。
「くっ、幻術を使うとはっ……!」
「いや、 攻撃は出来ないんだけどね。はい、蜘蛛の糸。」
 そう言って が幸村に何か投げつけた。ぱっと広がったそれは正に蜘蛛の糸の様で、幸村の頭から被さり、身動きが取れなくなる。それは先程も足に絡まっていた糸と同じで、容易く切れないばかりか刃物の方が折れるほどの強さ。 の力を知っている政宗は、糸に細工をしたな、と察した。
「攻撃は最大の防御なり、って言うけど の場合防御は最大の攻撃なり、なんで。You see?
「何と!? このような細い糸……!!」
 力任せに引き千切るが、糸に気を取られた隙にまた足元を掬われる。
「暫く動かないで下さいねー、幸村さん。」
 動かないでも何も、ひっくり返されて直ぐには動けない。何せ足元は雪なのだ。一度倒れるとなかなか立ち上がれない。その間にもう一度 は同じ様に糸を投げつけて幸村は全身身動きが取れなくなった。佐助が思わず攻撃しながら叫ぶ。
「あんた、忍びっ!?」
「いえいえ、勤労学生でーす。まぁ勤労は趣味だけど。」
「その糸……もしかして仕掛けてあった糸も ちゃん?」
「あたり〜。苦労したですよ。まぁ細工は流々仕上げは御覧じろってね。」
 あっさり肯定する に佐助は内心舌を巻く。仕掛けの糸は最初に見掛けた場所以外にもいたる所にあった。それら全てを一人でやったと言うなら確かに苦労もしただろうが、此方にしてみれば迂闊に動けないとも言える。先程からころころと足元を掬われて、やり辛いことこの上ない。
 接近戦は不利と判断して手裏剣を投げるが、どう言う訳か当らない。焦る佐助だが、政宗にはこれも見当がついた。恐らく昔 が『お願い』した様に、武器が当らない様に今回も『お願い』したんだろう。
「佐助っ! 幾ら投げても無駄だっ! 直接行けっ!!」
「わー、人遣い荒い〜。」
 怒鳴る政宗に が茶々を入れる。
「煩せぇっ! こら逃げるなっ!」
「そっちが追いかけるからでしょー。…まぁこの辺にしとくか。」
 広い場所に移動した は、追いついた佐助に向き直って突然言った。
「さて、佐助さん。ここで問題です。何故 は安全靴を履いているんでしょう?」
「えっ??」
 いきなり言われても質問の意味が判らない。佐助が一瞬戸惑うと、見計らった様に が動いた。
「答え。頑丈だからでーっす。」
「!!!!」
 思いきり振り上げた足の先には佐助の股間。防具で守られているとは言え、それごと蹴り上げられたから堪らない。声も無く悶絶した。予想以上の威力に一瞬焦るものの、仕方無いか、と は嘯く。
「ごめんねー。まぁちょっとそこでじっとしていて下さいな。」
 謝られても困る。涙目で唸る佐助が気の毒になって、政宗はまた怒鳴る。この短い間に何回怒鳴っているんだろう。
「アンタ、腕っぷしはからきしだって言ってただろう!!」
「うん。腕っぷしはからきしよ。でも足癖は悪いの。」
  はそう言うと今度は政宗に蹴りを入れようとして、足を掴まれた。「あら?」と思う間も無くそのまま転がされる。
「わはーっ、冷たっ!」
「ざまぁみろ、俺達だって冷たかったんだ。」
 段々子供の喧嘩じみてきているのに、気付いているのだろうか。
 いつきは動くなと言われた場所からじっと見て呟いた。
「あのおさむらいたち、 ちゃんに遊ばれてるだ……。」
 既に政宗達は当初の目的を忘れていた。一揆の鎮圧に来ていた筈なのに、いつの間にか のペースに乗せられて今や武器も持たず、雪玉を投げ合う始末。
「大体なぁ、アンタ昔と全然言葉使いも声も違うじゃねぇか! 何だよその濁声っ!」
「仕方無いじゃん、風邪ひいて咽喉やられちゃったんだも〜ん。声が出るだけマシになったんですよ? 言葉遣いは年上ぶりたかっただけだし。」
 雪玉を投げつつ逃げる と追う政宗。幸村と佐助も復帰してそれに加わる。いつきは取り敢えず言われた通り、円から出ない様にしつつ作った雪玉を3人に向かって投げていた。
ちゃんが心配してるよっ!」
「それはSorry、sorry、I'm sorry。でもあれ10年前だったのか。 にとってはついこの前なんだけど。」
「何だと?」
「10年も流離うほど奇特じゃないですってば。大体10歳も年取った様に見えます?」
「……見えねぇ。」
 どう見ても の言う事を信じるならば、10年前に別れた後はすぐこの時代に来ていたようだ。
「て事はアンタ俺より年下じゃねぇか! 年上を敬えよ!」
 もう既に訳の判らない所で言い合いになっている。
 政宗にそれを言われたくないなぁと思いつつ、 はそろそろ頃合と見た。3人が気付いているかは知らないが、 の体力もそろそろ限界だし、追いかけっこの間に目的の場所に辿り着いた。そこで は振り向いて言った。
「追いかけっこはお終い! 張り巡らせた糸は、蜘蛛の糸に。北の大地の守護者、玄武。仮初の大地を元に戻して。御助力感謝いたします!」
「なっ……!?」
 政宗達の足元が突然崩れた。今まで雪の積もっていた場所にぽっかりと穴が空き、いきなりの事で受身も取れず、3人は雪と共に数メートル下に転がり落ちた。下に落ちたと同時に、上からドサドサと雪が傾れ込む。
 その場所が段差のある場所だったのを、いつきは3人が落ちたのを見て思い出した。降り頻る雪の中、そこだけ異様に広いのが違和感あったが、どうも が何か細工をしたらしい。
 落ちた3人に向けて が上から雪玉を放り投げながら言った。
「昨夜一生懸命作ったんですよ。誰か引っかかるかなーと思って。この吹雪だから絶対仕掛けが判らないくらい積もるだろうなぁと思ったけど、大当たりだったね。」
  の仕掛けた細工は、簡単に言えば落とし穴だ。普通穴を塞ぐのは枯れ枝や枯葉とと相場が決まっているが、 は糸を使った。網目状に張った糸に、雪が降り積もりそれが目隠しとなり、糸が切れない様に『お願い』して、その解除を三人が上に乗った時点で行った。結果、男三人の重みに耐えきれずに糸が切れたと言う訳だ。
 雪に埋もれて3人は漸く に遊ばれている事を自覚した。
 ダメだ、敵わない。これだけ遊ばれると戦意も喪失する。
「もう一度だけ言うよ?  はいつきちゃんを助けたいだけ。梵ちゃん達の敵になる気は全然無いから。勿論、武田軍の敵にもね。」
「…何がしたいんだ?」
 雪の中、見上げて に問いかける。
「そりゃあ勿論、話し合い。」
 笑顔ではあるが、目は笑っていない。その表情はいつか見たことが有る。昔、 に助けられた時と同じ顔。本気の は敵に回したくない、と政宗は思う。腕力なら負ける気はしないが、どうも勝てる気もしない。
 それは幸村や佐助も同じで、噂に聞いていた の力を、実際に身に受けると戦う気も無くなる。元々争うつもりの無い相手。政宗が「判った。」と答えたのでホッとする。
 落ちた穴から何とか這い上がり、雪を払っているといつきが駆け寄って に抱き付く。
「アンさ、大丈夫だったべか? ゴメンな、巻きこんじまって。」
 そう言ういつきに は抱き返すと「大丈夫。」と笑って言った。それを見て政宗は苛立った声で割り込む。
「おい、Young girl。何でこいつが兄なんだよ。アンタがそんな事言うから混乱したじゃねぇか。」
「何言ってるだ? アンさはアンさだべ。おめさこそ ちゃんといつ知り合っただ?」
 喧嘩腰の政宗にいつきもむっとして訊き返す。お互い を挟んで睨み合い、一歩も譲らない。政宗にしてみれば が鬼の姿をしていたとは言え中々気付かなかったのは、いつきが言っていた『兄』の存在が気になっていたからで、いつきの方はと言えば何だか知らないが強そうな武士と が知り合いだった事が面白くない。
「あの子、訛りが強くて判り辛いけど自分じゃ『姉』って言ってるつもりなんじゃないの?」
 佐助がこっそり幸村に耳打ちする。幸村も言われて気がつく。成る程、いつきの『アンさ』と言う呼び方は聞き様によっては兄にも姉にも聞こえる。しかしだからと言ってあそこまで絡む政宗も大人気無い。
「はいはい、睨み合うのは止めて〜。とっとと本陣へ行って話し合いするよっ。」
  が言って渋々睨み合いが収まり、移動を始めた。


 政宗達を追っていた景綱・成実が本陣へ向かっていた一行を発見した。
「終わったみたいですね。…誰でしょうか、あの蓑を纏った方は……。」
 呟く景綱だったが、近くまで来て驚いた。
「よう、出迎えご苦労……。」
様!?」
 政宗の言葉が終わらない内に一行に加わっていた懐かしい人物を見て叫ぶ。
 二人とも の姿に驚いたものの再会を喜び、それを複雑な心境で見守る男三人。散々な目にあった割に の事をどうも憎めない。子供の喧嘩に乗せられた気がするせいなのか、 と同じ顔なのが原因なのか。
 本陣に近付いて、いつきは驚いた。
「いつきちゃん! 無事だっただべか!」
「みんな!」
 倒された筈の一揆衆が介抱されて其処にいた。怪我が酷い者も多いが、それでも命だけは助かった様だ。ホッとするいつきの周りに仲間が集まるが、その内一人が を見て言った。
「おめさ、やっぱりおさむらいの仲間だっただな。卑怯だど! おらたちの事見張っとったんだべ!」
 この言葉を機に次々と を詰る声が上がる。いつきは慌ててとりなそうとしたが、聞く耳を持たない。政宗は彼等の勝手な言い分に腹が立ったが、当の が黙って聞いているだけなのが気になった。
「言いたい事はそれだけ?」
 一通り聞いた所でどうでも良さそうに が言った。
「いっちゃんに言われたら凹むだろうけど、烏合の衆に言われてもなぁ……まぁ良いや。そこの二人、いっちゃんと一緒に話し合いに参加ね。」
「あんだと? おめさの指図は受けねェべ!」
 言われた本人ではなく、脇からの声に「五月蝿い。」と言った の声は冷たかった。
「そんな豪そうな口は責任を果たしてから言いなさい。一揆をしたら首謀者がどうなるか判っているのに、何もしない奴に言う権利は無い。いっちゃんが言い出した事でも、首謀者は自分がなる、位の気概は有っても良かったんじゃない?」
 一揆が成功するのは稀だ。大体が鎮圧される。成功したとしても後に首謀者は処分されるのが通例で、それを考えるならば一揆は成功しないと考えた方が良いだろう。
「優勢に立てば図に乗って、劣勢になると逃げ出すような奴に何言われても屁とも思わんわ。もう少し穿った意見を述べるなら話は別かも知れないけど? どうせ、高い年貢は厭だの、自分達の気持ちなんか判らないだろうって繰り返すだけでしょう。そんなの の知った事か。…今、自分の命が何故永らえてるのか、良く考えとけ。」
 それだけ言うとさっさと本陣の中へいつきを連れて行ってしまう。
 呆気に取られて見送る政宗だが、はっと気付き を追う。が、その前に一言。
「俺もアイツの意見に賛成だ。伊達軍と戦って命が在る理由、良く考えた方が良いぜ。」
 隻眼の武士に睨まれて、一揆衆は沈黙する。踵を返して政宗も本陣へ入った。 に追いつくと、先程の言葉が気になって確認してみる。
「アンタ、俺のやろうとしていた事判ってんのか?」
「大筋では と同じでしょう。瑣末な事は違って当然。さて話し合いが楽しみだ。」
「……本当に敵に回したくねェな。」
 しみじみ呟くと、「敵になる気は無いよ。」と返された。
 同じくしみじみと呟いたのは成実。彼は10年前から に『男として』憧れている。
「やっぱ 様って男前だね〜。オレも見習おうっと。」
殿は女子でござろう?」
「心構えが立派だって言ってるんだよ、旦那。」
「やはり伊達軍にHeadhuntしましょうか……。」
 ぞろぞろと続いて本陣に入ると、政宗といつきが呆然として立っていた。
 どうしたのかと駆け寄ると同時に、本陣の中央に誂えてある幕間から――ここには と信玄がいる。――怒鳴り声が聞こえて来た。
「ぼけーっ! 津軽ならねぶたでしょーがっ!!」
 初めて聞く の怒鳴り声に一同目を丸くした。


  は本陣に入ると直ぐに何処に隠していたのか、佐助に割られた鬼の面を取り出した。どうするのかと思っていると、 は政宗に小声で訊いた。
「この中に ちゃんが居るの?」
なら中だ。信玄も一緒だぞ。」
「あらら。それは……まぁ良いか。よし、行くぞ。」
 そう言って は割れた面を手で抑えながら顔に付けると、幕間の中に飛びこんで叫んだ。
「わぁるいごはいねぇがー!」
  のその行動に驚いたのは政宗だけではなかった。幕内にいた と信玄もいきなり現れた異形の者に驚いて叫ぶ。
「ヌウッ! 妖怪!」
「なまはげっ!?」
  は叫んで気がついた。こんなバカな真似をするのは一人しか居ない。今までの心配やら不安が一気に怒りに変わって、信玄の制止も振り切り駆け寄ると、相手の襟首を掴んで怒鳴った。
「ぼけーっ! 津軽ならねぶたでしょーがっ!!」
「わー、その論点のずれた突っ込み、好きだなぁ。『 』ちゃんらしい。」
 襟首を揺すられて、頭を前後に揺らしつつ鬼の面が取れた が笑って言った。
「… ?」
ちゃんだ。…会えて良かった。」
 しみじみと言われて、 の首から手を離す。
 わざと『 』と呼んだのは違っていたらどうしよう、と言う不安が偶さかなりとも有ったからだ。 』と呼ぶのはこの世界にはお互いしか居ない筈。ようやく会えた、と言う実感がひしひしと湧く。
「……私も、 と会えて嬉しいよ。でもその声どうしたんだ。風邪ひいた?」
「うん、咽喉やられた。… ちゃんは伊達軍に保護されたの? 武田軍が居るのは何で?」
「武田軍に落ちたんだよ。伊達軍は同盟国。それで一揆鎮圧に来たの。」
「ふぅん……じゃあ武田軍にお礼言わないとね。」
  はそう言うと同じ顔が並んで戸惑っている信玄の前に膝をついた。
「武田軍総大将、信玄公とお見受け致します。此度は姉、 を保護して頂き誠に有難うございました。御存知でしょうが と申します。姉共々、心より御礼申し上げます。」
  がそう言って頭を下げると、信玄は相好を崩して に答えた。
「うむ、見事な口上しかと受け取った。良くぞ姉を探し当てた。苦労であったの。」
「傷み入ります。つきましてはこれより一揆衆と講和の為話し合いを致しますので、是非公にもご列席戴きたいのですが?」
「あい判った。」
 二人の会話に、唖然としていたのは本陣に居るほぼ全員だったろう。 の言葉遣いに驚いていたが、他は『講和』に驚いた。そして政宗は の態度に驚いて思わず言った。
「アンタ、俺の時と随分態度が違うじゃねぇか。」
「目上の人は敬わないと、でしょ?」
「…俺は目上じゃ無いのかよ。」
「敬うほど目上じゃ無いでしょう。身分も に敬われたいんですか?」
 改めて訊かれると、そうだとも言いにくい。
 判って言っているんだ、こいつは。と政宗は思いつつ「別に。」と答えた。
 どうもその答えも判っていたらしく、僅かに笑いを含んだ声で はぐるりと本陣を見渡して言った。
「では、話し合いましょうか。鎮圧軍と一揆衆。 は部外者だから、基本的には参加しません。が、両者の意見が対立したままなら嘴挟む気はあるので、そのおつもりで。」
 頷く一同の中、 だけは後半の言葉に厭な予感がした。

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ブログ掲載時より加筆修正しました。そんなにたいしたことじゃ無いですが。冒頭部分、その7に移動してます。
最初、突っ込みに対する受け答えを「ねぶたは文禄の役ー。」としようと思ったんですが、どうもそれは違うらしいんでやめました。
アクション苦手ですが頑張ってみました。主人公、何でも有りな人なので割と最強です。ただ面倒くさがりなので何か特別にやろうとかは思わないみたいですけど。
本人否定していますが、多分主人公の流派は伊賀流です。木の葉隠れの術くらい使えるかもしれん。異世界でなら。

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主人公(レベル多分256※そんなレベルはBASARA界にはありません。)ようやく登場。暗躍。
次回で話し合いが終われば、奥州凱旋です。何だか遅々として進みませんね、話。本当に終わるのか、これ。
いつきちゃんとの遣り取りは閑話にてそのうち。閑話先に出すと、なまはげの正体簡単に判っちゃうんで……まぁ言わずもがななんですけどね。
すみません、非常にこの回書いてて楽しかったです。どうも苛めるのが好きな様です。ヘタレとか以前に非常に恰好悪い政宗さんたちでした。
追記:正式名称に、『朝臣』を入れるか入れないか非常に迷いましたが、取り敢えず入れてません。その辺まで拘ったらどうしようもない。因みに入れるとしたら、『伊達藤次郎朝臣藤原政宗』……合ってるのか?合っているのか?これで??