≪BACKMENUNEXT≫

しょにょじゅーに。

 そこに座りなさい、と言われて素直に座ると が真剣な顔で質問が有る、と言って来た。
 予てより訊きたい事が山ほどあった が回復したと見るや即行動に移した。 の方もそれは予測していたからか、何でもどうぞ、と言った雰囲気で の質問を待つ。
「あ、でもちょっと待って。」
  が突然立ち上がった。
 どうしたのかと見ていると、 が武器に使用している筆を持ち出し、先ず床の上で飛び跳ねる。それから天井を筆の尻骨で思いきり突いた。大きな音を立てた直後、床下、天井裏で鈍い小さな音が聞こえた。
「…ネズミがいる。石見銀山でも仕掛けようか。」
「ネズミ? …ってまさか……。」
「天井裏はネズミじゃ無くて猿かもね。」
「……比喩多いよ、お前……。」
 溜息を吐きつつ万里は良くネズミのいる場所が判るなぁと変な所で感心する。
 一方天井裏でネズミ扱いされた方は、何故ばれたのかと悩んでいた。
「石見銀山は勘弁してよ……。」
 小さく呟いて、ばれたのなら仕方無いと、床下のネズミの確認をする事にした。


 訊きたい事は色々有ったが、先ず最初に訊いたのは を襲わせた人間が誰なのか、訊く前に判ったと言ったのは何故なのかと言う事。
「あ、それが最初? 簡単簡単。 を『様』付けしなかったのは彼だけだった。人間無意識に色々口走るけど、つまりは を胡散臭く思っていたと言う事で、ひいては独眼竜の為にならないと踏んだんじゃないかな。」
「そんな事で私襲われたの?」
「そんな事って言うけど、結構な事だよ。 ちゃんが居なきゃ組まない筈の同盟だったんでしょ? それだけ影響力のある人間がもし伊達にとって害のある人間だったらどうするさ。早いうちにどうにかしないと、と思ったんでしょう。」
  はそう言ってふと思い出し笑いをした。
「独眼竜は予想と違う人間が手を挙げて驚いたみたいだったね。まぁ も予想では5男氏かと思ってたんだけど。」
「予想? 政宗さんは誰だと思ってたのかな。」
「多分4男氏じゃないかな〜。だけど実際は3男氏。確かに驚くは驚くかな。伊達の総大将も務める程の人間が、まさか甥とは言え一門の棟梁の意向を無視して行動を起こしたわけだから。」
 でも、まぁ。と は続けた。
「釘も刺した事だし、ハッタリも上手くいったし。上出来でしょう。次の質問は?」
 言われて は頭の中でまとめておいた質問リストを思い出す。次に訊いたのは何故10年前に奥州に現れたのか、と言う事。
「それは簡単。 ちゃんと空中で逸れた後、何の気無しに言ってみたんだよ。子供の頃の独眼竜に会ってみたいなぁって。そしたら叶った。言ってみるもんだね?」
 正確には、「独眼竜伊達政宗になる前の、梵天丸に会ってみたいな。」と言ったのだ。今の彼と全く違い、内向的だったと評判の少年に一度会ってみたかった。
  は予想通りの答えにやっぱり、という思いとでも待てよ、と言う考えが起きる。
「まぁお前は政宗さんが一番お気に入りだったから、そう思うのは判る。でも何だかそうすると政宗さんがああなったのはお前に会ったせい?」
 ああなった、の指す所は政宗の性格だろう。 にとって政宗は傲岸不遜の強引『に』マイウェイ、な余りお付き合いをしたいタイプでは無いのだが、それを補って余りある親近感に何故だろうと考えた末出た結論が、政宗と が似ていると言う事だった。
 顔立ち云々ではなく、言葉遣いや考え方がどうも誰かに似ていると実は と再会して二人が並んで話している時に漸く気づいた。言葉の端々や言いまわしがとにかく似ているのだ、この二人。
  の方が若干丁寧な話し方をするが、慇懃無礼とも取られかねない言葉遣いに加えて政宗が織り交ぜる異国語も使うようになった。それは政宗の影響だ。一方政宗はと言えば異国語に興味を持ったのはどうも の影響では無いか、と思われる。
 その点を指摘すると は苦笑しながら答えた。
「それを言ったらタマゴが先かニワトリが先かって話になるよ。まぁどっちにも素養があった、って事にしておいて。」
 満足な答えではないものの、確かに言い出したらキリがない。 に会わなくてもあの性格になったかも知れないのだ。それがいつ頃形成されたかは別として。
「じゃあ次。政宗さんたちと別れた後、何処に行ってたの? 」
「南の国に行ってた。で、 ちゃん探さなきゃなーと思ったけど、最南端からなら北上するだけで良いかと思って移動しつつ探してた。でも良く考えれば北に行ってれば直ぐ会えたね。失敗〜。」
「南に行きたいって思ってたの?」
「そうみたい。多分奥州が寒かったんじゃないかなー。でなければ無性に海が恋しくなったとか。」
 その説明に は納得した。気持ちの良い空間でダラダラ過ごすのが最高と言って憚らない は、山に行けば海が、海に行けば山が恋しくなる。奥州の山の中で暫く過ごして、海が恋しくなったのだろう。
「じゃあ北上しつつ私を探して、どうしていきなり最北端に行っちゃったの? 最北端の手前に甲斐も奥州もあるじゃない。」
「あー、それはね。途中まではそのつもりだったんだけど、ホラ関西から東海辺りは魔王の息のかかった国ばっかりじゃない。そうそう戦は起きないだろうから、起きそうな所を選んでみたの。面倒くさい事避けたくて、太平洋側は国が多いから日本海側から抜けて行ったら越後辺りで一揆の噂を聞いて。慌てて最北端目指したの。」
「何で?」
「ゲームが始まったら困るなぁと思って。」
  は説明した。それにはゲームの始まりを遅らせれば良い。最北端で一揆が始まるのなら、それを止めれば良い。その は疑問を挟んだ。
「待て。何でゲームが始まると困るの? 確かに戦に巻き込まれたら大変だとは思うけどさ……。」
「うーん、正確に言うならゲームが進行して、天下統一成された時に ちゃんと一緒じゃないと困ると思ったんだよね。」
「…どうして?」
 厭な予感がして恐る恐る訊いてみる。
「会えないままゲームが終わって、元の世界に帰ったら ちゃんが戻ってないと言う事も有り得なくはないんだよ。 ちゃんはこの世界に来る筈の人間じゃ無いのに、巻き込まれて来たでしょ。条件が多分 と違うような気がして。」
 その説明に はやっぱり、と頭を抱える。何となく想像はしていたのだ。 と会えないまま誰かが天下統一を果たしたら、 は恐らく『何時も通り』何事も無かったかのように元の世界に戻れるのだろう。だが自分は? 何事も無く帰れるのかそれとも取り残されるのか。不安に思っていた事を言われて、 はがくりと肩を落とした。
「まぁ会えたんだし良いじゃない。 ちゃんまで巻き込まれるとは思って無かったよ。やっぱりアレかな、双子だから体質が似てるのかな。」
「体質で巻き込まれたのか、私は……。」
 暫し落ち込むものの、 の説明は納得いく。気を取り直して、更に質問をしてみた。
「凄く不思議なんだけど、お前、妙に強いと言うか、変な技能持ってない? 先刻も床下とか天井裏の気配察してたでしょう?」
「あー、それは世界の理による。詳しく話すのも面倒くさいんで掻い摘んで言うと、トリップ先の世界の理が元の世界と違えば違うほど、特殊能力が付加されるみたいなんだよね。神様のサービスかしら。」
「どんなサービスだ。」
「正直なところ、この世界の人間……と言うか、キャラクターの能力って先ず たちの世界では有り得ないと思うでしょ? でもそれが此処では平気でまかり通ってる。そういう訳で の変な力もパワーアップ。その他能力もパワーアップ。OK?」
  は頷いた。確かにこの世界、有り得ない事がまかり通りすぎる。信玄のあの異常なまでに大きい軍配斧は元の世界でも振り回せる人は居るだろうが、振り回してそれが竜巻になる等先ず有り得ない。その他にも色々突込み所は満載だ。
ほどでは無いけど、特殊能力付加されてるよ。頑丈と言うか打たれ強いと言うか、自分でもそんな気しない?」
 その言葉に は思い当たる節があった。奥州に来た時、延々馬に揺られてフラフラになったが、あの勢いで馬に跨っていたら普通股擦れを起こすとか、もっと激しい筋肉痛になるとかあっても良さそうなものだが、特に酷くもならなかった。そしてそれ以上に、そもそも がこの世界に『落ちて』来たとき、無傷だったのがその証明ではないだろうか。「何で死なない訳?」と佐助も言っていたが、普通あの高さから落ちたら全身打撲内臓破裂どころではなく、先ず間違い無く即死だったろう。天幕にぶつかったからとは言え、ほぼ無傷と言うのは有り得ない。
「何でもアリって事なの?」
「ちょっと違う。斬られれば怪我するし、病気にもなるし。元の世界よりも丈夫で長持ちってだけ。何でもアリと言えば有りかも知れないけどねー。移動に時間がかからないトコとか。季節感丸無視のトコとか。」
「季節感?」
 移動に時間がかからない、というのには気付いていた。奥州からいつきの待つ最北端まで、例え馬を飛ばしたとしても半日もかからないと言うのはおかしい。有り得ないと言う事があり過ぎて、逆に感覚が麻痺している気もするが、季節感を無視と言うのはどういう事か。
「きちんと時間も流れているけど、そのステージの合戦、となると決められた季節になるよ。いっちゃんの所がそうだったでしょ? 真冬の猛吹雪の津軽だったじゃん。」
 言われて見ればそうだった。つい先日まで冬だった筈なのに、今ここ奥州は既に春めいている。位置が違うからだけでは済まされない。
「普通に過ごしている分には問題ないよ。ただ、いざ合戦となると何時の間にか定められた季節に移っている。この世界の人間は誰も気付かない。それが当たり前だから。そういう世界だからね。」
「…まぁそう言われたらそうだね、って納得するしかないよねぇ。私たちとしては。」
「そゆ事。所詮 らはエトランゼ〜。成り行きに任せるしかないでしょね。」
 節をつけて言う は最後の質問をした。
「で、これからどうするつもりなの?」
「ん?  ちゃんと一緒に誰かが天下統一するのを待ちますよ。」
 ちょっと働きすぎたから、一休み。と は疑わしげに聞いた。こういう風に嘯く時は大概ろくでもない事を考えている気がするのは、疑心暗鬼過ぎるだろうか。
 だが畳の上で横になって寛いでいる を見る限りでは、何も考えていないようにも見えるし、企んでいる様にも見える。
 そして案の定、 が思いついたように言った。
「一休みする前に、ちょっとやる事があるんだけど。 ちゃんは心配しないで待っててくれる?」
「……止めても無駄でしょう。帰ってくるの?」
Off course!


 いきなり足元が揺れて、驚くと同時に下から呼びかけられる。
「猿ちゃん、ちょっと。お願いがあるんですけど?」
 佐助の潜む天井裏を が小突いたらしい。例によって手には巨大筆が握られている。
 諦めて下りると、 は口に人差し指をあてて静かにするように伝える。決して佐助が物音を立てた訳では無いが、夜も遅いのでその関係だろう。佐助は手招きされて に近寄ると、先ず小さな声で最初に思った事を言った。
「あのね、 サン? 何で俺様の居る場所が判るの? 一応俺様忍頭で結構腕には自信あるんだけど?」
「うん、腕は良いよね。別に意味は無いですよ。単に何となく此処かなー、と思う所に猿ちゃんが居てくれるだけで。」
「…何となく、かよ。はぁぁ。」
 何となくで見つけられては忍としては商売あがったりな気がする。だが深く考えるのはよそう。どうもこの よりも更に調子が狂う。
 佐助は頭を切り替えて、 の最初の呼びかけを思い出した。
「で、何? お願いって。」
ちゃんが住む事になってるお屋敷に連れて行って欲しいんですが。今、すぐ。」
「……何で?」
  の体調が万全になりさえすれば、幾らでも過ごす事になる予定の屋敷に何故今連れて行かねばならないのか。
 そして佐助の予想通りの答が返ってきた。
「釘をね、ちょっと。」


 何でこんな事してるのかなぁ、と佐助は思う。今現在、馬の世話をしながら が戻るのを待っている所だ。
 結局、佐助は のお願いを断れなかった。
「佐助さん、お願いします。ね?」
 そう言われて厭だと断るのは至難の業だった。 の『お願い』は厭な事は断れる、と聞いたことがあるが素直に聞いてしまったという事は心の奥底で自分でも気になる事をお願いされたからだろう。

 誰が を襲わせたのか。

 勝頼が家臣の讒言で を襲わせたと言う事になっているが、それではそもそもその家臣は何故 を襲おうと思ったのか。しかも自らの手では無く、『嫡男』勝頼に指示させる辺り裏が有る様に思えるのだが、その件については既に勝頼が信繁預りとなり信玄もそれ以上追及しなかった為、有耶無耶になっている。
 上が有耶無耶にすると決めたのなら、それ以上追求しないのは暗黙の了解だが、 がそれについて釘を刺しにいくと言うなら話は別だ。誰に釘を刺すのか。非常に興味がある。
「それにしても……本当、変わった娘だよね。」
  は更に変わっていた。変わっていると言うより妙な事に詳しい、と言った方が正しいだろうか。
 この屋敷に来る前、伊達の城で馬を物色したのは佐助だが、馬の乗り方を提案したのは だ。
「二頭、連れて行きましょう。夜が明けるまでに向こうに着きたい。途中で馬を換えながら走れば早く着くと思うんだけど、どうですか?」
「二頭って事は、相乗りじゃなくて?  サン馬に乗れるの?」
「んー、前に乗った事があるから、コツさえ思い出せれば何とか行けるでしょう。馬の負担軽くする為に、一頭は空馬で走らせて、猿ちゃんには悪いけど走ってもらいます。時々、乗って良いから。」
「はいはい、判りました……っと。忍使いの荒いこって。」
 溜息混じりに呟きつつ、佐助は の提案に驚いた。『馬の負担を軽くする為』走るのは、長距離を移動する場合よく行う手段だ。…忍の間では。一般に知られていないその方法を が知っていた事に先ず驚く。
 その後、一晩中馬を走らせ の言う通り明け方前に目的地に近付くと、やおら は馬から降りた。突然の事に佐助が慌てて引き返すと、 は佐助に「此処で待っていて。」と告げた。
「此処でって……もうすぐ着くよ? 一人で大丈夫なの?」
「猿ちゃんに迷惑かけられないからね。 一人で此処に来た事にして置きたいんですよ。…ハッタリかます為にもね。」
「迷惑って……もう充分かけられてるのに今更ぁ?」
「それは言わない約束でしょ、おっかさん。…てな冗談はさて措き、猿ちゃんどうもありがとでした! 多分そんなに時間かからないと思うので、此処で休んでいて下さい。では。」
  はそう言うと片手を上げて挨拶の形を取ったのだろうか、そのまま歩いて屋敷へと向かって行った。残された佐助は、こっそりついて行こうか言われた通り休んでいようか迷ったが、休む方を取った。移動に疲れたのも確かだし、 が折角自分に累が及ばぬように気遣ってくれたのだ。話は後で幾らでも聞くとして、佐助はひとまず馬の世話をする事にした。


 佐助と別れてから は目的の場所へ向かって静かに歩いていた。
 忍び足は得意だし、屋敷に忍び入る前『誰にも気付かれないように』とお願いもしたので、少し気をつけるだけですんなりと侵入できた。後は佐助に教わった場所を確認するだけ。
 佐助には一応何処に行くかは伝えていない。だが場所も判らず闇雲に探すのも骨が折れるので、誰がどの部屋に居るのか、と言う事だけは聞いておいた。
 音も無く襖を開けると、そこは佐助の言った通り信玄の部屋。情報が間違っていない事を確認しつつ、次の部屋も覗くとやはり言われた通りの年恰好の人物が寝ていた。微かに微笑んで戸を閉めると、 は目的の場所へそっと歩いていった。


 何か気配がする、と気付いたと同時にガバと跳ね起きる。と、暗い部屋の隅に人影が見えた。
「何奴!」
 誰何すると同時に刀を構えると、人影は「静かに。」と人差し指を口に当てた。その声に覚えがあった為、構えた刀はそのままにして顔を確認する。
殿……ではございませんね。良く似ておられるが、もしや とか言う妹御か?」
 そう言う間も相手は近付き、顔がはっきりと判る程近付いた。やはり ではない。聞いた通りの特徴を確認し、妹の の方だと確信する。
 一方 の方も、相手が無闇に攻撃してこなかった事に感謝しつつ、冷静に判断を下した事に胸の内で拍手する。
「仰るとおり、 です。初めまして、典厩公。兄君以上に、姉がお世話になったようで。『お礼を言いに』参りました。」
「その呼び名を良くご存知ですね。如何にも私は武田信玄が弟の信繁と申します。しかし何故此処に? 兄の話では伊達殿の城にて養生中との筈ですが。」
  に敵意が無いことを確認すると信繁は刀を収めた。そして の言葉に引っかかるものを感じて、その意味に気付き、はっと目を合わせる。
  は笑って言った。
「言ったでしょう、『お礼を言いに』来たって。甲斐に戻られる前に是非とも会っておきたかったんですよ。…釘刺しに。」
「……何の事でしょう。」
 知らぬ振りでそう言うと、 は小さく笑った。
「まぁ確証が有る訳でなし。 がそう思っただけなんで、聞き流してくださっても結構ですよ。…御嫡男の度量試しに姉を巻き込まないで下さい。そんな事の為に死にそうな目に遭うのは割に合わない。でしょう?」
 ほぼ断定した言い方に、信繁は反論すべきかどうか迷い――止めた。その代わりそう言い捨てて立ち去ろうとする を呼びとめる。
「何故私だと?」
「消去法で行くと貴方しか残らないから。」
 先ず を襲ったのは? 武田の忍び。命じたのは、信玄の嫡男、勝頼。
 理由は? 伊達との同盟が危険と判断したから。いつ覆されるか判らない。奥州の鷹は信用出来るのかどうなのか。何より が果たして交渉の役に立つのか。
「武田の不利になる、と考えてそれならばその原因を無くせば良い、と考えるのは判る。だけどそれならわざわざ御嫡男を利用する事は無い。自ら命令を下せば良い事。なのに何故御嫡男を使ったか。そうする意味が有ったから。」
 勝頼を嵌める為かそれとも器量を見極める為か。どちらが目的なのか考えて、 を狙わなくても幾らでもやり方はある。
 信玄の後継者と目されているものの、勝頼は未だ未熟なきらいがある。家臣の中には信繁の方を推す者も多い。ただ信繁自身が勝頼の補佐をする事に異議を申し立てない為、後継者勝頼、補佐信繁の図が出来上がっている。
「嫡男殿が姉を不審に思うように仕向けるのは別に貴方でなくても出来る事。誰かが嫡男殿に囁けばいい。あの娘は怪しい。もしや伊達の間者では? でなければ伊達との同盟が先々問題になるなら、早い内に同盟を組んだ原因を取り除けば良い。…それ位は誰だって言えます。」
「それだけでは私が裏から命じたとは言えませんね。」
「そりゃ勿論。命じてないですもん。多分ね。」
 これと思う家臣に一言二言、呟けば良いだけの話。決して命令ではなく、不安を口にしただけでも、聞いた方は拡大解釈する。
「軍師殿と典厩公、どちらか迷いましたが武田一族の先々の事を考える人間と言ったら貴方しか残らないんですよ。軍師殿も考えはするでしょうが、後継者を試すような真似まではしないでしょう。もしするなら、こんな小さな事ではなくてもっと大きな事で試すと思います。」
「実戦で、と言う事ですか?」
「そうですね。まぁ既に幾つも実戦は体験しているでしょうが、それは恐らく一武将としてであって采配を揮うには至っていない。総大将としての器があるかどうか、それは実戦で確認するのが一番手っ取り早い。危険も少ない。何故なら後ろに控える補佐がいるから。軍師殿然り、貴方然り。」
 采配にミスがあったとして、それは実戦では致命的なミスに繋がるが、フォローできる人間がいた場合はその限りではない。そして大きな舞台で失敗を犯すようなら後継者として未だ未熟。見極めるのに合戦ほど良い材料は無い。  
が貴方を黒幕だと確信したのはね、御嫡男が典厩公預かりになった後、お館様が何の策も講じなかったからですよ。貴方を信頼しているからと言えば聞こえは良いが、仮にも一族の棟梁が決めた事をその後継者が無視するとなれば、示しがつかない。後継者だからこそ厳罰を、と思う は間違っていますか?」
「…その通りですよ。ですが 殿を失った所で我が一族には痛くも痒くも無い。そう兄が考えて何もしなかったとしたら?」
「お館様がそう言う人なら、武田はとっくに滅ぼされているんじゃないですかね。」
 厳しくも懐広い信玄だからこそ、家臣にも仕える甲斐が有り他国からも一目置かれると言うもの。そうでなければこの下克上の世で勢力を広げる事も出来ないだろう。
「お館様も貴方が何を目的として動いたか判っていたからこそ敢えて何もしないんだと思いますよ。でなければ例え弟君、嫡男であろうと罰したでしょう。」
「やれやれ、 殿も頭が切れると思ったが、あなたも相当だ。困りますね、そう言う頭の切れる方が野に放れていると言うのは。」
の方がこう言う事に慣れてしまった分、一分の利が有るだけで。…再三言わせてもらいますが、 たちに手出しは無用です。いつか頼まれなくても姿を消します。それまでは放って下さい。では。」
 するりと闇に紛れようとした を信繁が呼び止めた。
「お待ちなさい。恐らく一人で来たのでは無いのでしょう。お連れの所まで護衛を一人差し向けます。…私からの詫びですよ。」
「別に要りませんが? でも詫びと言うなら受けましょう。」
 言っている間に忍が現れる。その顔を見て は一瞬顔を顰めた。
「…また腹の立つほど美形だこと……。」
 こっそり呟くと、 は信繁に礼を述べて館を出た。


 離れて護衛する忍に は話しかけた。
「別にこの辺で戻られても構いませんよ。それとも他に密命があります?」
「……連れの所まで送る。それが命令だ。それ以上の事はしない。」
「あ、そう。でも典厩公は貴方の主人じゃないでしょう。それでも命令は守るんだ?」
「主人から命じられたのは信繁様の命に従う事。異論はない。」
 答えながら己の主人が誰なのか知っていそうな に驚く。何処まで知っているのか、それを考えると信繁が言った『困る』と言う言葉も頷ける。余り切れる人間は危険だ。
 このまま命令通り護衛を続けるかそれとも主君の安全の為に今の内に不穏分子は取り除いておくべきか。武士なら後者も有っただろうが、忍ぶ身でそこまででしゃばった真似は出来ない。
 余り長く一緒に居ると忍らしくない考えがどんどん浮かんできそうなので、早めに送り届けよう、と思った矢先に が立ち止まった。
「…貴方の上司が戦ってる。」
 呟いた視線の先に、確かに佐助が戦っている姿が見えた。だが奇妙な事に殺気はあまり感じられない。殺気が有れば よりも早く気付いていただろう。
「加勢出来ますか? …才蔵さん。」
「…承知。」
 頷くと同時に才蔵――真田忍隊の二番頭、霧隠才蔵――は跳んだ。


 馬の世話を終えてすぐに佐助は人の気配を感じた。同業者の気配。
 実は伊達の城を出てからずっと気にはなっていた。 が話し合っていた時にその内容を知ろうと佐助は天井裏に潜んでいたが、もう一方で床下に忍んでいた者がいた。ばれたついでに何処の忍かと探りに行ったが、とうに逃げた後で判らず仕舞いだったのだが……恐らく同一人物が探りに来たのだろう。
 いい機会だ、きっちり調べておこうと佐助は暫く気付かぬふりをして相手の出方を待った。
 暫く待ったものの仕掛けてこない。佐助は が戻ってくる前に片付けたかったので、相手の間合いを見計らって行動に移した。
 いきなり後ろに跳んで木の枝から枝へ飛び移る。突然の佐助の行動に対処しきれず、何処に消えたかと気配を探ろうとした時、喉元を苦無が掠めて木に刺さる。気付いた時には後ろに回りこまれた。
「…何処の何方かと思ったら……久しぶりじゃん。相変わらずギリギリの格好してるねぇ。」
「……煩い。」
 手裏剣を投げて佐助から離れるかすが。違う枝に移ると佐助と睨み合う。
「何を探りに来たワケ? 伊達の城に忍んで来たの、アンタでしょ? 何が目当て?」
「貴様には関係ない。」
 言ってかすがは佐助から離れようとしたが、即座に回り込まれる。樹上では分が悪いとかすがは判断し、佐助の鳩尾に肘鉄を入れて離れようとした。が、気配を察したのか避けられて脇腹を掠めただけに止まる。それでもその拍子に佐助の立ち位置が変わったので即座に離れて地上に降りる。佐助も追いかけるようにして地面に立った。
「去るなら目的を吐いてからにしてよ。俺様も昔の馴染とそんなに戦いたい気分じゃないし。」
「…甘くなったな。」
 短くそう言うとかすがは佐助に次々と技を繰り出す。その全てを避けられて苛立つものの、佐助に戦う意思が無いのは見て取れる。何度目かのせり合いの後、かすがは叫んだ。
「貴様、私をなめているのか! 何故戦おうとしない!?」
「今あんまり物騒な事したくないんだよね。大体俺様の方が勝つに決まってるじゃない? さっさと吐いた方が良いよ、本当に。」
「ふざっ……!!」
 ふざけるな、と言おうとしたかすがは投げようとした苦無がそのまま佐助の放った手裏剣に飛ばされて慌てた。焦りはそのまま隙となり、次々と投げられる手裏剣を打ち返すので手一杯になってしまった。間合いを詰められ、気付けば佐助に羽交い絞めにされていた。
「放せっ! このっ……!!」
「じゃ、言う?」
 耳元で囁かれ、かすがの肌が粟立つ。身を捩って逃げようとしたが、どう言う訳かますます体が密着し、あまつさえ佐助の手があらぬ所を弄っていた。
「なっ、何をっ! あぁっ!」
「いや〜、こういう役得でも無いとやってられないでしょー。おたくだってこれくらいの覚悟はあるだろ?」
「くっ、放せっ!」
「何を探ってたか教えてくれたら放す。」
 言いながら佐助は更にかすがの身体を弄る。かすがの忍装束は身体の線が露なだけに、布の上からでも充分佐助の手の動きが伝わる。身を捩りながら逃げようとするかすがだが、羽交い絞めな上動くたびに佐助の手がかすがの身体を弄るので力が思うように出ない。しかも時々耳やら首筋まで舐められて、力が抜ける。
 体力的に佐助には適わない上、忍としてもやや佐助の方が優勢なためか、佐助はかなり余裕があるように見える。悔しくてかすがが何度目かの逃亡を試みようとすると、佐助が直接肌に手を触れて来た。それと同時に二人の背後から声が掛けられる。
「…何を遊んでいるんだ、佐助。」
 苦虫を潰したような顔で才蔵が言うと同時に佐助の腕の力が弱まったので、かすがは即座に腕を撥ね退けて二人から離れた。ついでに乱れた胸元を少し直す。
「あらら。折角いい所だったのに……って、何でお前が?」
「加勢をしろと言われた。」
 誰にとは言われなくても判った。 が戻ってきた事に気付いて佐助は肩を竦めてかすがに呼びかけた。
「良い所だったけど邪魔が入ったから仕方ない。行くなら行けば?」
「…理由は良いのか。」
「次は容赦しないよ。」
 佐助のその言葉にかすがは憤った。なめるのも大概にして欲しい。だが二人相手に戦うのは得策ではない。諦めて消える事にしたが、借りは作りたくないので梢に移ったと同時に佐助に言った。
「伊達の城では何も判らなかった。探る前に見破られたからな。此処でお前を見つけたのは偶然だ。私はあの方の為に動いている。あの方が気にする武田信玄がこの近辺に居ると知れば、何をしているのか探るのは道理だろう。」
 それでは特にこれと言って情報を入手したわけでは無いのだな、と佐助はホッとした。 の存在を他国にはあまり知られたく無い。頷く佐助にかすがは思い出したように続けた。
「西で同盟が組まれたと言う話を聞いたばかりなのに、甲斐と奥州も同盟を組んだと聞いた。それについては面白い噂が立っている。…甲斐の虎と奥州の鷹が人質を取り合っているとか居ないとか。その事もあの方が二国を気にする理由だ。」
 聞くなりもっと詳しく、とかすがを呼び止めようとしたがとっくに立ち去ってしまった。思わず舌打ちしたがそうしても仕方ない。
 具体的にどんな噂なのか調べなくては、と思っていると がひょっこり現れた。
「ただいま。もう済みましたかー?」
「ああ……才蔵を寄越したの、 サン? 2対1じゃ分が悪いと思ったんじゃない? 逃げられた。」
「逃がしたの間違いだろう。」
 溜息をついて突っ込む才蔵に肩を竦めて答える。どういう事かと目で問う に、佐助が掻い摘んで説明した。そして が残念がる。
「えー。神速聖将の美しき剣に会い損ねたのかー! 残念。やっぱNice body?
『ないすば』の意味を聞いて佐助は苦笑して頷いた。何故それで残念がるのかが判らない。
 そして才蔵は用が済んだとばかりに挨拶をした。佐助が今後の指示を伝えると も挨拶をした。
「送ってくれてありがとう。典厩公に宜しく。サイちゃん、またね。」
「サ……? 伝えておく。」
 困惑した顔で消えた才蔵同様、佐助も困惑気味の顔で に問いかけた。
「典厩って、まさか……?」
「そのまさかだけどヒミツですよ。特にわんこちゃんには。」
 口に人差し指を当てる に佐助も頷く。
 一応用事も済んだ事だし、と は少し休憩してそれからまた奥州へと戻る事にした。行きよりも若干ペースは遅いが、それでもかなり早い方だろう。昼前に伊達領に入り昼過ぎには城近くまで戻る事が出来た。


 城に戻ってみると、待っていたのは不機嫌さMAXの奥州筆頭だった。
「お早いお戻りで、 チャン。道中楽しんできたかい?」
 腕組をして二人を迎えた政宗は表情はにこやかだが、目が全く笑っていない。背後では景綱がオロオロしているし も項垂れている。
「…まぁそこそこ楽しめました。じゃ、猿ちゃんありがとう。わんこの所に報告に行って来れば?」
「え、良いの?」
 思わず訊き返す佐助に、政宗が言った。
「手前の御主人サマは幸村だろう。さっさと勝手な行動をした報告をしてくりゃ良いじゃねェか。」
 その不機嫌さに流石の佐助も慌てて消えた。残された は、政宗の機嫌をどう直そうか考えたがいい考えが浮かぶ前に政宗に引き摺られるように部屋に連れて行かれた。
 割り当てられた部屋に着くなり政宗が低い声で唸る様に話し掛ける。
「アンタ、言ったよなァ? 本調子になるまで大人しくしてるって。どの口が言ったんだ、アァ?」
 この口、と言おうと思ったが政宗の不機嫌がますます酷くなると思い、 は素直に謝った。
「心配かけたのは悪いと思う。ごめん。ただどうしても今じゃなきゃダメだと思ったからそっちを優先したですよ。」
「…大方武田の所に行ったんだろう。 に刺客を差し向けたのが誰か探りに。」
 素直に謝られて調子が狂ったのか、政宗は溜息をつきながら言った。探りと言うより確信していたから行ったのだろうが、何の相談もなくいきなりいなくなるのは止めて欲しい。
 どうもおかしい、と政宗が気付いたのは朝目が覚めて間もなくの事だった。初めは政宗が作っていた の食事だったが、流石に毎日は無理なのでこの2、3日は腰元たちに任せている。目覚めて妙な胸騒ぎがしたので朝餉くらいは一緒に摂ろうと部屋を訪ると、 の様子があからさまに変だった。これは益々おかしいと追求したら、 が出かけたと言う。
 またいきなりいなくなったのか、と政宗が呆然としている所へ持ってきて、幸村が佐助の姿が昨夜から見えないと言ってきた。二人揃って居なくなった、と言う事に政宗は苛立ちを隠せず の説明を聞いても憤っていた。
「政宗さん、 は戻ってくるって言ってました。勝手に出かけたのは申し訳ないですけど、そんなに怒らないで下さい。」
「アンタに怒ってるんじゃ無ェ。あの好き勝手女……手前で本調子じゃ無いと言っておきながらこれかよ! 猿も猿だ! 忍の癖に勝手な真似しやがって……。」
 それは は喉元まで出かかったが言うのをやめた。そんな事は政宗自身も判っている事で、ただ単に彼は言わずには居られないだけなのだ。
 苛立ちと不機嫌さが募る一方で は中々帰ってこない。漸く戻ってきた頃には政宗自身何故こんなに怒っているのか判らないほど苛立っていた。
 不機嫌な理由が の体調のせいなのか、それとも他にあるのか政宗には判らなかったが、取り敢えず無事に戻ってきたし何をしに行ったのかも想像がついたので政宗は に詳しく説明させようと話を振ってみた。
「で? とんだ強行軍だったみてぇだが、片はついたのか?」
「まぁね。手出し無用と釘刺ししてきましたよ。誰に、とは訊かない?」
「……言う気があるならとっくに言ってるだろ。まぁ大体予想通りの奴じゃないのか。」
「独眼竜の予想が誰かは知らないけど、多分合ってる。聖徳太子って言ったら回りくどすぎるかなぁ。」
「くどいな。だがやっぱりそうか。」
 脇で二人の会話を聞いていた は目を瞬かせた。言っている意味がさっぱり判らない。だが二人とも敢えて が気付かないのを見て取り、二人顔を見合わせてニヤリとする。
 信繁と がどの程度の知り合いかは判らないが、信玄の弟で人当たりもいい信繁を が嫌う理由も無い。寧ろ良い人だと思っている節があるのでそんな に敢えて黒幕が信繁だと伝えるのも憚られる。教えるとしてももう少し先延ばしにしたい、と言う事でわざわざ判りにくく言ってみた。
 幾ら が物知りとは言え聖徳太子、即ち厩戸皇子から信繁の通称左馬助からの呼び名、典厩公をすんなり導き出せるとは思えなかったので例えてみたのだが、どうやら上手くいったらしい。
 政宗の機嫌が直ったのを見計らったかのように景綱が腰元を従えて現れた。そして の前に膳が置かれる。
様、とにかくお疲れでしょうし饑じゅうございましょう。食べてお休み下さいませ。」
「景綱。あんまりコイツを甘やかすんじゃ無ェ。つけあがるぞ。」
 二人の遣り取りに「政宗さんがそれを言うんだ……。」と がこっそり呟く。一番甘やかしてる本人な気がするのだが、と思っているとギロリと睨まれ慌ててすまし顔で知らぬ振りをする。その間に は早速箸をつけ始めて思いついたように政宗に話しかけた。
「良いじゃないですかさ、別にー。まさか奥方様にもそんな調子? だったら愛想つかされますよ。」
「…アァ?」
  の言葉を理解しかねて政宗が訊き返す。一方で景綱と の言葉に固まった。
「だからー、あんまりキツイ事言うと正室殿とか側室殿に嫌われますよ、って言ってるの。…そう言えばお世話になってる事だし、挨拶くらいした方が良いのかな?」
 三人の様子に気付かないのか、箸を進めながら がのほほんと言う。言っている意味が漸く理解できた政宗は、不機嫌に答えた。
「生憎だが今の所そんな心配は無用だ。俺は室は囲って無ェ。」
 その言葉に の箸がピタリと止まる。
Once more、 please?
So、I do not have a wife nor concubine。
 呆然とする が叫んだ。
Really?! 何の冗談っ??」
「何が冗談だ。」
 慌てぶりが面白いと思うものの、何故そこまで驚くのか判らず政宗が問うと、 が涙目で訴えた。
「だって!! 楽しみにしてたんだよっ! 側室が7人居るとは期待してなかったけど、せめて正室・側室併せて3人はいるかなーって。そしたら独眼竜は絶対面食いだろうから、美人さんに囲まれて楽しいだろうなって思ってたのに! 酷いよ!  のドリームを返せ!」
「何だ、その側室が7人てのは!? 何処から出てくるんだ!!」
の世界の独眼竜は、正室の他に側室7人と愛人数人、色小姓持ちの助平だったんだい! うーわーんっ!  ちゃん聞いたっ? 酷いよねっ!」
「だから私に振るなっ!」
 寝不足のせいか妙なテンションの に抱きついて、自分が如何に政宗の美人の奥方達に会うのを楽しみにしていたか、と説明する。
  の異世界トリップ時の楽しみは、他人の恋愛を陰から日向から見守り応援し、時には蹴り飛ばす、と言うものだ。大体此処暫くは乙女向けゲームに嵌っていただけに、その傾向が顕著だった訳で、その他にも大概のゲームではキャラクターの恋愛模様が描かれていたりするのでその辺を応援するのが趣味なのだ。しかしBASARAの世界で恋愛は期待しない方が良いんじゃないか、と は思う。
 確か上杉軍の大将二人が良い感じだったものの、その二人には未だお目にかかったことは無いし、他は夫婦か恋愛対象未満の少女だったりで応援のし甲斐が無い。だから政宗の女性関係を期待していた、と言う の気持ちも判らないでは無いが、ここまで言うほどの事でもない。
 政宗の米噛に青筋が立っているのを見て、 を落ち着かせようとしたものの、余程疲れているのか は気付かず逆に政宗に向かって叫んだ。
「独眼竜の甲斐性なしっ!!」
「ッ……!」
 ブチ、と何かが切れた様な音がした、と と景綱が思った瞬間、政宗の周りに蒼い光が集まりだした。これはやばい、と ごと避けたその直後、頭上を政宗の放ったHELLDRAGONが駆け抜けていった。

「手前ェ!  ーーっ!! You carry your jokes too far!
「ふざけて無いよーっ! 悔しかったら室の一人くらい囲ってみろっての!」

 追いかけっこを始めた は溜息をついた。

≪BACKMENUNEXT≫

閑話休題その2、と言う感じでしょうか。書きたい事が多すぎて何を書いていいやら判らなくなったいい見本です。
政宗の側室は少なくても7人と言うのが定説です。その他愛人と一夜限りの相手とか色々居たらしいですね。(笑)姉と弟両方に手を出したという話もあるらしいのでかなりお好きなようです。
あんまりにも色気の無い話なのでちょっと色気を出そうとかすがを出してみたら、色気と言うよりエロ気になって……ゴホゴホ。

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ちょっと訳の判らない話で申し訳ないです。まぁ張った伏線を如何に消化させるか、と言う事ですね。

クイズの答えですが、本文中に有るとおり、3男氏です。留守政景。

あ。石見銀山と言うのは殺鼠剤です。通称ネコイラズ。