バッハのカンタータをこよなく愛する皆様,いよいよライプツィヒ時代がやってきました。ワイマール以前の作品ももちろん素晴らしくはありましたが,これから続々と登場する傑作を思うと,わくわくする気持ちでいっぱいです。
BCJでは,ライプツィヒ時代のカンタータを初演年代ごとに,1723年(29曲(BWV22,23を含む)),1724年(51曲),1725年(28曲),1726年(27曲),
1727〜29年(17曲), 1730〜50(18曲)と言うグループに分類しました。それぞれのグループの中では,必ずしも個々の初演順というわけには行きませんが,全体としては成立順を大まかに追うことで,作風の変化も理解していただけると思います。1年に3回ほどの演奏では残念ながら教会暦を尊重するには限度がありますが,選曲にあたっては暦と大きく外れないことも心がけています。さらにワイマールで作曲され,編成を変えてライプツィヒで再演された作品も若干加えていくつもりです。
きょうお聞き頂くのは,バッハの苦難と栄光に満ちた27年間のライプツィヒ時代冒頭を飾る3曲,つまり,ケーテン時代の最後に作曲され,ライプツィヒでのカントル採用試験で演奏された22番と23番,そして採用された後の最初の作品75番です。
22と23番は一対のカンタータとして復活節前第7日曜日(Estomihiと呼ばれる日)の礼拝で演奏されました。その日の聖書日課(ルカ18章31〜43)の前半を22番が,後半を23番がそれぞれ基にしており,ひかえめな楽器編成ながら,味わい深い作品です。特に23番のレシタティーヴォを伴奏するオーケストラにオーボエを加えて,『神の小羊』のコラールを託したところは注目すべきでしょう。その同じコラールが終曲として,試験演奏の直前に付け加えられたのでした。
バッハのライプツィヒでの最初の作品第75番の演奏は,大いに喝采を博した,と伝えられていますが,確かに,BACHを表す数字14曲から成る,あたかもオラトリオの如き大規模な2部構成全体に,新しい任地での意気込みが溢れています。弦楽器とオーボエの劇的な冒頭音型と対照的な合唱の入り,4つの魅力的なアリア,そして全体を締めくくる神信頼のコラール『神のなしたもう御業こそ,いと善けれ』。特にこの,カンタータ12番でも用いられた(筆者の最も好きな)美しいコラールは,1部と2部の最後に置かれて纏め役をするばかりではなく,第2部冒頭のシンフォニアでもトランペットに託されて登場し,高らかに神への信頼が歌われるのです。
今回はバッハコレギウムジャパンを応援してくださる方々に大きなニュースがあります。熱心な賛助会員のおひとり矢口真さんが,BCJ応援ホームページを開設してくださいました。1990年の結成以来の演奏の記録や出演者の横顔,皆様からの様々な声を満載してありますので,是非お訪ねください。
【参考】 BWV23のチェンバロの使用について
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