2000年9月に、鈴木雅明&BCJは読売日本交響楽団の第386回定期公演(9/9)でメンデルスゾーン編曲版の「マタイ」受難曲を演奏しました。このページでは、この時の資料に今回、2009年の上演での情報を盛りこみ、ご鑑賞の参考に紹介させてただこうと思います。
1829年、弱冠20歳のメンデルスゾーンの指揮でバッハの「マタイ受難曲」が上演されました。バッハの死後長らく彼の声楽作品はほとんど演奏されていませんでしたから、これは非常に画期的なできごとでした。この再演を契機にバッハの声楽作品が復活を遂げたとも言われています。その時にメンデルスゾーンが用いた楽譜は、現在、オックスフォードの図書館に保存されており、これを見ると一体どのような演奏が行われたのかがわかります。メンデルスゾーンは、楽曲を削除したり一部編曲したり、当時もう使われなくなっていた楽器のパートを別の楽器に置き換えるといった現実的な措置をとって、いわゆるロマン派の時代の聴衆に受け入れられやすいかたちでこの作品を演奏したのでした。
今回のBCJの演奏会では、この最初の再演のあと、1841年4月4日にライプツィヒのトーマス教会で演奏された時の稿が取り上げられます。アリアが2曲しかなかった1829年に比べ、比較的多くのアリアが取り上げられたこの1841年の演奏に可能な限り基づいた演奏で、生誕200年を迎えたメンデルゾーンに敬意を表しつつ、バッハ・ルネサンスの原点に思いをはせてみましょう!
今回の演奏(1841年のメンデルスゾーン版)での楽曲の省略について、以下に表でご紹介します。鑑賞の参考にどうぞ。なお表の左の列に表記した楽曲のナンバー及び曲順は新バッハ全集(ベーレンライター版)によっています。また、各曲(特にアリア)に割り当てられている声部はメンデルスゾーンによって変更されている場合がありますが、この表では原曲での声部で記載してあります。変更された内容は右側の欄に記載してあります。
なお、コンティヌオは原則としてチェロ2本とコントラバス1本による演奏で、オルガンは加わりません。オルガンはアリアの中間部など、オーケストレーションの薄いところでの和音の補充などの役割のみを担います。
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1 | 二重合唱、(コラール:ソプラノ・イン・リピエーノ) | リピエーノはソリスト4人(SATB)とオルガン、クラリネットで。 | |
2 | 福音史家、イエス | ||
3 | コラール | ||
4a-e | 福音史家+二重合唱+福音史家+合唱+福音史家、イエス | ||
5 | レチタティーヴォ(アルト) | ||
6 | アリア(アルト) | DC後、前奏のみで終了。 | |
7 | 福音史家、ユダ | ||
8 | アリア(ソプラノ) | 第1オケの担当に変更。DC時、前奏抜きで直接歌から。 | |
9a-e | 福音史家+合唱+福音史家、イエス+福音史家+合唱 | ||
10 | コラール | ||
11 | 福音史家、イエス | ||
12 | レチタティーヴォ(ソプラノ) | 省略 | |
13 | アリア(ソプラノ) | 省略 | |
14 | 福音史家、イエス | ||
15 | コラール | ||
16 | 福音史家、イエス、ペテロ | ||
17 | コラール | 省略 | |
18 | 福音史家、イエス | ||
19 | レチタティーヴォ(テノール)(コラール) | オーボエ・ダ・カッチャをクラリネット、リコーダーはフルートで。 | |
20 | アリア(テノール)(合唱) | ||
21 | 福音史家、イエス | ||
22 | レチタティーヴォ(バス) | 省略 | |
23 | アリア(バス) | 省略 | |
24 | 福音史家、イエス | ||
25 | コラール | ||
26 | 福音史家、イエス、ユダ | ||
27a,b | 二重アリア(ソプラノ/アルト)(合唱)+二重合唱 | ||
28 | 福音史家、イエス | ||
29 | コラール(ソプラノ・イン・リピエーノ) | オーボエ・ダモーレをクラリネットで。 リピエーノは無し。 | |
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30 | アリア(アルト)(合唱) | ||
31 | 福音史家 | 一部省略。最後の部分、折下げ。 | |
32 | コラール | 省略 | |
33 | 福音史家、大祭司、偽証者 I,II | ||
34 | レチタティーヴォ(テノール) | 省略 | |
35 | アリア(テノール) | 省略 | |
36a-d | 福音史家、大祭司、イエス+二重合唱+福音史家+二重合唱 | ||
37 | コラール | ||
38a-c | 福音史家、女中 I,II、ペテロ+合唱+福音史家、ペテロ | ||
39 | アリア(アルト) | ソプラノに変更。ソプラノ、ヴァイオリンソロ、一部オクターブ上に。 | |
40 | コラール | 省略 | |
41a-c | 福音史家、ユダ+二重合唱+福音史家、大祭司 I,II | ||
42 | アリア(バス) | 第1オケの担当に変更。 | |
43 | 福音史家、ピラト、イエス | 一部省略 | |
44 | コラール | 省略 | |
45a,b | 福音史家、ピラト、ピラトの妻、二重合唱+二重合唱 | 一部省略 | |
46 | コラール | 省略 | |
47 | 福音史家、ピラト | ||
48 | レチタティーヴォ(ソプラノ) | オーボエ・ダ・カッチャをクラリネットで。 | |
49 | アリア(ソプラノ) | フルートの音に一部変更あり。歌の終わりで終了。 | |
50a-e | 福音史家+二重合唱+福音史家、ピラト+二重合唱+福音史家 | ||
51 | レチタティーヴォ(アルト) | *分担の変更でこの曲が唯一の第2オケのみの曲になった。 | |
52 | アリア(アルト) | 省略 | |
53a-c | 福音史家+二重合唱+福音史家 | ||
54 | コラール | 2節目は省略。 | |
55 | 福音史家 | ||
56 | レチタティーヴォ(バス) | 省略 | |
57 | アリア(バス) | 省略 | |
58a-e | 福音史家+二重合唱+福音史家+二重合唱+福音史家 | 一部省略 | |
59 | レチタティーヴォ(アルト) | オーボエ・ダ・カッチャをクラリネットで。 | |
60 | アリア(アルト)(合唱) | 省略 | |
61a-e | 福音史家、イエス+合唱+福音史家+合唱+福音史家 | ||
62 | コラール | アカペラで。 | |
63a-c | 福音史家+二重合唱ユニゾン+福音史家 | 地震の描写を弦楽器全員で。一部省略 | |
64 | レチタティーヴォ(バス) | ||
65 | アリア(バス) | オーボエ・ダ・カッチャをクラリネットで。中間部の前で終了。 | |
66a-c | 福音史家+二重合唱+福音史家、ピラト | ||
67 | レチタティーヴォ(バス/テノール/アルト/ソプラノ)(合唱) | ||
68 | 二重合唱 | 冒頭に回帰した時の器楽部分が無く、すぐに合唱が入る。 |
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