緋田シェフの“カンタータ料理日記”(2)  

カンタータ料理日記 第5回 1999年 10月5日〜8日 (BWV69a,77,119,50)

1999年 10月 5日(火) 《アリアばっかり録音したい》 人数:約10人

 ・松茸ご飯、鱧入り
材 料:松茸(予算の関係で中国産)
     鱧(骨切りしたもの、面倒なら照り焼きでも)
     だし、醤油(薄口、濃い口)、みりん、日本酒、すだち
作り方:米をとぎ、ざるに上げる。昆布、かつおでだしをとる。今回は鱧のアラがあったのでだしに加えて
     煮出す。松茸はぬれぶきんで汚れを落とし、刻む。
     炊飯器に洗った米を入れ、冷めただしを分量の水加減より少し少なく入れて、薄口醤油、みりん、
     塩、だしで味をみながら丁度の水加減にする。松茸を入れて炊き上げる。
     骨切りした鱧を照り焼きにする。たれは濃い口醤油とみりんを半々の割合で合わせ、火にかけて
     アルコールを飛ばし、冷めてから、すだちの絞り汁を入れたもの。
     炊き上がった松茸ご飯に鱧の照り焼きを一口大に切ったものをのせる。好みで鱧照り焼きのたれ
     を少したらす。はんぺんと三つ葉の吸物を添えた。
   
 ◇メ モ
 録音はソリスト、コンティヌオとオブリガート楽器から始まる。合唱で出演しているのだが、料理を作るのは当然のこととして期待されているのだ。秋の味覚といえば松茸。松茸ご飯は以前にもやったことがあるので、それでは能がない。松茸を使った料理として土瓶むしがあるが、これを松茸ご飯と合体させることを思いついた。土瓶むしには関西では通常、秋の脂の乗った鱧が入っている。これを照り焼きにし、土瓶むしでは食するときにすだちを絞るが、これをたれに合わせた。なかなかの自信作。トゥッティではこのような細かいことはできなくなるので、いつも最初から最後まで録音に関わる某コンティヌオ奏者は人数が増えるにつれ料理の質が変化してしまうのを嘆き、(不謹慎にも!?)「アリアばっかり録音したい」と洩らしてしまう。今回は珍しくオブリガート楽器として登場したトランペットの島田さんがこの特権!?を享受したのであった。

  

1999年 10月 6日(水) 《お弁当をご用意いたしました》 人数:約15人

 ・握りずし
材 料: 米、米酢、塩、砂糖、昆布
     魚(今回は秋刀魚、うぼぜ、グレ、ニベダイ、鮭の白子を使った)
     わさび、もみじおろし、生姜
作り方:すし飯を炊く。水加減は米と同量。合わせ酢は、酢:砂糖:塩を5:3:1の割合で合わせ、昆布を
     入れて火にかける。沸騰直前に火からおろす。炊き上がったご飯を飯台に移し、合わせ酢をかけ
     て、しゃもじで切るように混ぜる。うちわで扇ぎながら冷ます。
     秋刀魚、うぼぜ(イボダイのこと)は、三枚におろして塩を当て(秋刀魚は強めに)、酢でしめる。
     他の魚も三枚におろす。白子は酒蒸にする。ネタの大きさに切り分け、秋刀魚は生姜、うぼぜ
     はさっとすだちの絞り汁をくぐらせてからわさび、白子はポン酢・もみじおろしで、グレ、ニベダイ
     はわさびで握る。握り方は説明しにくいので省略するが、おにぎりのように固く握らないこと。
     お寿司屋さんで研究してみてください。
 
 ◇メ モ
 今日は音楽監督が芸大大学院の入試判定会議で、東京にかえらなければならないため、午後7時に終了する予定。こんな日ぐらい料理はお休みにしたいところだが、そんな雰囲気ではさらさらないので、あきらめて新幹線で帰る人のことも考えて、お弁当にできるものにする。市場にいくと新鮮なうぼぜがあったので、「美味しんぼ」にも載っていた徳島「青柳」の名物・「ぼうぜ(徳島弁)の握りずし」を思い出し、これにすることに決定。握りずしはダン・ラウリンのヘンデルの録音以来の酔狂である。(このことは、ダン自身がCDのライナーに書いてくれた。)録音が終わり、弁当にした寿司を音楽監督に持たせると、実弟より「甘やかし過ぎだ」との声がすぐに入る。音楽と食べ物に関しては、相変わらずこの兄弟はシビアだなーとあらためて感心してしまうのであった。

 

1999年 10月 8日(金) 《丹波に行きたし暇はなし》 人数:約40人

 ・牛タン塩焼きと麦とろご飯
材 料:牛タン薄切り、塩、胡椒、レモン汁、つくね芋、だし、薄口醤油、押麦、米
作り方:米の1割程度に押麦を混ぜて洗い、麦ご飯を炊く。つくね芋(無ければ長いもでもできるが、味は
     全然違う)は皮をむき、おろし金ですりおろす。すり鉢にとり、昆布、カツオのだし(冷めたもの)で
     延ばし、薄口醤油、塩で味をつける。牛タンは塩、胡椒をふり、網で焼く。 焼きあがったらさっと
     レモン汁をくぐらせる。 麦ご飯にとろろをかけて、牛タンを添えて出来上がり。
 
 ◇メ モ
 芸大大学院入試のため指揮者がいないので、前日は1日お休みである。天気は悪かったが、それぞれ遊びにいったようだ。秋といえば黒豆や松茸が有名で、日本3大田舎である兵庫県の丹波(他の2つを知っている方は教えてください。遠野もそうだったような気がします)に食材さがしの旅に出かけたいところだったが、すでにリハーサルのために続けて休みを取っているので、無理である。
 丹波のことばかり考えていると、以前行ったときに食べたとろろそばのとろろが異常に美味く、特産のつくね芋を買って帰ったことを思い出し、このメニューとなった。この日からトゥッティが始まり、買出し・調理ができないので、深畑くんと真美ちゃんに一任した。それにしても大量のつくね芋のすりおろしと牛タン160枚も焼いて大変だったでしょう。お疲れ様でした。

《後記》
 99年3月のマタイ、6月のカンタータ、10月のカンタータとフランス組曲、12月のヴェスプロとCDが既にリリースされているものもあるのに、料理日記の更新が大変遅れて申し訳ありません。BCJのメンバーには僕の料理が食べられないからガッカリ(!)されることも多いのですが、歌わせていただくことが多かったのと、もともと計画性がない上に、メニューは市場で素材の顔を見て決める、作ったもののことは忘れるという傾向に拍車がかかり、今となっては再現できないということになってしまっております。少し反省していますので、2月のカンタータはすぐにお届けできると思います。カンタータ全曲完成まで末永くお付き合いのほどを。
      店主敬白
(BCJ:緋田吉也様) (00/02/29)

カンタータ料理日記 第6回 2000年 11月9日〜10日 (BWV194)

2000年 11月9日(木) 《きのこづくし・日本は秋》 人数:約15人

 ・松茸と鱧のやかん蒸し
材 料:松茸(今回、市場でゲットしたのは、なんとモロッコ産)、ハモ(骨切りしたもの)、昆布、カツオ、
     薄口醤油、酒、味醂、すだち
作り方:昆布・カツオで出汁をとり、酒、薄口醤油、塩、味醂で味付ける。ハモは一口大の大きさに切り、
     松茸はふきんで汚れを落とし、根元の固い部分は、包丁でそぎおとす。包丁目を入れて裂く。
     煮立った出汁に、ハモと松茸を入れ、おわんに注ぎ、(土瓶蒸しの器があれば、それに入れて
     ください)すだちを絞って食べる。
 ・きのこご飯
材 料:きのこ(今回はまいたけ、しめじ、しいたけを使った)うすあげ、だし、味噌、菊菜
作り方:米を洗い、ざるに上げておく。きのこは適当な大きさに切る。あげは熱湯で油抜きをして、切る。
     昆布・カツオで出汁をとり、冷ましておく。米に普通に炊く分量よりやや少な目のだしを入れ
     (きのこから水分がでるので)、味噌を入れる。分量は味噌によって違うので、入れながら、味を
     みて加減する。味噌汁より、少し濃いかなと思うぐらい。きのこ、うすあげを入れて、炊飯器で炊く。
     仕上げに菊菜を刻んだものを振りかける。
 
 ◇メ モ
 メルボルンは春だったが、日本は秋だ。メルボルンの中華街の食品店では、秋刀魚が冷凍で売られていたが、ハモや松茸まではさすがにない。活きハモが手に入ったし、人数も少なめなので、秋の名残を味覚で満喫していただく。上品な土瓶蒸しにしては、出来上がりが大量なので、やかん蒸しと命名したが、実際にやかんに入れたわけでも、一人分がやかん一杯あったというわけでもありません。今回初参加のヨッヘン・クプファーは日本食OKで満足してくれたようでした。

 

2000年 11月10日(金) 《貝づくし・そろそろ寒くなってきました》 人数:約35人

 ・貝雑炊
材 料:貝(今回は牡蠣、ハマグリ、マテ貝を使った)卵、三葉、柚子、昆布、薄口醤油、酒、味醂、塩、ご飯
作り方:水に昆布を入れ、弱火でゆっくり温度を上げながら出汁をとる。牡蠣はボールに塩水を入れ、静かに
     ゆすいで汚れをとる。マテ貝、ハマグリは塩水に入れて、砂を吐かせる。牡蠣は酒蒸しにする。加熱
     しすぎないようにし、ざるに上げる、エキスの出た汁は、昆布出汁の中に入れる。ハマグリ、マテ貝も
     同様に酒蒸にして、汁は出しの中に入れる。マテ貝は殻を外して、身を食べやすい大きさに切る。
     貝のエキスの入った出汁を薄口醤油、塩、味醂で調味し、ご飯を入れ、とき卵でとじる。仕上げに、
     三葉と柚子の皮を入れる。カンタータ料理では、大量なのと、仕上がりの時間が計れないので、
     汁かけご飯のスタイルで召し上がっていただいた。
 
 ◇メ モ
 今日からトゥッティで、録音最終日。市場で、広島の牡蠣が大きくなってきているのを発見。メルボルンでは何回か生牡蠣を食べたが、年中牡蠣の食べられるオーストラリアと違い、日本ではやはり冬の味覚。暖かいものが恋しくなってきたので、牡蠣を中心にした貝づくしの雑炊に決定。前述のように汁かけご飯のスタイルにしたので各自で具の貝や薬味を入れてもらうことになった。一人分の貝の数を決めて音楽監督自らこれらの具の正面に座って「牡蠣2ヶ、ハマグリ1ヶ、マテ貝適宜」と言いながら監視役に。おかげで皆さん公平に食べられました。

カンタータ料理日記 番外 メルボルン編 2000年 10月29日

2000年 10月29日(日) 《誕生日おめでとう!秀美さん》

 ・鯛の塩釜焼き
材 料:鯛(オーストラリアではsnapperというのが、日本の真鯛に近いものです。大きさは1キロぐらいの
     もの)、塩(鯛の倍量、これが唯一の味付けになるのでおいしい塩を使いましょう)、卵白(塩1キロ
     に対して2ヶ分なので4ヶ)、バジル(和風にするならワカメ、中華風なら蓮の葉など)、オリーブ油
作り方:鯛はうろこを取り、内蔵、えらを除く。塩に卵白を入れて、混ぜる。オーブンを高温(230〜250度)に
     熱しておく。天板にオーブンシートを敷いて、卵白を入れて混ぜた塩の半分を鯛の大きさに伸ばす。
     鯛の両面にバジルの葉を貼り付け、天板に伸ばした塩の上に置く。残りの塩で上から隙間なく包む。
     魚の模様を描いたり、メッセージを書くのも楽しいでしょう。オーブン中段に入れ30〜40分焼く。
     表面が焦げそうなら、アルミ箔で覆う。出来たら、木槌のようなもので塩釜を叩き割り、オリーブ油を
     かけて食べる。(和風ならポン酢、中華風なら、酢醤油とゴマ油のたれなどがよいでしょう)
 
 ◇メ モ
 メルボルン・ツアーでは指揮者、ソリスト以外の宿泊は長期滞在型のアパートメントで、ベッドルーム、バスルームの他にリビングとダイニング・キッチンがある部屋でした。きれいなキッチンで、一通りの食器と、調理器具、オーブンと食器洗い器までありました。みんなが僕の顔を見るたびに「どんな料理をつくった?」と聞いてくれるのですが、なかなか買出しに行く暇もなく、調味料やらなにやら買い始めるとキリがなくなるし、外食しても安くておいしいし、もちろん料理をしにメルボルンに来たわけではないので、おとなしくしておりました。28日の練習に向かうバスの中で秀美さんが、明日は自分の誕生日なので、みんなを部屋にお招きしたいという申し出があり、L.P.B.C.J便りにあるような大パーティーとなったのでした。29日当日は日曜だったので、午前中は長老派の教会の礼拝に遅刻したものの参列し、その後、「ヴィクトリア・マーケット」という市場に目ぼしいものを探しに出かけました。前日に指揮者ご夫妻と食べたイタリアンレストランで鯛が出てきたので、これがあればと考えていたのですが、一軒しかあいていなかった魚屋に見つけること ができました。部屋に帰って文化包丁より切れないナイフで下ごしらえをして練習に出かけ、練習から帰るやいなや調理にとりかかったのでした。こんな大パーティーになると思わなかったので、あっと言う間になくなってしましました。秀美さんはちゃんと食べられたのでしょうか?
(BCJ:緋田吉也様) (00/11/12)

カンタータ料理日記 《マタイ、カンタータ、ヴェスプロ編》 1999年3月〜2000年2月

 かなり以前のこととなってしまいましたが、昨年度の今まで書いていなかった分をできるだけ再現してみようと思います。いつものようなスタイルは無理なので、主なメニューと今になっても印象に残っていることをコメントします。

《1999年 マタイ受難曲編》
コメント
 とにかくこの時は、総勢80名にもなる大所帯であったので、準備段階から鍋を大きいものに買い換えたり、電気釜を買い足したり大変でした。合唱メンバーでもあったので、料理は全面的にはできず、レシピを指示して、深畑君たちに作ってもらったり、神戸の合唱団の猪澤さん夫妻にお願いしたり、最終日には入澤真美ちゃんの友達の本職のコックさんにきてもらったりして、いろんな人のお世話になりました。

 ・3月22日(月) 豚汁
 ・3月23日(火) 中華丼
 ・3月24日(水) 炊き込みご飯
 ・3月25日(木) ハヤシライス

 ・3月26日(金) いかなご丼
 これは、神戸名物の「いかなご」を使った僕の創作です。イカナゴはキビナゴなんかの仲間だと思いますが、瀬戸内の春を告げる魚です。解禁のころは2センチぐらいですが、4月をすぎると5センチぐらいに成長します。普通は釜揚げ(塩茹で)を酢醤油で食べるか、釘煮といって佃煮にするかなのですが、白魚のようにみたてて丼にしてみました。昆布・鰹の出汁を醤油、酒、味醂、砂糖で少し甘めに味をつけ、そこにイカナゴの釜揚げ(塩茹)
をいれて、卵でとじて、エンドウ豆を散らして、それをご飯にかけるのです。大量だったので、佃煮用に売っている生のイカナゴを自家製で釜揚げにしました。
 ・3月27日(土) ニュウナン飯(牛バラ煮込かけご飯)
 これは中華料理。牛のバラ肉に八角を入れて煮こみ(3時間ぐらい)、醤油・砂糖・赤味噌・オイスターソース等で、味付けし、片栗でとろみをつけて、ご飯にかけ、茹でたチンゲン菜を添えます。

 ・3月28日(日) (名古屋公演のためなし)
 ・3月29日(月) (小人数のため、終了後居酒屋「ん」へ)
 ・3月30日(火) 猪澤夫妻による豚汁年代もののニンニク醤油のパスタなど。
 ・3月31日(水) 本職コックによるビーフシチュー



《1999年6月 カンタータ編》

 これも合唱で参加していましたので、料理に関する記憶があいまいです。料理しないわけにはいかないので、メニュー、レシピ、段取りなどを僕が指示して、深畑くんと入澤真美ちゃんが買出し・調理をし、最後に僕がチェックします。時には録音中に深畑くんが蒼い顔をして、チャペルに入ってきて相談に来るときもあります。食事の出来不出来は、録音の出来具合にもかかわる最重要!?問題なのです。
 ・6月1日(火) ヅケ丼鯛めし
 鯛めしは定番ともいえるメニュー。真鯛やチヌ鯛を使います。洗った米に水加減し、薄口醤油、味醂、塩で味付けし、昆布を敷き、その上に鯛をのせて、炊きます。

 ・6月2日(水) パスタ
 ・6月3日(木) おにぎりあさり汁
 ・6月4日(金) あなご丼

 ・6月5日(土) 棒々鶏丼冬瓜汁
 この日の録音と料理のことはNECのレポートでも紹介されています。鶏もも肉を茹でて、そのまま茹で汁のなかにつけて冷まします。キュウリは細切りに。タレは胡麻ペースト(芝麻醤)、ニンニク、しょうが、醤油、砂糖、豆板醤、酢、ごま油、茹で汁を合わせてつくります。



《1999年12月 モンテヴェルディ/ヴェスプロ編》

 う〜ん、この時は、松蔭宗教センターのもっとも大きな行事であるクリスマス礼拝とヴェスプロ録音がぶつかり、双方の間に挟まれて精根尽き果てました。演奏には参加していなかったので、料理をしたはずなのですが、記憶がほとんどありません。深畑君の確かな記録をたよりにしたかったのですが、これも断片的にしかわかりませんでした。前半は6声のミサ曲の録音で比較的小人数で録音。クリスマスの礼拝期間は機材を撤収し、終了後に、再セットを行い、ヴェスプロの録音となったのでした。
 今回はBCJ初録音のイタリアものだったので、歌手たちもいつもと違うイタリアン・モード。さらにテンションが高く、その歌声は閉め切ったチャペルを超えて、宗教センターにいても聞こえてくるほどでした。初参加のステファン・マクラウドも「君達はいつもこんなテンションで歌っているのか?」と感激しつつも、驚きあきれていたとか。
 ・12月12日(日) 鯨のハリハリ鍋
 関西(大阪)の冬の名物です。昆布・鰹の出汁を薄口醤油、酒、味醂で味付けし、鯨肉と水菜をさっと煮て食べます。鯨肉を食べたことのないヨーロッパの人達にも食べさせてしまいました。

 ・12月13日(月) たぶん牡蠣御飯ぶりかぶら
 ・12月14日(火) クラムチャウダー
 ・12月15日(水) クリスマス礼拝のため録音はなし。
 ・12月16日(木) ビーフシチュー
 ・12月17日(金) おにぎり
 ・12月18日(土) ?

 ・12月19日(日) 林屋のおでん
 林さんは言わずと知れた調律師界の大元締め。録音の調律をしてくださるときには、チョーリツシからチョーリシにも早変わり。いりこだしのおでんは定番メニューで、林さんの調律とおなじく勘所を押さえた絶品です。食べ方にも流儀があり、どんなに寒くても外で、鍋を囲みながら、冷酒でというのが、決まりごとです。(もちろんお酒は録音が終わってからですが。)たくさん作ってもあっという間になくなります。「しょうがねえな」と言いつつうれしそうな林さんです。

 また、この録音の前12月初旬に、若松夏美さんと小島芳子さんによるモーツァルトのヴァイオリン・ソナタの録音もありました。この時のメニュー「緋田シェフのモーツァルト・プラン」は、音楽監督も知らない最高の内容ですので、公表できません。ひとつだけ教えちゃうと「明石蛸ふんだんの至高の蛸飯」は、夏美さんが食べてる最中に東京にいる明石蛸が大好物な秀美さんに電話をして、「あ〜秀美〜今なに食べてると思う?」「そんなのわかるか!」「たこめしよ〜」ガチャ!という意地悪なことをしてしまったというエピソードをご紹介するのにとどめましょう。



《2000年2月 カンタータ編》

 演奏に参加しておりましたので、前半のソロを中心にした録音の時は料理人、後半のトゥッティの録音は前述のようなスタイルでやっています。今回気分を変えて、一駅となりの「大安亭市場」に買出しに行きました。より庶民的で、韓国色が強いので、すっかりそれに感化されてしまいました。
 ・2月22日(火) チゲ鍋カニご飯
 一見バラバラの献立のように見えますが、チゲ鍋は歌う人や辛いものがだめな人もいるので、キムチ、コチジャンは各自で入れることにしましたので、ベースはいりこだしとチキンスープで醤油味、タラと大根ほかのお野菜の入ったお鍋といったところです。カニは文字通り大安売りでしたので、茹でて身をほぐし、鰹だしとカニの茹汁で炊いたご飯に混ぜました。
 ・2月23日(水) あなごご飯
 あなごが安かったので、蒲焼にしてご飯にのせました。タレは醤油、酒、味醂、砂糖を煮詰めますが、穴子の頭を入れるのがポイントです。
 ・2月24日(木) 参鶏湯湯(サムゲタン)
 今回の料理のクライマックスはこれです。寒いので、身体があたたまって、元気になって、胃には優しくて、今回のテーマはコリアンとくれば参鶏湯しかありません。前日から丸鶏を予約し、漢方薬局で朝鮮人参、ナツメ、クコの実を買って初挑戦しました。レシピ・作り方はインターネットで検索し、「オモニの家」http://www.melon.net/omoni というホームページを発見。作り方はこちらをご参照いただければと思います。
 大変好評で、材料さえ揃えば作り方は簡単だし、自宅で再現されたメンバーも多いと聞きます。ヴィオラのY.Mさんは「参鶏湯のスープの中につかりたい???」と目をうっとり。大鍋に飛び込みそうだったのを止めたとか止めなかったとか。
 これを食べた後の録音はカンタータ109番の第6曲目のコラール。朝鮮人参の入った参鶏湯パワー炸裂!!!疾風怒濤の演奏で、ものすごいテイクだったと思います。CDの出来上がりが楽しみです。朝鮮人参のパワーはそれでもおさまらず、録音後の松蔭会館(演奏者の宿舎)もエンドレス!!!
 ・2月25日(金) 粕汁菜の花飯
 粕汁は以前作り方を書いたので省略します。録音が予定より早く終わってしまったので、食べずに帰ってしまった人も多く、翌日、一晩寝かしておいしくなったものを、演奏会後の後援会の親睦会でファンの皆様にも食べていただくことができました。

 

後記 ああ、なんだか肩の荷がおりました。まだブランデンブルク2000年9月のカンタータが残っておりますが、近いうちにお届できるのではないかと思います。録音は3月までありませんが、番外編「淡路島〜香川=はも&うどん旅行1999」、「クリスマス恒例クエ鍋大会」なども予定しております。お楽しみに。
 
(BCJ:緋田吉也様) (00/11/19) (00/12/30UP)

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