10日の佐倉公演でも素晴らしい充実ぶりを聴かせてくださった
BCJの「ロ短調」2000。今回の公演の特徴の一つが
合唱の配置にあるのではないかと思います。弧を描くように
一列で並んだ合唱陣は左から
S I (3人)、A I (2人)、T
I (2人)、B I (2人)、B II (2人)、T II
(2人)、A II (3人)、S II (3人)
でした。テノールとバスは最後の方の「ホザンナ」以外は分かれるところは無いのですが、最初の「キリエ」から最後の「ドナ・ノビス・パーチャム」まで
全曲通してこの配置で歌われました。他の演奏では、はじめはパートごとにかたまった配置で、アルトも二手に分かれる「サンクトゥス」の前で配置の入れ替えをすることが多かった(ガーディナー、ヘレヴェッヘ等)ので、今回の配置で全曲を通して演奏されることの
ねらいを、佐倉公演の終演後
鈴木雅明さんにお伺いしてみました。
「まずこの配置のメリットはアルトが二つになる「サンクトゥス」や二重合唱の「ホザンナ」への
移行がスムーズである点ですが、
ソプラノが両翼にくることが大きな意味を持ちます。ソプラノの
I と II が並んでいるとどうしても
II が沈んでしまう。それを
避けたかったのです。こうしたことで
ステレオ効果も楽しんでいただけたのではないでしょうか。また、同じパートを歌うメンバーが左右に離れてしまうことは困難な面もありますが、
一人一人がより積極的に音楽に参加するようになる効果もあると思ったのです。」とのことでした。
なるほど、はじめの「キリエ」の最初の2小節のそれぞれ後半にあるS I 、II
の8分音符の動きなど、非常に
拡がりのある響きになっていました。「マタイ」「ヨハネ」をも上回る
対位法の奥義を尽くしたこの偉大なる作品の再現にあたって、
掛け合いの妙が浮かび上がってくることは大きな喜びです。残るサントリー公演とつくば公演で、是非この醍醐味を味わってみてください! もちろんショル、テュルク、コーイをはじめとした
ソリストの妙技や
器楽陣の大活躍もお楽しみに! (矢口記)