blanc 10 for lovers 02 「少しでも思い出してくれた?」日付は5月4日。 時刻は23時55分。 ほんの数日前まで、退学勧告だMVP戦だと毎日ばたばたしていたから、仕方のないことなのだけど、でも。 思い出す間もなく慌しく、はたまた思い出してはそわそわと落ち着かず過ごしているうちに、前日のこんな時間になってしまった。 もっとずっと早い時期ならともかく、こんな直前になってしまったら。 「実は明日が誕生日なんだ」 なんて云いだすのも難しい。 「だってそんなの・・・なんかお祝いして欲しいって云ってるみたいじゃん・・・」 ためいき混じりに呟いて、啓太は抱えた枕に顔を埋めてころんとベッドの上を転がった。 カチカチと止まることなく刻まれていく時計の秒針をぽんやりと眺める。 和希はまだ仕事中かな? 七条さん、部屋にいるのかな? |