あなたは会場へ戻り、少しキョロキョロして目標人物を見つけました。
そしてエプロンのポケットから薫さんの部屋の電話の子機を取り出し、その人物に近付いていきました。
「お話中失礼します。お電話が…」
「あぁ、ありがとう。すいませんが、失礼します」
「ええ」
あなたは他のお客さまと歓談中の巽お兄さまを会場の隅へ促し、子機を差し出しながら言いました。
「すいません。電話じゃないんです。実は、薫お嬢様が先ほどから具合が悪くなられまして、しばらくお部屋でお休みになりたいそうなので、巽さまにお客様のお相手を頼むとお伝えするよう言われまして…」
「薫がっ!?発作かっ?」
「い、いえ、ちょっとご気分がすぐれないと…」
「分かった。ありがとう」
血相変えた巽さんは、持っていた子機をあなたに押し付けるようにして、会場から足早に出ていかれました。
あなたはそれを見送りながら
(ごちそうさまです…(T_T))
と独り言ちて、大きなため息をつきました。つまり禁断の逢瀬の手引きをさせられたってことで…。
そしてしばし落ち込んだあと、あなたは気を取り直して