Harmonica virtuoso |
この録音時にしてすでに、相当芸風がこなれており、かつ声に風格があることから、この録音時に若年であったとは思いがたい。同時期にハモニカを使った録音を残しているDADDY STOVEPIPE(1867年生まれ)やJOHN HENRY HOWARD(生没年不詳)のソングスター世代と同世代、あるいは、楽器の奏法から見て、1まわり下ぐらいではないかと推測する。
なお、彼によって残された1924年の録音群は、"FISHER'S HORNPIPE"一曲を除いてその全てがハモニカを2ndポジション(クロスハープ)で演奏しており、このポジションを使った録音としては最初期のサンプルということになる。
ハモニカは、低い音域の方が豊かで太い音を出し易い。これらの演奏をじっくり聴いていると、ニュアンスの豊かなハモニカの低音が極端に好きな吹き手がいて、こいつをいかに使い易くするか、色々と工夫したら2ndポジションが見つかった、なんていうストーリーが妄想たくましく想像されてしまう。2ndポジション特有の音階がフレーズに取り込まれていくのはむしろその後のことだったのかもしれないと、ふと思ったりもする。
たとえば、"LONESOME JOHN"(1924年)、のメロディ(譜面参照)を考えてみると、このメロディ、当然1stポジションでも吹けるわけで、むしろ、この時期のソングスターならば、そちらを選ぶのが普通。ところが彼の場合、よっぽどハモニカの低音が好きだったようで、結局ここでも2ndポジションで吹いてしまった。さらに、"わらの中の七面鳥(TURKEY IN THE STRAW)"なんていうダンスチューンまで2ndポジションでこなしているのはこだわり以外のなにものでもない。SAMUEL JONESその人が2ndポジションハープの元祖であったというわけではないが、彼のような嗜好の持ち主が、この奏法の発展に大きく関与したんだろうと思わせるのに充分な吹きぶりである。
初吹き込みの後、1927年にDAVID CROCKETTとともに、さらに1930年にはKING DAVID'S JUG BANDのフロントマンとして録音を行っているが、こちらでは、ハモニカを吹いておらず(一曲クレジットはあるがおそらく別人が吹いている。)、聴きどころは、ストーブパイプの方にうつっていく。
生年、出身地ともに不詳。ワンマンバンドスタイルの先駆者の一人で、1924年8月にギター、ハモニカそしてストーヴパイプを使ったソロ吹き込みを数曲残した。レパートリーは幅広く、ダンス曲、ブルーズ(残念ながらタイトルのみで音源がみつかっていない。)、スピリチュアルまで持ち唄の引き出しに収めている。
LONESOME JOHN
by Stvepipe No.1 ,New York city 20/Aug/1924
note:
this song is originally played in "F#"(harp "B").
"↑"=blow,"↓"draw
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