How to make a wash-tub bass

ウォッシュタブベースの作り方

washtub bass
Take-chang is playing his wash-tub bass

はじめに

・ウォッシュタブベース(Wash-tub bass)とは、金ダライを共鳴材に、棒をネックに使った1弦の弦楽器。戦前の娯楽音楽(jugband, mountainmusic, hokum etc)では、結構使われていた楽器なのだ。おぢさん世代には、CCR"Willy and the Poor Boys"のジャケ写なんていう懐かしい例が一番わかりやすかったりして。

・簡単に作れるし、見た目は楽しいし、ちゃんとまともな音程も出るし、と3拍子揃ったこのタライ。欠点は力が少々必要なことくらいかな。でも、それもエクササイズだと思えば苦にならないはず。是非、一つ作って、ボンボン鳴らしてみよう!!

 

・まず参考にしていただきたいのは、なんといっても、"Washtub Bass - The Jug Band Cookbook - The Corner Jug Store"。我々も、このページの情報を実践するところから始めました。

・更に世界のウォッシュタブベース最先端を垣間見たいという方に、"the Electric Washtub Bass"をご紹介します。

 

・どんな音が出るのか想像ができないという向きには、先人たちの録音を探してみることをお薦めする。1930年代後半から42年頃までがタライの黄金時代。それまでのジャグ(ビンにブーブー言う声を響かせてベース代わりにするモノ)に替わってタライがひろまったのがちょうどこの頃。が、そこは代用楽器の悲しさ。はっきりタライだとクレジットされたモノが少ないうえ、録音技術の限界を超えて低い音域が災いして、「バウ〜ン」と響くタライ特有の音色を捉えている録音はさらに少ない。それやこれやで、意外なことにこれぞタライという作品はなかなか貴重なのだ。

 

・そんな中、タライの一級のサンプルとして推薦できるのは、1940年〜1942年頃のブルーバードレーベルのセッションに頻繁に顔を出すAlfred Elkinsの演奏。Jazz GillumSonny Boy Williamson #1といった一流どころのブルーズマンからLewis Bronzeville fiveなんていうマイナーなジャイブユニットまで、幅広くバックを付けているから探してみるとよいかもしれない。

 

・もちろんCDを探す以外に、我々も気が向けばライブでタライを使うから、そこで生音を聴いていただくっていう手もあるけどね。(要リクエスト)

 

1 材料いろいろ

・まずはタライを調達しなくちゃ始まらない。ところが、調べてみると意外と素材にバリエイションがあるんだな。Mobile Strugglersの皆さんの場合。木製の大ダライを使用。(右図)これを日本で探すのはちょっと骨だ。しかも、プレイヤーのゴツイこと。軟弱な我々はさすがに少々気後れしましたね。

・一方、South Memphis Jug Bandにも参加したWill Batts(写真右から二人め)を囲むツワモノどもは、オイル(ラード?)缶を使っているようだ。しかし、これは、よ〜く中を洗って、油を焼いておかないと相当臭うぞ。きっと。

・ない知恵を絞った結果、近所の金物屋で手に入る素材が一番、ということになり、我が国では一般的な、アルミのタライを購入した我々。しかし、世の中そう簡単にはいかないのね。これは強度不足で変形してしまい大失敗。試行錯誤の結果、結局、アメリカ製のブリキの金ダライ(円筒形石油缶、大きな金バケツでも可。ただしブリキ製に限る。直径30cm以上。我々は45cmのものを東急ハンズで購入)にたどり着くことに。

・さてそのほか、ネック用の木製の棒(170cm程度。伝統的に箒の柄がよいとされている。材質は問わない。我々はラワン材を使用。竹は縦に裂けやすいので薦めない。)と弦になる木綿の紐(200cm、洗濯ロープ)を揃えたら組み立ては簡単。まずは、伝統的な作り方から…。

2 基本型

・さて、調達した材料を目の前に並べてみよう。
まず、鈍い輝きも雄々しく鎮座する金ダライ、静かに横たわる木の棒、所在なさげに絡まる木綿の紐、辺りには、楽器づくりというより、家事労働的雰囲気が漂っているはずだ。

・組立に入る前に、とりあえず材料を本来の用途に使ってみるというのもよいかもしれない。特にタライは底に穴をあけちゃうから、洗濯するもよし、赤ん坊を行水させるのもよし、一度くらいは、水を満々と満たしてあげたい気がする。

・さて、材料に未練がなくなったらいよいよ工作。
まずは、伝統的な作り方、次に改良の方法を順次ご紹介していこうと思っているので、最初から最良の結果を得たいというせっかちな人は、最後まで読んでから工具を手にした方が良いだろう。(念のため。)

  1. 棒の一端にドリルで5mmの穴をあける。反対側の底に1cm程度の深さに、V字型の切れ込みを作る。(左図参照)
  2. タライの中央にドリルで5mm程度の穴をあける。
  3. 木綿の紐をタライの穴に通し、結び目を作る。反対側は棒の穴に通しこちらも結び目を作る。
  4. タライをふせ、棒をタライ縁に立てる。この時、棒の底の切れ込みをタライの縁にあてて固定するのがミソ。

 

3 演奏法

・あっという間に完成してしまった。早速、試奏してみよう。まず、タライを伏せて、底の縁に棒を立て、垂直よりも少々内側に倒したところで紐がピンと張るように結び目を調節する。

・左手で棒の上から1/3程度のところをしっかりと支え、左足は地面に置いてタライがずれないように押さえる。右足は棒の立っている反対側の縁をかかとでしっかりと踏みつける。フォームが決まって、一つ深呼吸したら、右手で紐を弾いてみよう。紐をはじくというよりも、指に引っかける感じ。ベース弾きの方ならば、スラップをやる要領といえばお分かりか。

・音程は、主に、左手で棒を引っ張って角度を調整し、紐のテンションを変化させることで変えていく。大体オクターブからオクターブ半くらいが実用的な音域。

・音量は相当に大きい。家で鳴らす前には、ご近所に一言ことわりたい。ちなみにわれわれブギウギでは、ウオッシュタブベース、ウオッシュボード、声が生音だとするとマンドリン、ギター、ハモニカは少々アンプを通したくなるくらいのバランスになっている。

 

4 基本型の弱点と改良

・とりあえず基本形はできあがった。でも、こいつを抱えて往来に立つのはちょっと待っただ。しばらくすると棒が切れ込みから割け始めるだろう。また、タライの底の穴には想像以上の力がかかるから。下手をすると、結び目が穴から飛び出してくる。これも恐怖だ。伝統は貴ぶとしても、耐久性に難があるのはいただけない。

・そこで、ちょっとだけ補強をしてみよう。まずは、棒が割けるのを防ぐため、切れ込みの上辺りを針金でぐるぐるまいておこう。これだけでも多少の足しにはなるはずだ。次には、タライの穴に通した紐。この先をワッシャーに通してから結び目を作ることでかなり頑丈になるだろう。

・とりあえずこれで、一晩のステージくらいは大丈夫。それでもやっぱり、寿命は長くない。特に、紐が穴の縁に擦れて簡単に切れてしまうのは痛い。やっぱりもう少し改良しなきゃ…

・なお、先に述べたように、入手が容易なアルミ製のタライはお勧めしない。アルミは強度に欠け、タライの底が盛り上がって大変恐ろしい。音も響かないし、そもそも底の縁が盛り上がっていないので、棒が止まらない。

アルミ製金ダライの末路 (写真ではわかりにくいが...)アルミ製の金ダライを使った試作品の末路。
穴が広がり、周囲が盛り上がっている。穴の周囲には無数のひび割れが生じている。

an aluminum wash-tub (usually used in Japan) is not suitable for wash-tub bass.

 

5 ブギウギ型ウォッシュタブベースの作り方(改良型)

・試行錯誤の結果、結局我々がたどりついたのは...。今のところ元気に鳴っているこの方法。

boogie woogie's tub

・用意するのは、ブリキの金ダライ(直径45cm、東急ハンズで2,200円だった。)、棒(25mm径×180cm、ラワン材。近所のホームセンターにて200円で購入。)、木綿のロープ(4mm径×200cm)、アイボルト1個、ナットとワッシャー、水道工事に使うクランプ一式。

・タライの底の穴にアイボルトを通し、大きなワッシャーをかませてからナットで固定する。

・金ダライの側面、口から5cmほどのところにクランプを止める穴をあける。

・クランプをボルト、ナットで取り付ける。

・棒の穴に紐を通して結ぶ。紐の反対側はアイボルトに通して同じく結ぶ。

・棒をクランプに挟んで固定する。(完成!!)


アイボルト クランプ

6 小物色々

・タライをふせたとき、棒の反対側(奏者の向かい側)の縁が少し持ち上がっていた方が音が大きくなる。このために使われるのがタブリフター(tub-lifter)。ブギウギでは風呂のゴムの栓に切れ込みを入れて使用している。

・木綿の紐を力任せに弾くので、素人がやると右手の指がぼろぼろになる。(ちなみに私はなった。)そこで、革の軍手を着用することをお勧めする。もともとウッドベースを弾いている方ならば不要だと、われわれのベース弾きは述べているが....

 

washboard kazoo

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