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このページに記載されている主な内容
・耐火煉瓦の代表格、シャモット(粘土質)レンガについて
・耐火煉瓦の番手(耐火度による分類)について
・耐火煉瓦の素顔
シャモット(粘土質)レンガは、各種ある耐火煉瓦の中で、最もポピュラーで使用
される範囲が広いレンガです。昨今ではホームセンターでも見かけるようになりましたが
その扱いは、商品知識の不足からか、ぞんざいな扱いを受けているケースもあるようです。
JIS規格のない、無印のレンガが全て悪いわけではありませんが、ヒビが入ったような
耐火煉瓦が、平気で売られていたりします。そんなレンガが目的の機能を果たすとは
到底思えません。耐火モルタルに至っては尚、深刻で、どんな素性のものかさえ解らない
ものが売られています。こうしたものが、業界全体のイメージを落とすのが心配です。
シャモット(粘土質)レンガでの注意事項
赤レンガと違って、耐火煉瓦は原則、水濡れ厳禁です。濡れてしまった場合は、
充分な乾燥が必要です。装飾で使うならまだしも、耐火煉瓦=火を使う場所な訳ですから
極端に言えば、水蒸気爆発の危険性さえあります。また冬期では、霜等の原因により
ひび割れる可能性もあります。装飾で使われる場合もありますが、こうした可能性を全く
否定できるものではない事を理解しておいてください。(レンガは水を吸うからです)
加工は、他のページでも紹介をしますが、ノミで割る他に、ダイヤモンドカッター刃で切断が
出来ます。ただ、市販の電動カッターでは刃が小さいので、少々難しいでしょう。業務用の
少し大きめの刃がついたカッターで、切断をします。細かな加工はサンダー・グラインダー
で行えます。強引な方法では、鋸でも切れない事はありません(笑)刃がスグにダメに
なりますが。レンガを積む時は、専用の耐火モルタル、もしくは耐火性のある素材(アルミナ
セメント)を使用します。尚、装飾的な使用方法で使う場合は、普通のポルトランドセメント
でも構わないのですが、困るのが目地切れでしょう。本来の耐火の目的以外で積む場合は
水を使うなとは言いません。が元々、赤レンガより水気には弱いレンガだとは覚えておいて
下さい。また、水分を使わずに、セメントのノリをよくする方法があります。興味のある方は
メールを下さい(笑)
左官屋さん、一般の土木現場で使われる「モルタル」の語義と、 私たちの業界で使われる語義が違います。 一般的な語義 モルタル=砂とセメントと水を加えて練った、施工前のミックス状態 それに砂利が入れば「コンクリート」 築炉業界での語義 モルタル=耐火煉瓦専用の粘土状の物質、粉状のものと、練った状態の もの(ウエット)がある。特性的にも、温度がかかって焼結する 一般タイプ(ヒートセット)と空気に触れる事で固化するタイプ (エアセット)がある。エアセットは一般市場ではあまり見ない。 この語義を勘違いされて、施工して、目地が固まらない等のトラブルを抱えて相談される ケースがままあります。わからない事があれば、メールで問い合わせてください。 |
耐火煉瓦の番手について
粘土質(シャモット)レンガの化学的成分はSiO2(ケイ酸)とAl2O3(アルミナ)、それに
若干のFe2O3(酸化鉄)により成り立っています。この成分の内、アルミナの成分が増すこと
によって、レンガの耐火度は増し、弱酸性から中性の性質を示して、各条件に対して安定した
性質を示すようになります。じゃあ、皆、アルミナを増やせばいいじゃん!と思われるかも知れ
ませんが、アルミナの原料は高価で、上質なものは海外からの輸入に頼っています。当然、
アルミナのコンテントを高めれば、製品単価も上昇します。1ページのレンガの規格と種類で
最初に質問した、同じように見えるレンガの価格の違いは、まさにこれです。
予算に余裕があれば、全て高アルミナ質なレンガを使えばいいのでしょうが、現実的な選択は、
使うべきところには、使うというTPOが必要となります。バーナーの焦点温度がかかるような
場所は、設定温度、想定温度に合致した、高アルミナ質のレンガが必要です。炉全体の温度が
1200度までだから、全てSK34程度のレンガでいい!と言い切れる場合とそうでない場合が
あります。焚口の温度が、それ以上になる場合です。このような場合は燃焼帯と、それ以外の
部分を違う番手のレンガで施工します。炎の焦点温度(理論火炎温度)は思ってるより高い場合
があります。また、バーナーの種類によって、炎(フレーム)の形状が違いますが、これによって
焦点が違ったりするのを、無視した設計もタマに見受けられますが、炉材を痛める原因ですね。
耐火煉瓦は、こうした成分の違い等で、耐火度を分類し、「番手」という識別で呼んでいます。
記号で言いますと、SK26・28・30・32・34・36・38・40と呼んでいます。SK30番以下は
明確な基準が少なくなるため、製品管理が不透明な分、信頼度にバラツキがあると思います。
規格に裏づけされた安定した製品を求めるのであれば、SK32以上をお勧めしたいところです。
(一般市場の無印レンガは、SK30以下の可能性大です)ちなみに当社は工事業者ですので、
工事の信頼という点からSK32以上しか在庫を持ちません。いざとなれば、成分分析表を始め、
必要なデータも提出出来る範囲だからです。
耐火度を使用条件に当てはめて、選択していくのは、プロの仕事の1つですが、実験室のデータ
的な結果で言いますと、SK32でも1300度程度の温度まで適応出来る事になります。同じ
データから言えばSK34では1450、SK38では1600度となります。ただ、実際の炉でただちに
このデータが全面的に生きる訳ではなく、それに現場での使用条件が重なってきます。
実験炉データは極めて安定した負荷のない条件での結果です。同じ環境下の炉の方が少ない
筈ですので、安定した結果を望むためには、マージン(余裕)を持たせるのが好ましいと考えます。
火をつけたり消したりすれば、炉材は膨張収縮を繰り返します。燃焼時にはガスも発生します。
当社での基本的な考えは、条件ギリギリの炉材を選択するのではなく、少々コスト的に割高に
なっても、その分、持ちが長い炉材を選択して、長期間という時間で割ったコスト低減の方法を
まずは提案します。(予算が限られれば別ですが)耐火度ばかりが、一般には強調されますが、
実はもう1つの性質、高番手になると、化学的作用に対しても安定してくるという点に着目して
います。炉内には、炉材を侵食するガスやダストがあるからです。実際に、ゴミ焼却炉において
実際の想定温度では必要のないところに高アルミナのレンガを効果的に配して、クリンカーの
付着を少なくさせるという効果を実証しています。
どのあたりが一般的なのか
SK34までの通常の粘土質耐火煉瓦、それ以上を高アルミナ質耐火煉瓦と分けて呼ぶのが
一般的です。見た目では判断出来ません。レンガは一種の「焼き物」ですので、焼色が着く
場合もあるので、ロットや工場が違うと同じ番手でも違う色をしている時があります。SK○○
と社名の刻印が頼りです。当社でポピュラーなのはSK34でしょうか。値段的にも急激に高く
なる手前です。尚、番手は偶数だけでなく、例えば注文すればSK33とか、SK35も作れます。
実際には、番手1つでは性能差に然程差がないため、偶数の番手で注文する場合が多いです。
余談(耐火煉瓦の素顔)
今までの話は、調べる気になれば文献でも調べる事が出来ますが、例えばこんな製品の性質を
利用して商品の仕入れを行う場合も時々あります。例えば産地。当社の近くの産地といえば
「瀬戸物」で有名な瀬戸、「美濃焼」で有名な東濃地方がありますが、なんといってもこの地方が
有名になったのは、優れた焼き物の「土」があったからです。一方、同じレンガの産地として
やはり有名なのが、岡山ですが、この産地による違いが若干あったりします。カタログ=JIS規格
ではその規格をクリアーした製品をその名称で呼ぶわけですが、規格の数値をどれだけ上回って
いるか、それ以外の性質がどうかまでは関係ありません。つまり同じメーカーの同じ製品であっても、
規格をクリアーしているという条件が同じだけで製品の性格には若干の違いがあったりします。
それを築炉の職人は「硬い」「やわらかい」「しまっている」「あまい」等の俗称で呼んだりします。
面白い実話がありますが、1つの現場に2社から同じSK34番のレンガが納入されたのですが、
職人が面白がって「赤のレンガくれ!」ここには「白いやつ!」って言いながらレンガを積んでいた
事があります。赤と呼ばれたレンガはいかにも「焼き締まった」感じのレンガ、白と呼ばれたレンガ
は、まるで「生焼け」のような色合いだったのです。使用条件にもよりますが、条件によっては、この
2つのSK34番は、異なる性格を見せていたと思います。どちらがいいかという話ではありません。
そのわけは窯の設計の時にお話しましょう。窯の条件にあった炉材を探して見るというのも、
我々のノウハウの内なのです。
こんな比較は、常に現場に接しているからこその話ですが、価格のみで製品を選択する場合の
危険性は、少しお分かり頂けたのではないかと思います。レンガの素性を知る事は大切だと思います。
少なくとも、産地もメーカー(刻印)もないレンガは、相応の用途ならまだしも、構造物の一部
としてお使いになる場合は慎重ならざるをえません。そうした信頼の部分が付加価値として価格に
乗ったとしても、メーカーの刻印は、そうした信頼と
安心をユーザーに与えてくれるものと考えます。