W 診察

 1診というのは一番奥で、この1診が初診の人、2診、3診が予約の人ということでした。
 部屋に入ると、なんかとっても明るい感じで、期待を裏切られた感じでした。もっと暗い感じのところをイメージしていたものですから。
 とってもきしゃな女の先生でした。事情は紹介状にあるようなので、「ここなんです」と髪の毛をあげて見せました。

 花「1ヵ月くらい前から徐々に大きくなってきたように思います」
 D「1ヵ月くらい前ですか?」
 花「はぁ? よくわからないです。1ヵ月前には確かにあったように思いますが、いつできたものかよくわかりません。この場所は、わたしよく吹き出物ができるので、最初はそれだと思っていたので、あまり気にしてなかったんです。でもそれがいつなのかは、わからないです」

 という押し問答がしばらく続きました。
 ドクターとしては、このデキモノがいつできて、どれくらいで今の状態になったのかを知りたいようなのですが、わたしにはそれが、いつのことなのか、ほとんど記憶にないので、わからないということがなかなか伝わりませんでした。
 たとえば、蚊にかまれてぷちっとなにかできたら、それっていつできたのか言える人っているのかなぁ。2〜3日前のことならまだしも、何ヶ月か前のことなんか覚えているわけがないんです、普通。たまらないくらい痛い思いをしたとか、プチッとできた日になにか特別なことがあったりとかそういう場合は別として、生死にもかかわないこんなデキモノがいつ出来て、どれくらいで大きくなったかなんて、わたしのように行動を毎日のように発信して日記を書いているような人間でも、そんなこと特定できないのです。
 だからわたしは、このデキモノができて1ヵ月経っていることは確信できるけど、それ以上のことは、確信がもてないのです。だからよくわからないとしか言いようがないのに、とにかくドクターは「いつできたのか」を聞き出そうと、何度も「いつですか」とその後も何度も尋ねられました。

 写真を2枚撮って、測ってもらうと(7ミリ、6ミリ)の大きさでした。
 とりますか?といわれたので、その後は、そのための話しになりました。
 図を書いてもらいながら、できているものをとって、上と下の皮膚をひっつけるので、傷は残りますとはっきりといわれました。傷あとをとるか、「ぷちっとできたもの」をとるかで、傷跡をとることにして同意しました。傷って7ミリより少し大きくなるくらいなので、それくらいなんとも思いませんでした。
 わたしのひだりの額には、髪の毛で隠れているけれども、4センチくらいの傷がすでにありました。小学校2年のとき、塀に激突したときにできた傷があったので、あまり今回、傷跡が残るということについては気になりませんでしたが、ドクターは、結構、それを強調されたように思いました。まぁ、そういうことをわたしはたまたま気にしない人だっただけだからかもしれません。何を気にするかは、その人によって基準が違いますから。
 手術は、水曜日の午後で、4月23日か5月7日かと言われたので、7日にお願いしたら、翌日と1週間後に通院が必要なことを言われました。翌日は消毒に、翌週は抜糸だそうです。14日がどうしてもダメで、何時くらいに病院を出ることができるか等、いろいろ聞いていると、通院の日には予定を入れないほうがいいようなので、結局もう少し先の5月21日手術、22日消毒、28日抜糸という予約を入れることができました。仕事にはほとんど影響のない日程でしたが、水曜日ということで、B社の仕事をまた休むことになってしまい、それは気になったけれど、水曜日しか手術できないので、これは仕方ありません。すでに落ちているスキルをどうもとのレベルに戻していくか、それを思うと憂鬱になりました。
 手術のための血液検査と出血の止まり具合をみる検査に言って、また皮膚科へ戻っていくように言われ、検査へ行きました。

 地図はちゃんともらっているのに、血液検査の場所がよくわからず、まっすぐにはいけませんでした。病院内にも指示はあるんでしょうけど、それを見落とすのか、とにかくわかりにくかったです。地図のイメージと病院内のイメージが違うのか、理由はよくわかりませんが、行き過ぎては戻りして、まず採血室へ行きました。
 採血する人は3人くらい。待っている人が5人くらいだったので、すぐに順番がきました。
 ずっと前に献血するのに、その前の検査のときに血管が出てなくて採血できないということがあって以来、とっても恐いのですが、健康診断のときなどわりとすんなりと採血できているので、あまりそのことでの恐怖はありませんでした。だって、その3人の人って、1日に何人もの人の採血をしている人たちだから、慣れたもんでしょう、と信じることにしました。
 すぐに名前を呼ばれて、本人確認にために生年月日を言って採血です。「3本とります」と言われたけど、よくわからず、とにかく左手を出して横を向いて見ないようにしていいました。「チクっと痛いですよ」とお決まりのことを言われ、その通りチクっと痛くて、しばらく痛かったけど、そんなに大騒ぎするほどではなかったので、静かにしていました。(痛かったところで、叫ぶわけにいきませんが。)
 そのあと心電図室へ行って、血の止まり易さの検査をしました。
 ここは2人しか待っていなかったので、すぐでした。
 先に検査をしているおじさんの隣に座りました。イス(ふつうのパイプイス)に座って、右耳を出して、「少し痛いですよ」と言われました。見えないので、よくわかりませんが、どうやら耳たぶを切って、血を出して、それがどれくらいの時間で固まるのかを測っているようでした。ストップウォッチで時間を測って、耳を見るのは目視のようでした。結構、原始的な検査方法のような気がしたんですけど、実際のところどうなのかわかりません。
 腕から血を出し、耳から血を出しと、いたって健康なわたしでも、検査室をさがして移動して検査を受けるというのは、精神的に疲れるものでした。

 そしてもう1度、皮膚科に戻って、手術についての説明をうけて同意書にサインするということが残っていました。
 皮膚科で検査が終わったことを告げると、「お待ちください」とのこと。また、「待ち」のはじまりです。
 
 それにしても病院にはいろいろな人がいます。
 総合案内にいた人、受付業務をしている人など、この人たちは病院の職員なのかそれとも今どきの派遣の方たちなのか。とにかく若いおねーさんばかりでした。
 そして診療科では、看護師さんらしき人が受付業務をしていました。
 そしてドクターについてる看護師さん。
 それから緑色のエプロンをつけた病院のボランティアさん。場所がわからず困っている人を案内されていました。それと、ヘルパーさんらしき人も何名か見ました。
 患者さんは、圧倒的に高齢者が多かったです。当たり前とは思いますが。
 ということは、病院を利用するのが高齢者だとすれば、もう少し高齢者にやさしくないと、これじゃあもたないように思いました。でも、この国立病院は何年かかかって建て替えをしているので、施設としては新しいシステムをとっているはずですから、ベストなのかもしれません。
 でも、わたし自信ないなぁ。ほんとうにもっと弱って、この病院にきたら、どうなっているんやろう。
 そんなことを考えていたら、整形外科の受付のところで、看護師さんと患者さんが、「いいあい」をしているような雰囲気でした。言い合いというより、看護師さんが一方的に患者さんに何かを言っているのですが、患者さんは、かなり高齢の方で、口で言っただけではとても理解できないような雰囲気でした。もちろん、それを紙に書いたところでダメだし、家族の人がいなければ、その人が理解するしかないのですが、高齢者を普通の目線でみて、一生懸命というより、高圧的なものの言い方で説明してもダメだと思うんだけどなぁ。
 とにかくいろんな意味で、ここの整形外科は、要注意だと思いました。

 そんなことを考えながら、名前を呼ばれるのをひたすら待っていました。

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