さて、手術です。

前日(5月20日)

 明日のことは、ちゃんと確認してと、もう1度、説明書や予約時間などをみておきました。あらためて何かに気づくということもなく、何を着ていけばいいのかなぁ、髪の毛はしばらく洗えないのかなぁ、術後はどの程度、目立つのかなぁなどと、考えていました。
 心配ごとといえば、麻酔くらいです。結構、気分悪くなったりするので、それが出たらいやだなと思っていました。これも気分が悪くなってみないとわからないことなので、心配しても仕方ないですけど。
 とまぁ、なんとなく前日のブルーな夜を過ごしていました。

当日(5月21日)

 朝は普通に起きて、のんびりと過ごしていました。13時15分に出ればいいので、十分すぎるくらい時間がありました。もう1度説明書を出してきて、確認しました。とくに、食事は普通にとってもいいことになっていたのですが、もしかして間違ってたらいけないからと、もう1度、確認しました。
 朝に髪の毛を洗っておこうかどうか迷ったけど、昨日の夜に洗っているので、あえて洗うこともないかと、そんなふうに何しようかなと考えつつ、雑用をしていました。昼食に冷凍のキツネうどんを食べたら、すごく暑くて、ちょっと汗をかき気味だったのが、ちょっと後悔です。できるだけ汗を抑えようと努力していたのに、キツネうどんで汗かいてしまうとは、不覚でした。

 まず13時半に皮膚科の外来に行って、今日の説明をうけます。こういうものは5分前にいくものなのか、定時にいくものなのかと、病院の常識を考えながら、着いたのがだいたい3分前でした。別に定時でなくてもよさそうだったので、外来の看護師さんに診察券を出して、そのあと説明を受けました。でも、説明をうけたといっても、昨日から何度も読んでいる「諸注意」をもう1度、読んだだけでした。まぁそうやって「読んだつもり」を防止して確認することが大切なんでしょうが、なんか説明が30分あると思って行ったのに、2分くらいで終わってしまって、肩すかしをくらったような気がしました。
 手術室には15分前に行ってくださいということだったので、15分間、皮膚科の外来のところで待つことにしました。MDをもって行っていたので、川口大輔さんの曲を聴きながら、ぼーっと座っていました。20分前にトイレに行って6階の手術室へ向いました。(6階にはトイレがないから、2階で済まして手術室へ行くようにという指示でしたが、実際には6階にもトイレはありました。)
 院内の地図を見ながら(院内は結構、複雑)、6階に向って、説明されたとおりに手術室前の電話をとって「11」を押したけれども、一向に反応がありません。反応がなくてもつながっていて、勝手にこっちがしゃべるのかなと思って「皮膚科からきました○○です」と言ったけれども、まったく反応なし。そういうことを5回繰り返して、まったく反応がないので、不安になってきたので、もう1度、説明書をみて自分がやっていることに間違いがないかどうか確認しました。そしてもう1度、電話をとって「11」を押すと、やっと反応してもらいました。
 「皮膚科からきました○○です」
 「○○さんですね。トイレ済ますなどして、お待ちください」
 あのさ、トイレは2階で済ますようにと念押しされたから、そうしてきたのに、またここでも言われて、さっきの電話に反応してもらえないこともあったから、むっときました。念押ししてもらうことに不満をもってはいけないけど、でも、6階にトイレがないって聞いたのに、ちゃんとあるやんと、そんなどうでもいいことを、ブツブツと思っていました。
 手術室の横には4人が座れるイスがありました。すでに2人座っていて、横に座れるかなと思ってみたら、バッグが置いてあったので、横で立っていました。「バッグのけてください」と言ってもよかったけど、なんかそうまでして座りたくもなかったので、まあええかという感じで。わたしは元気やし、すぐに手術室へ行くであろうから、座る必要性はなかったけど、でも、そうやって周りに人の気配がしたら、小さなバックをのけてイスをあけるくらいの配慮がなんでできないのかなと、ここでもムカっときていました。わたしはこういう空気の読めない人が大嫌いです。でも、わたしもいつ逆の立場になっているかわからないので、自戒をこめてそう感じています。
 5分ほどしたら、手術室の看護師さんが部屋の入り口のところで、「○○さーん」と呼ばれたので、行ってみると「2時からの予定でしたが、前の手術が今、始まったところなので、お待ちいただくことになります」ということでした。それは説明書にちゃんと書いてあったので、何も思いませんでした。でも、立って待っているのは、いややなぁと思ったら、ちょうどバッグをのけてくれていたので、その横に座れてよかったです。
 元気なんやから、待つくらいなんでもないわと思いつつ、手術の時間変更のための連絡先といって、携帯番号まで申告しているけど、この程度の「待ち」は、変更のうちに入らないんやろうなと、ヒマなんでそんなこと考えていました。MDを聴きながら、あまり何も考えないようにして過ごしてきました。

 しばらくしたら、手術室からドクターと看護師さんが3人くらい、保育器に入った赤ちゃんを押して出てきました。わたしの横の男の人は、この赤ちゃんを待っていたのでした。
 「2ヵ月早いですから小さいですけど、こうやって酸素のなかに入っていると、こうやって顔色もいいでしょう。おねえちゃんのほうが小さかったんですよ」と言われ、保育器のなかにお父さんが手をいれて、赤ちゃんを触らせてもらっていました。1500グラムのほんと生まれたばかりの新生児をみてしまいました。ほんとに小さくて、片手でもてそうなくらいでした。でも、手足を動かして、必死で生きようとしている様子が、なんとも言えませんでした。

 もうしばらくしたら、エレベーターでからこれから手術室に入るという男性の患者さんが看護師さんにベッドを押されてこられました。同じエレベーターには、その子どもと孫と思われる人が4人くらい、そして男性の奥さんが手術室のドア(透明の自動ドア)越しに見えなくなるまで、見入っていました。
 生まれたばかりの赤ちゃんをみて、そしてこれから手術という男性をみて、わたしはその場で不覚にも涙がでてきて、困りました。傍目からみたら、自分の手術が恐くて涙を流しているみたいですが、今生まれきた生命も、そして年配の男性も生きるために手術(治療)をするのかと思うと、生命の重みみたいなのを感じてしまったのか、自分の肉親の死を思い出したのか、自分で自分の気持ちがわからないけど、でも、涙が止まりませんでした。もし今、手術室から呼ばれたらどうしようかと思いました。
 
 そして今度は、さきほどの双子ちゃんの妹が同じように保育器で運ばれてきました。さっきのおねえちゃんのほうが小さいけれども、状態は妹さんのほうが、あまりよくないようでした。先ほどは、かなりゆっくりそこでお父さんと対面していたけれども、今度は足早やにエレベーターのほうに行ってしまいました。遠めからみただけですが、さっきのお姉ちゃんのほうが元気そうにみえました。
 もうこの双子ちゃんと会うことはないだろうけど、でも、2人とも元気に育ってほしいなーと、願っていました。手術を待たされたおかげで、とっても小さな生命に出会うことができました。

 ようやく涙もおさまって、そんなまわりのバタバタでMDを聴くのもやめて、ぼーっと何もせずに待っていました。するとやっとさっき、読んでくださった看護師さんが呼びにきてくださいました。「トイレは大丈夫ですか」と言われたのですが、これがちょっと困りました。もうさっきトイレに行った時間からは小1時間経っているので、内心、大丈夫かな?と思っていました。普通にしていたら、平気だけで、もし凄い痛くて履物を替えて、まず本人確認です。「○○○○ 生年月日は○○○」と言って確認です。患者の取り違えということも起こってしまうのが病院だから、確認のうえに確認をということなんでしょう。
 説明書ではそのあと着替えて、手術室に入るということでした。
 歩きながら、看護師さんが「わたし担当の○○です」と言われました。ひとりの看護師さんがお世話をしてくださるみたいです。
 さて、着替えなんですが、今は工事中とかで(そういえば工事関係者の人がやたらと出入りしていました)、臨時の更衣場所でした。丁度、大部屋の病室の一角をカーテンで仕切るような感じでした。ズボンははいたままでよくて、上は汗をかくと思うので、ぬいでくださいということでした。さっさと着替えて、ロッカーに荷物と服を入れて、そこの場所でぼーっと待っていました。今日は待ちが多いです。そのときの気持ちは、びっくりするくらい落ち着いていました。というかあまり何も考えていなかったので、次は何をしなければならないのかなと思うくらいでした。

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