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宝塚星組公演
『エリザベート』
宝塚大劇場

 2・3日目の感想
(1)

 

  初日に続けて9日(土)10日(日)と5連チャンオホホ(^^;)で観劇してきての感想です。

 初日に書いた感想通り、「初日は固くなっていた。」というのをしっかり確認して参りました。それくらい、舞台にぐっと余裕が出てきていました。という
訳ですので、私の初日のRは皆様もう忘れてください。

☆ 星組『エリザベート』・・・作品として ☆
 脚本・演出は(雪組版と)同じ・・・確かに同じです。でも作品は全く別の物に仕上がっていると思います。
 何故なら出演者とその役の捉え方が違うからです。
 小池先生も各種の雑誌インタビューで「基本的に演出は変更しない。出演者が違えばおのずと違ってくるものだ。」と答えられていますが、その通りだったと思います。
 まず、スタークラスの持ち味が全く違いますから、どこに魅力を感じさせるかの力点が違います。ウィーンにはウィーンの、雪組には雪組の魅力があるのでしょう。そして星組には星組の魅力があるのです。

 組全体として私が好きなのは「分かり易い。」ということでしょうか。星組の場合今まで特に「歌」に力点を置いてきていない・・・と言うことが幸いして、歌い方が素直な方が多いと思います。ということはコーラスも美しいということになります。それゆえに歌詞が聞き取りやすいということが一つ。更に役の掘り下げがしっかり出来ているのでその世界に入り込み易いというのがあると思います。

 そして「美しい」
 とにかく美形の揃っている組にプラスして星組は「揃える」ということが得意な組なので、プロローグにしろ、黒天使にしろ、フィナーレの男役の群舞にしろ、とにかく整然とした美しさがあります。
 よく言われる星組のチームワークの良さがここに現れています。コスチューム物には慣れた組ですので、軍服にしろ、ドレスにしろ身のこなしが美しい。このような作品ではこれが大きな強みになっていると思います。

 出演者について
☆ トート 麻路さき ☆
 トートという人間ではない役。これをどう演じてくれるのか、楽しみでもあり不安がないと言えば嘘、という気持ちで迎えた初日でしたが、心配は無用で初日からその解釈の深さに驚きました。そこにいるのはまさしく闇の帝王 死=トートです。
 立っているだけで感じるその存在感、鋭いかと思えば妖しく光る目、そして何よりも妖しい空気を醸し出すその手。まずはそのトートらしさに強く惹かれます。
 また、衣装が素晴らしく、よく似合っていてファンとしては衣装の先生にお礼を言わせていただきたいです。最初から最後まで素敵なお衣装の連続です。私は1幕の鏡の間での茶色の軍服姿が一番のお気に入りです。

 「愛と死のロンド」というくらいですから、この宝塚版「エリザベート」の主題は「人間を愛してしまった死神と、死神を最後に受け入れた人間」の愛の物語だと思いますが、マリコさん(麻路)のトートはまさしくそこに力点を置いています。
 シシィ(白城あやか)が木から落ちて黄泉の国に来たとき、トートは自分の役目通り「死のキス」をしにいくのですが、「私を帰して」と懇願するシシィ
に愛が芽生えます。そのときから、いつかシシィが自ら死を望むことを願ってどこまでも追い続ける事を誓うのです。
 ですから、たびたびシシィの前に姿を現すと、誘惑の仕方は非常に妖しく情熱的なのですが、シシィの目に触れない場所ではせつない表情になります。何度振られても、あきらめることなく、シシィを誘惑し続けるトート。その誘惑の仕方のなんて強引なこと。シシィが体操をしていて倒れたときに医師に化けて現れますが、「死ねばいい!」と誘うトートに「はい、死にます。」と叫ぶ女多数。
(マリコファンだけでなく、どうやら宝塚初見らしい方がそう感想をおっしゃっているのを聞きました。(*^^*))
 かと思えば少年時代のルドルフ(月影瞳)の前に現れたときにルドルフを見つめる優しげだけども実はたくらんでいる目、ミルクがないと叫ぶ民衆達を袖で見ながらたくらむ姿、それらは死神そのもので冷たく妖しく強いのです。

 また、死のキスがすごい。少女時代のシシィにも、葬儀の場面でのシシィにも死のキスをしに行こうとしますが、ここは雪組バージョンではなかったはず。(東宝ではあったのならすみません。東宝は私は観ていませんので。)
 「闇が広がる」の銀橋上でしに行くキスのときはルドルフ(絵麻緒ゆう)が思わず応じかけるので危ない危ない。ドキドキすること請け合いです。

 また、このトートは多少お行儀が悪いのです。シシィの寝室の机の上に腰掛け、シシィとフランツ(稔幸)が登場する1幕最後の場面では銀橋上で横たわりながら見ているし、ルドルフ少年の友達として現れたときは階段に腰掛け足を投げ出す、ゾフィーの取り巻きの足を引っかける、ルドルフの棺の上に横たわり、シシィが「あげるわ、命を」と言うのを聞くと飛び降りる。これらがトートの危なさに拍車をかけてドキドキしてしまいます。
 手の使い方と言えば、やたらと人を手で操ります。シシィの寝室で、戴冠式で、ルドルフ少年を、青年ルドルフを。これらはいかにもマリコさんらしく、演出なのか御本人の感性なのかは分かりませんが、マリコさんの魅力を生かしていると思います。
 このような随所で見られる細かい解釈が見る人をエリザベートの世界に入り込ませるのだと思います。
 これからご覧になっていただける方には是非麻路トートの、死神らしさ、シシィへの愛の深さに注目していただきたいと思います。

 百聞は一見にしかず。是非とも劇場に足を運び、ご自分の「目」で確かめていただきたいと思います。

☆ エリザベート 白城あやか ☆
 初日の緊張が嘘のように、2日目以降のびのびと演じていると思います。
 少女時代のお転婆さ、そして時が経るにつれて出てくる落ち着き。特に声色を替えていないのですが、時の変化を感じます。圧巻は病院でのヴィンディッシュ嬢(陵あきの)とのやりとり。シシィがヴィンディッシュ嬢の顔を抱えて唄う姿には、虚しさ・哀しみが詰まっていて泣かされます。
 1幕の寝室でフランツに最後通告を突きつけた後、現れたトートに誘われて最後は「出ていって」となりますが、ここですでにシシィはトートに惹かれはじめています。途中も何度かトートに誘われて、心が揺れ初めているのが分かるので、ルキーニに刺される時にはっきりと自らナイフに身を投げ出すのがよく分かります。また、その後で二人で唄った後、シシィがトートにすごい力で抱きつきます。この時のトートは、シシィが自らナイフに身を投げ出すのを見て、尚かつ愛していると聞いたのにもかかわらず、信じられないといった表情になった後、力強く抱きしめます。そして死のキスをとうとう交わし、昇天していくときの二人の幸せそうなこと。千秋楽にはここは涙なくしては見れないだろうなぁ〜と思いながら見るだけで今から泣けてきます。
 まさに「大輪の花」です。

☆ フランツ・ヨーゼフ 稔幸 ☆
 渡瀬さん・Action!の1部以来の待望の2枚目役。ノルさん(稔)の2枚目役が好きなので、見ていて嬉しいです。特に若い頃のちょっとくちゃっと
なった立てた前髪の時が好きです。バートイシュルでシシィに見とれていてゾフィーに睨まれて、首をすくめながらゾフィーとルードヴィカに椅子を勧
めるところの仕草がすごく気に入っているので毎回楽しみにしています。
 レマン湖畔の散歩道ではノルさんの優しさがにじんでいて、夜のボートのせつない歌詞がよく伝わってきます。年もうまく取っていると思います。
最終尋問のところでは、マリコさんとノルさんの声が重なってしまって、歌詞が聞き取りにくいので、二人で間合いを測ってがんばって欲しいところ
です。二人の男の愛の深さ・激しさは出ていると思います。

   
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