宝塚星組公演
『エリザベート』
宝塚大劇場
15日〜19日目の感想 2幕
(2)
★第6場 安らぎのない年月
シシィが歩き回ってみんながそれを見ている場面。ルドルフ少年(月影瞳)は銀橋を渡るシシィを見つけて嬉しそうになりますが、去って行かれてがっかりし、最後は怒って後ろの壁に消えます。怒る仕草がだんだん少年らしくなってきたし、壁に消えるときの歩き方も、当初の女らしさが消えてきたなぁ〜と思います。
フランツは2回登場しますが、2回目には白髪が増えてでてくるんですよね。
銀橋を渡りながら唄い、渡りきったところには地下新聞を手にしたルドルフ(絵麻緒ゆう)が登場し、あわてて地下新聞を隠します。フランツの無言の要求でおずおずと新聞を手渡し、それを見てフランツが怒ります。ここらへんの演技はお2人共、無言ですけど、しっかり分かるしそつがないと思います。
★第7場 ウィーン郊外のある総合病院
ヴィンディッシュ嬢の素晴らしさはみなさんが書かれている通りです。あっこちゃん(陵あきの)久々の当たり役ですね。ヴィンディッシュ嬢の凄さがその後のシシィの歌の悲哀を強めていると思います。ヴィンディッシュ嬢を医者が押さえているのを扇でス〜ッと下がらせるところの威厳が凄くいいと思います。そして、その後ヴィンディッシュ嬢の顔に頬を寄せて「あなたの方が自由〜」というあたりは周りからすすり泣きが漏れてきます。
もう一つ、特筆したいのはヴィンディッシュ嬢と一緒に出来たもう一人の患者(おそらく水原まどかだと思います。)ヴィンディッシュ嬢に気を取られていると気が付かないのですが、彼女の演技もその場を壊さず、更に雰囲気を盛り上げていますので観てあげてください。
★第8場 ラビリンス
トートのマリコさんとルドルフのブンちゃんのデュエットは声質が似ているのか、しっくりしていると思います。ブンちゃんパッションブルーの頃よりも一段とお歌が上手になられましたね。
ブンちゃんは神経が細い風に見えるので、今回のルドルフはぴったりだと思います。ただ、マリコさんの存在感が大きすぎてルドルフがものすごく若く見える。
壊れそうなところがいいので、それは仕方がないのかとは思いますが。
本舞台でトートがルドルフを後ろから抱きすくめると、ブンちゃんはすっぽりはまってしまって本当に身動き取れそうにありません。トートが離すとあわてて逃げる。もうひとつ同じようなところがあって、銀橋に出てきてトートに抱きすくめられ、トートが死のキスをしかける?ところ、ルドルフが雰囲気にのまれて応じかけ、はっとしてあわててルドルフが逃げるんですよね。あそこが好き〜★
★第9場 ハンガリー独立運動
「ハンガリー国王!」とルドルフが叫んだ直後や、仲間が逮捕されているときなどに、トートがルドルフを掴んで振り回すんですけど、それはそれはもう、凄い振り回し方で・・・ルドルフは本当にトートに翻弄されっぱなしです。
後半トートを黒天使が担いで周りを市民が固めるところ、サンケイスポーツ紙では初日の記事にここの写真を使っていましたけど、ほんと迫力があります。
トートがみんなの上に手をかざすでしょう?煽っているのがよく分かります。
他にもトートはあらゆる場所で、人々を扇動しているのがよく分かるし、ルキーニはそんなトートを嬉しそうに見ています。
市民に囲まれているトートの前でルドルフは踊らされているという感じです。
★第10場 王宮の控えの間
ようやく帰ってきたシシィは、ルドルフの訴えを優しく聞いています。ところが自分の嫌いな政治の話だったので、軽い気持ちで逃げてしまったという風に見えます。この解釈が私はすごく好きです。シシィとしては決してルドルフを突き放したつもりはなかったけれども、事態の重さが分かっていなかったがために、大切な息子を失ってしまう事になり、この後の大きな悲しみにつながります。
ルドルフは必死で訴えるんだけれども、シシィに「自分で解決出来る。」と言われると、それ以上強く言えなくなってしまう。ルドルフの繊細な性格がよく出ていて好きな場面です。
★第11場 鏡の間
トートがルドルフに「死にたいのか。」と言うところ、いよいよ死神の役目を果たすときがきたわけで、トートがすがってきたルドルフを払いのけ、足で蹴ったりなんかして、ここらへんサディスティックでドキドキもんです。
トートはマントから銃を取り出してルドルフに渡すと、ルドルフが自分の頭に向けるように助けてすっと手を離しますよね。トートはルドルフにも死を自分で選ばせたんだなぁ〜と思いました。ブンちゃんルドルフは幸せそうに死んでいくのが好きです。そう、ルドルフは死んで安らぎを求めたんですもんね。
キスをさせたら天下一品のマリコトート様ですので、キスシーンは完璧です。
セリ下がった後、マリコさんは次の場面の出で忙しいからブンちゃんを置いていくけど、ブンちゃんは奈落でしばらくボーっとしているに違いない!と私達の間では評判になっています。
(ブンちゃんのお茶会報告によれば、ひたすら息が苦しいみたいです。普通セリ下がりの時ってその場でしゃがんで早く下がるように見せたりしますけど、今回は最後までしっかり見えているんで苦しさがいかばかりかと思います。・・・・でも替わって欲しいです。>ブンちゃん)
★第12場 葬 儀
棺の上に座り「この棺は俺のもの〜」ってなトート。「あなたねぇ〜息子を奪ったのは〜。」と責められても「だからどうした。」とでも言いたげな動じないトートの表情がグーです。で、「あげるわ〜命を〜」と言われるとはっとして起きあがり、飛び降りる。(注:飛び降りるのがポイント高いと思います。忘れて普通に降りたりしないで欲しい。)トートは最高に嬉しそうにシシィを抱きしめて、死のキスもしかかるんですけど、そこではじめて突き放しますよね。
ここでのトートの喜びと悲しみのギャップが激しければ激しいほど、その後の銀橋での「愛と死の輪舞」が生きてくると思うのです。
★第13場A ウィーンの街角
ルキーニはどうして総スパンの燕尾服を着ているんでしょうか?なんか場違いな気がして、これは雪組版のときにも気になっていたんですが、、、。
マグカップはもちろんノル皇帝とあやか皇后の写真入りです。男の子が、飴を渡してマグカップを受け取るところ、初日付近と少し動きが変わっている様に思いますけど、意味は分かりません。
★第13場B ジュネーブ・レマン湖の散歩道
フランツがエリザベートを訪ねてきて二人のデュエットとなります。この歌の歌詞はすごくせつないですね。フランツはシシィと共に生きていきたいのだけれども、シシィにはそれはもはや考えられない。ここらへん、原因はマデレーネだけではなく、本当は2幕の年月の間に他にもいろいろとあったんだと想像しています。フランツがシシィに近寄って、シシィがすっと逃れていくところがしみじみとしていいなぁ〜と思いながら観ています。
★第14場 ハプスブルグ家の霊廟
最終答弁。タイミングの問題でだったのか、初日付近は聞き取りにくかったトートとフランツの歌の歌詞がかなり聞き取りやすくなっています。迫力がだんだん増してきて、近頃では「愛を拒絶されるのを恐れている。」とフランツに言われたトートの「違う!」の叫びが「ちが〜〜うっ!!」という絶叫になってきてドキッとします。ノルさん(稔)も、すごい迫力で、スポットが当たった時から、トートと皇帝の2人ぼ対決の構図が出来ています。
バックで踊る霊魂達の中ではルドルフのブンちゃんの動きが好きです。手・足・頭が人一倍カックンカックンしてるんです。
ルキーニがトートより短剣を受け取るとき、トートの方をじっと見ます。
トートが一瞬目を合わせたか合わせないくらいでもルキーニが「分かりました。
」って顔をするのが、かえってトートとルキーニの密接な関係が分かってグーです。それにルキーニ嬉しそうですもん。トート閣下の仕事をこなすのが、、、。
★第15場 エピローグ レマン湖畔の散歩道
シシィがルキーニに刺される際の、身の投げだし方がとても毅然としていて、いいと思います。それを見たからこそ、トートはシシィの愛を確信したんですものね。そしてデュエットで愛を確かめあったとき、正面を向いたまま「つれていって」と言われたトート、シシィが駆け寄ってきて抱きつかれたときのトート、その表情から、どんどん幸せ感が高まってくるのが分かります。昇天するときに「行こう!」と誘うトートの目が凄く好きです。そしてとうとう本当の死のキスを・・・・。二人ともお互いの気持ちを確かめあって、幸せいっぱいで終わるんです。
この場面は、歌といいお二人の表情といい、最高です。
19日の11時公演では、シシィに抱きつかれたトートの左目から涙が一滴流れ落ちました。それを見たシシィもうるうる状態で、その後の昇天もとても自然な表情で今まで見た中では最高の昇天シーンでした。
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