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麻路さきサヨナラショー

宝塚大劇場
1998.8.2 15時
1998.8.3 13時

 前楽・大楽共にその場に立ち会えた幸運に感謝しつつ、記憶を思い起こしながら様子を書き記してみたいと思います。

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 前楽では本公演が終わるとハッチさん(夏美よう)が出ていらして、準備の間をつないで下さいました。
 いろいろ楽しいお話の中で特に印象深いのは、”男部屋”の話。なんでもこの公演中、ハッチさんとジュンコさん(英真なおき)・ミッキさん(千秋慎)・マリコさん(麻路さき)の4人で4人部屋に入っていて、その部屋の事は通称”男部屋”と呼ばれているのだそうです。
 「それでは」っと始まったサヨナラショーでしたが、一度伴奏が始まってから中断。もう一度ハッチさんが出てこられてまたもう少し話しをつなぐ…なんて事もありました。

 大楽では、退団同期となるみんつちゃん(万理沙ひとみ)・ワコさん(鷺草かおる)さんからの手紙をまず読み上げ、それからサヨナラショーとなりました。それぞれの手紙を読み上げるのは組長のハッチさん、それぞれの写真パネルをその横でジュンコさんが持っています。星組ではおなじみの光景となりました。これがそのまま退団者の紹介になります。

 そうして始まった『麻路さきサヨナラショー』はDSの拡大版のような、非常に見応えのあるものでした。

1.『国境のない地図』より プロローグのピアノコンチェルト演奏

  幕が開くと、舞台中央にグランドピアノ、その上には「S ASAJI」 のマリコさんのサインをかたどった電飾が輝いています。
  下手から歩み出たマリコさんは白いブラウス・白いベストに白いパンツ姿。ブラウスの襟元には白いリボンをブローチでとめています。ヘルマンとは少し感じが違っていて、新鮮に思えました。
  国境のときと同じく、ピアノの椅子に座ると指揮者の方を向いてうなずき、 指揮者のタクトが振られて演奏が始まります。
  ピアノを弾いているマリコさんはどのようなお気持ちでいらしたのでしょう。その眼差しは静かに澄んでいて、どこまでも見通せるようなそんな感じがしました。
  途中、間奏の部分で手を止めると、上手袖に目をやったり、上手客席に目をやったりされましたが、感情の起伏のようなものは感じられず、常に落ち着いた空気が流れていました。

2.主題歌メドレー

  ピアノ演奏が終わると暗転の中、ピアノの脇に置いてあった白燕尾の上着を着てそのまま「風になりたい」へ。銀橋に出てきます。思いのたけをぶつけな がら歌う姿から、ベルリンの壁の前で緑のコートに身を包み、嘆くヘルマンの姿を思い出しました。
  次に聞こえてきたのは「うたかたの恋」もう一度聞けるとは思っていなかったので感激もひとしおです。私にとっても絶対に忘れることのない、マリコさんとの出会いの曲なのです。マリーの声(羽純るい)が聞こえたときに、マリコさんは一瞬立ち止まり、耳を澄ませ、マリーと知ると喜びに震えます。そこには正にルドルフがいました。
  次は「愛のフェニックス」マリコさんが「ベルサイユのばら」と信じて初めて観劇した宝塚歌劇は、実は「風と共に去りぬ」だった…というのは知られた話です。いつかはスカーレットになってバトラーと寄り添いたい…という夢は、バトラー役として寄り添われる形で実現しました。マリコさんの初宝塚観劇作品、そして雪組特出、宝塚を代表する作品への出演…思い出深い作品です。
  最後は「まことの愛」 おそらくマリコさんが退団を決意したのはこの作品の最中だと思います。理想の男役を究めるという目標のもと、がんばってきたマリコさんが退団を決意したのはこのラッチマンがあったからだと思うのです。

  震災の中での復興第一作がトップお披露目、2番手時代に異例の1ヶ月半の代役主演、自分の宝塚初観劇の作品へのバトラーでの特出、春日野先生が愛し た作品の再演の成功。このメドレーを聞きながら、私の頭の中にはいろいろなマリコさんの「その時」が思い出されました。

3.『誠の群像』より 

 1.誠の群像  

  ミッキさんが黒いタキシード姿で上手袖から登場。堂々と誠の群像の主題歌を歌います。場内からは手拍子も沸き起こり、ミッキさんも嬉しそうでした。

 2.鬼   

  バックに般若こそはありませんが、衣装も振付もそのままに「鬼」のダンスが再現されます。マリコさんは小袖を被って登場し、ということは東宝版でしょう。
  お化粧が日本物メイクではないので、お目目パッチリという感じで少し優しげに見えはしましたが、表情や醸し出す雰囲気は当時そのままの「鬼」でした。最後は「俺は鬼と呼ばれて本望なのだ…」という土方の声で終わりました。

 3.あじさい幻想

  上手からミンツちゃんが登場。ワンフレーズ歌うと、今度は下手からワコさんが登場。かけあいながら歌います。2人とも白いロングドレスで、中でもワコさんは国境のない地図のフィナーレであやちゃん(白城あやか)が着ていたあのドレスをお召しでした。

4.『エリザベート』より 最後のダンス

 「エリザベーーート!」という声が流れ、カーテンが開くと一面スモークが焚かれていました。盆がゆっくり回りながらセリあがってきたマリコさんは黒いタキシードに黒の帽子、正面に回ってくると帽子をとり胸の前にあてながら「最後のダンス」のワンフレーズを歌います。

5.『ジュビレーション!』より トリプルステップス

  そのまま後ろに下がると帽子を被ってポーズ。耳になじんだあのイントロが聞こえてきて、『ジュビレーション!』のトリプルステップスが始まります。帽子のラインと胸ポケットのチーフは当時そのままに紫で、あやちゃんこそ 優里ちゃんに変わっていますが、その他には何も変わりがないように思えました。途中のウインクは入る場所が少し違った気がしますが…とにかくありました。せっかくだから優里ちゃんのいるトリプルステップスもしっかり見たかったけど、なにせ2回きりの公演なものでマリコさん以外に目をやる余裕がなくってそれが残念です。最後銀橋をマリコさんと優里ちゃんが2人で渡ると上手端でのキメのポーズではマリコさんと一緒に優里ちゃんもウインクを決めてくれました。

6.『2人だけが悪』より 虚しさから始めよう

  2人は立ち上がって見つめ合うと、悲しそうにすれ違いながらマリコさんは帽子を優里ちゃんに託します。そのまま上手から銀橋を渡りながら「虚しさから始めよう」を歌います。8月の東宝公演で、声が出ないアクシデントを星組みんなに支えられながら乗り越えたあの歌です。
  大楽ではこの歌の時に一斉にペンライトが灯されました。マリコさんは感無量といった表情で、上手から中央に歩きながら一度舞台の方を向いてしまいました。前楽ではそういう振りはなかったのです。おそらく涙をこらえてらしたのだと思います。後のパーティーで「あのペンライトにはやられた。本当に綺麗ですよ。」というような事をおっしゃっていました。

7.『国境のない地図』より 歓喜の歌〜フィナーレ

 1.歓喜の歌 (合唱)

  公演当時、美々杏里・真織由季と歌い継がれて始まった「歓喜の歌」をまず上手よりミンツちゃん、下手よりミッキさんが出てきて歌い継ぎ、そのまま星組による大合唱に発展します。優里ちゃんが紫のスパンで真ん中にたつと、その両側を上手に黒燕尾の男役、下手に紫のドレスの娘役が立っていました。その顔ぶれは4年前とはすこし違いますが、星組カラーには違いはありません。このみんなでこの4年間、本当にいろんな事を乗り越えていらしたんだなぁ〜と思うと、涙が出てきました。
 
 2.トッカータとフーガ (フィナーレの群舞の再現)
 
  「ありがとうみなさん、この時を共に生きたことを、一生忘れません」 というマリコさんの声がして、幕が開くと、縦に2列で並ぶ男役のてっぺん にマリコさんの姿が。一筋の光に照らされてマリコさんがゆっくりと降りてくると、2列の男役が少しずつ横に動き、逆三角になります。その中心に立つマリコさん。シンプルな黒燕尾の胸には赤い薔薇が飾られています。
  三角の頂点にはブンちゃん(絵麻緒ゆう)とヒロコちゃん(久城彬)が。この辺に年月を感じてしまいました。
  組替えもあったり、退団者もいたりして、必ずしも同じ顔ぶれとは言えないのかもしれませんが、やはり星組の黒燕尾の群舞は健在で、その手先まで揃ったシルエットの美しさに4年前の感動が蘇りました。
  舞台に降りてきてからの男役の総踊りに胸躍らせていると、曲調が可愛らしくなり娘役に囲まれたマリコさんに笑顔が戻ります。後ろに並んだ娘役さんの中には胸に白い花を飾ったワコさんとミンツの姿も。 最後の方でマリコさんが下手から上手までぐるっと回る振りがあるのですが、公演当時と同じくマリコさんが前に近づくと娘役さんが笑顔で迎えてその感覚も全く以前と同じでした。そして、この振りのところまで来ると大好きな場面の終わりも近づいているということで、もっと見ていたいという気持ちがつのってきます。
  とうとう音楽が終わり、マリコさんが横を向いてポーズをとり終わります。
  幕が降りてきたその影の中で、姿勢を正したマリコさんの表情には踊り終えた充実感が満ちていました。

  前楽では、この後にカーテンコールが2回ありました。
  1回目は幕が開くとマリコさんが一人で立っていて静かに一礼しました。 2回目も幕が開くとマリコさんが一人で立っていて、すぐに両袖に手招きをしました。マリコさんをはさんで両側と後ろに星組生がずらーっと並び、全員でおじぎをして頭をあげた時に、マリコさんだけでなく星組生全員の表情に充実感が満ちていて、何か一つのショーを見終わったような感覚になりました。

  普通、サヨナラショーと言えば、最後に何か心に染みるような曲を歌いながらスターが銀橋を渡り、後ろに組子がずらーっと並んで見守っている…というのが定番だと思うのですが、マリコさんの場合は最後に組子全員と一緒にトップお披露目作品の中の群舞を踊って終わりました。そこに麻路さきのこだわりを感じました。

  マリコさんは、たくさんの良い作品に恵まれた人で、そのファンの私には好きな作品がたくさんあるのですが、それらを一つ一つ思いだし、最後にもう一つ好きな作品が出来たような、そんな気のする素晴らしいサヨナラショーでした。

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  千秋楽を観て、サヨナラショーを観て、パレードで見送って、ファイナルパーティーもあったというのに、未だにマリコさんとお別れするという実感が ありません。こんなにも実感がないとは思いもしなくて自分でも驚いています。 いろいろなシーンが断片として頭に残っていて、それを時々思い出すのですが、何か夢でも見ていたような…そんな気がしています。

  実際、マリコさんは今日もムラでお稽古されていますし、本当に悲しくなってしまうのは11月23日を迎えた時なのでしょうか。その時には、二度と麻路さきに会う事はなくなっているのでしょう。今は悲しいというよりは、少し寂しい…そんな気持ちでいます。
  
  さよならパレードには6500人の人出だったと聞き、改めてマリコさんの大きさに驚いています。いつのまにマリコさんはそんなに大きくなってしまったのでしょう。このところの盛り上がりの大きさは本当にすごいです。
  及ばずながら私も、麻路さきの最後を盛り上げるべくお手伝い出来たらと思いますし、残された日々を完全燃焼するため、がんばりたいと思います。

 ★Nifty-serveより転載★

   
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