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俺は、アルトゥハンのバックアップテープをチェックした。
「ねえ…、いったい何をするの?」
「彼の最後のデータを調べるんだ」
「でも、データは削除されたんじゃ…」
「バックアップが残ってる。先週分まで遡れば、彼のデータが掴める。…あった、これだ」
ID[ALT003316A]
氏名[弓島 悠也]
ハンドル名[ユーユー]
使用キャラクター[亡国の戦士]
プレイヤーレベル[71]
「何、『亡国の戦士』って?」
画面に表示されるキャラクターCGを見ながら、彼女が訊ねた。
「あまりいいキャラじゃない。滅びた国の戦士。職業も、傭兵や用心棒といったものにしか就けないんで、条件は悪いキャラだよ。安住の地を持たない悲運のキャラさ。…いや。だからこそ選んだのか?」
パートナー[そよ風の精霊]
「綺麗なパートナーね」
「精霊系のパートナーは、人型が多くてね。この『そよ風の精霊』は女性キャラでも1,2を争う人気キャラだ。まあ、育てて楽しむなら、人型ってことなんだろう。…ちょっと待てよ」
「どうかしたの?」
「こりゃ凄い。育成値が二万を越えてる。パートナーと相当話をしてるってことだ。このレベルで、この総プレイ時間…。アルトゥハンも、ほぼ全土を踏破してる。ということは…、おそらく、他のプレイヤーとパーティーを組むことは、ほとんど無かったはずだ」
「あんなにワイワイ人がいるのに? パートナーと二人だけ?」
夏霧の表情が、少し青ざめていた。
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