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 act.8 終末の足音
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 翌日、バニラ以下主立ったメンバーは、カフーとサジバを迎え、対策会議を開いた。ふたりのもたらした情報は、魔攻衆を震撼させた。

 聖魔の森の最深部では、既に大規模な変動が始まっていた。数多くの島で皇帝カズラが光を満たし、森そのものも増殖を始めていた。巨大化した島では、細胞分裂のように新たな島が生まれ、そんな島の中には、ヒメカズラが多数群生する島も発見された。ヒメカズラには、島と島とを結ぶ転送装置の能力があり、通常各島に1,2株しか存在しない。それが群生しているということは、その島は交通の要所であることを意味する。カフーたちは、このようなヒメカズラが群生する島を、ジャンクションと呼ぶことにした。
 カフーの縦走調査の間、エルリムの御神木は勿論、特別な物は何も発見できなかった。だが、たった一度だけ、カフーは聖霊に会うことに成功していた。
「それは純白のドレスを着た女の聖霊だった……」

 * * *

「可哀想に……何と言うことを……」
 戦いが終わった皇帝カズラの中、肩で息をするカフーの背後に、突然その聖霊は現れた。魔攻陣の聖魔は既に消耗している。カフーは素早く予備の繭に換装すると魔攻陣を再展開し、攻撃態勢をとった。一連の動作を隙無く一瞬で行えるのは、カフーの実力故である。だが、切り替えた魔攻陣に、カフーは違和感を覚えた。
「クッ、何だ!?」
 魔攻陣が安定しない。聖魔たちが聖霊を見て動揺しているのだ。カフーは何とか聖魔を落ち着かせようとした。だが、それを聖霊が妨げた。
「案ずることはない。争う気はありませぬ。お前たちもお下がり」
 聖霊が軽く手を振ると、魔攻陣に配置した聖魔たちが総て戦闘不能になり、繭へと帰ってしまった。やむなくカフーは魔攻陣を解除すると、腰に差した短刀に手を掛けた。
「君は誰だ?」
「……我はマハノン。生命と豊穣を司るエルリム七聖霊の一人。知恵ある獣よ。汝らは何故エルリム様の加護を拒むのか?」
「加護だと!?」
 マハノンは悲しげにため息を吐いた。
「多くの仲間を失われましたね。さぞお悲しみでしょう。されど画策したるマテイもまた、審判の聖霊としてその使命を全うしたまでのこと。本来、エルリム様は破壊も殺戮も望みませぬ。只々、パレルの平安を願っておいでです」
「人間を滅ぼしてもか!」
「滅するのではありませぬ。創世に返し、歴史をやり直すのです」
「余計なお世話だ!」
 カフーは短刀ひとつでマハノンに斬りかかった。だがマハノンは、羽虫でもはらうかのように軽く手を振り、突進するカフーの動きを止めた。
「ウッ」
「カフー、そなたも一度はエルリム様のご加護を受けた身なれば、そのお心お分かりでしょう。3軍の者たちに見つかっても面倒です。この場は早々に立ち去りなされ」
 マハノンはカフーの正体を見抜いていた。カフーはかつてエルリムの使徒となり、黒繭使いとなったレバントを止めた。だが今やカフーは、自ら堕ちたレバントの心を痛いほど理解していた。黒繭使いは悪しき存在と忌み嫌われたが、一方では闇の義賊とも呼ばれていた。カフーにも今ならばその意味が充分に分かる。そしてその思いが、レバントを倒した事への後悔を産み、カフーを苦しめていた。
「ガハッ!」
 気力で無理矢理金縛りを溶くと、カフーは血を吐いてその場に跪いた。全身が鉛のように重い。
「まもなくこの聖魔の森は、時空の狭間よりパレルの地へと帰ります。願わくは、穏やかに我らの帰還を迎えておくれ」
 マハノンはまぶたを伏せ、カフーに背を向けて静かに去っていった。
「待てっ!」
 カフーの手が空しく宙を掴んだ。

 * * *

「森が……帰る!?」
 それはすなわち、カヤとクマーリ2つの結界が破られることを意味する。かつて存在したゲヘナの結界も、今はもう残っていない。封じるすべを失った今、復活した森は、もはや誰にも止められない。
 サジバの情報により、聖魔の森の復活には、リオーブが関わっていることも分かった。リオーブには膨大なエネルギーが蓄えられ、無理に破壊すれば島ごと吹き飛んでしまうことも伝えられた。
「いっそ、結界が破られる前に、リオーブを全部破壊しちまえば!」
「それを成す者は、島と運命を共にするしかないぞ。いったい幾つ島があると思っとるんじゃ」
 血気にはやる魔攻衆を老戦士ウーがいさめた。シド=ジルは、サジバに尋ねた。
「破壊は出来ないまでも、リオーブを発動させないようにする方法は無いのかい?」
「光が満たされぬ限り、発動することは無い。だが残念ながら、一度光を満たしたリオーブから、その光を奪う方法は、全く分からぬ」
 考えを巡らすシド=ジルに代わり、後ろに控えていたゼロとメロディーが発言した。
「聖霊は、魔攻衆を森から追い出そうとしたんですよね。もしかするとリオーブは、直接操作する必要があるんじゃないかな? そのために、森にいる魔攻衆が邪魔だった」
「そっか。聖霊は7人しかいないし、メガカルマたちに操作を手伝わせるのかもね」
 魔攻衆たちが二人の意見に感心していると、それをフレア=キュアが補足した。
「そうね。島みたいな超質量を異次元空間から通常空間にジャンプさせるとなれば、膨大なエネルギーがいるはずだし、それを蓄えたリオーブを扱うには、相当デリケートな制御が必要でしょうね。メガカルマに任せられるくらいに簡略化されているとしても、私たちに邪魔されながら出来るような作業じゃないはず……え?」
 バニラ以下魔攻衆全員が、目を丸くしてフレア=キュアを見ていた。キュアは元々、魔攻陣の扱い以外、難しい話はからっきしダメで、こういう場では、ジルにちょっかいを出すか、居眠りしているのが常なのだ。
「キュア……ツワリが脳に来たッス?」
「え!? ツワリィ?」
 呆気にとられたバニラが、つい口を滑らしてしまった。突然のキュアの妊娠話に一瞬話が逸れたが、閑話休題、シド=ジルが今後の対策へと話を戻した。
「とにかく! 少なくとも僕らが勢力下に置いている島は、結界の外には出られないわけだ。まずは、なるべく多くの島を支配下に置けるようにしよう。そのためには、ジャンクションの確保が重要になるだろう」
 シド=ジルの提案に、サジバが横槍を入れた。
「下らぬな。島など押さえずとも、エルリムを葬れば、総てが終わる」
「勿論それが一番だろう。だがこれまで時空の狭間では、エルリムもその依り代である御神木バオバオも、誰一人として発見していない。エルリムを見つけることが出来なければ、倒すことも出来ないし、その前に創世に還されれば、総てはお終いだ。そこで、もう一つ探す目標があるんだが……」
 シド=ジルは、ゼロとメロディーを見た。
「滅びの蟲」
「オニブブの巣ね?」
 ゼロもメロディーも、シド=ジルの考えを理解していた。シド=ジルは頷くと話を続けた。
「人類を創世に還すというなら、エルリムは間違いなく滅びの蟲オニブブを使うはずだ。だが僕たちもレバントさえも、森でオニブブを見たことがない。オニブブの襲来は度々記録されているし、空を覆うほどの大群で襲ってくると言われている。だがそんなに沢山いるにも関わらず、その所在は誰も知らないんだ。おそらく、一カ所に群を成して住んでいるんだろう。巣を見つけ叩くことが出来れば、エルリムの企てを阻止できるかもしれないし、オニブブの居所には、何か秘密があるような気がする」
「うまくいけば、オニブブの弱点も見つかるかもしれないわね」
 フレア=キュアの意見に、シド=ジルは笑顔で頷いた。ようやく反撃の糸口を掴み、魔攻衆たちの士気は高まった。バニラは握り拳を作って立ち上がると、全員に号令した。
「そうと決まれば、さっそく行動開始ッス! まずはベテランメンバーを中心に、憑魔甲の適応検査をやるッス。サジバ殿は憑魔甲の量産をお願いするッス。不測の事態に備えて、周辺の村々に森出現の警告を伝令。それと魔攻衆の募集も忘れずに。キキナク商会に応援を要請するッス。哨戒班はジャンクションの捜索と、エルリム、御神木、オニブブに関する情報収集。いいッスね、みんな。散会!」
 各々が自分の使命を胸に、それぞれの役目へと散っていった。

 闘技場に、憑魔甲の適応検査を受ける最初のメンバーが集まった。サジバは予備の憑魔甲を並べた。
「憑魔甲は、キキナク商会の工房を使って量産する。だが、肝心の扱う人間が揃わねば意味がない。憑魔陣は聖魔との融合ゆえに術者の体に負担が掛かる。我らナギとて、憑魔陣の扱いは容易くはない」
 サジバの説明を受け、カフーが前に進み出た。
「みんな聖魔は持ってきたね。僕の経験では、憑着できる聖魔には相性があるようだ。いろいろ試す必要は有るが、とりあえず普段よく使う聖魔で試すのがいいだろう。まずは誰から……」
 カフーの言葉が待ちきれなかったように、バニラが目をキラキラさせながら勢いよく名乗り出た。
「ヌメヌメとの合体! 至福の瞬間ッス!」
「やっぱり……」
 全員が思いきり脱力した。バニラのヌメヌメ好きだけは、誰にも理解出来ない。バニラは説明を受けると、ワクワクしながら中央に立った。憑魔甲から光が飛び出し、バニラの前に一番のお気に入り聖魔ギヌゴンが姿を現した。ギヌゴンの外見は、まさに二足歩行するデブのオオサンショウウオである。一方バニラの容姿は、バラが似合う華麗な女王である。見る者は皆、めまいを覚えた。
「憑着ッ!」
 光が後方へ吹き飛び、融合は一発で成功した。そこには、カラフルなギヌゴンが立っていた。ただ、その大きな口はアングリと開き、その中からバニラの顔が覗いていた。
「き、着ぐるみ!」
 ゼロはその姿を唖然と見つめ、メロディーはゼロの背後で必死に笑いを堪え藻掻いていた。さすがに誰も、神殿首座であるバニラのことを笑うわけにはいかない。他の者たちも、口を押さえたり視線を逸らして必死に笑いを堪えている。バニラは短い足でピョコピョコと歩き、用意しておいた大きな姿見に全身を映した。
「オー! ラブリー!」
「ブワッハッハ!」
 とうとう我慢できず、闘技場が爆笑の渦に包まれた。
「何がおかしいッスー!」
 憑着を果たしたバニラが、腰に手を当てみんなを指さして怒った。カフーは笑いを堪えながら、大事なことを確認した。
「まあまあ。それよりバニラ。体調は大丈夫かい?」
「ホ? グレイト、グレイト。パワー爆発ッス!」
 重量級聖魔だけに、振り回す腕には力がみなぎっている。サジバが、理解できないという顔をしながら近付いてきた。
「さすがに神殿首座だけのことはある。聖魔との相性もいいようだな。だが、憑魔陣は無限に続けられるわけではない。自分の限界を見極められよ」
 サジバはバニラの周りを回っている青く透明の円盤を指さした。
「この円陣はシギルと言う。シギルは憑着の状態を表し、この青い光は、聖魔の属性を表す物だ。見ての通り今は安定しているが、憑着を続ければ徐々に体に負担が掛かり、シギルの回転が不安定になる。どの程度の連続使用が可能かは個人差があるので、いろいろ試すのが良かろう」
「さて、次は誰がやる?」
 バニラが感触を確かめる傍ら、カフーが次の挑戦者を募った。
「僕がやろう」
 シド=ジルが名乗りをあげると、フレア=キュアも名乗ろうとした。だがそれをバニラが止めた。
「キュアはダメッス。お腹の子にどんな影響が出るか分からないから。それとミントもやめた方がいいッス。傷が開いたら大変ッスよ。こいつ、結構ハードッスから」
 バニラの顔に汗がにじみ、シギルも少しふらつき始めていた。
「初めから無理をするな。徐々に体を慣らせばいい」
 カフーの言葉を受け、バニラは憑魔陣を解除した。代わってシド=ジルとベテラン魔攻衆が準備する。シド=ジルが聖魔を出し、憑着を掛ける。だが次の瞬間、光を放ち暴発してしまった。
「うわっ!」
「大丈夫、アナタ!」
 フレア=キュアたちが思わず駆け寄った。幸いケガは無いようだ。
「イテテテテ。なるほど、こいつは一筋縄じゃいかないな」
 一方、魔攻衆の方は、何とか憑着に成功した。だが、シギルは激しくうねり、到底使える状態ではない。
「グヌヌ、クソーッ! こいつさえ使えれば仇が討てるんだっ!」
「よせ! 無茶をするな!」
 カフーは慌てて止めに入った。
「グワーッ!」
 弾けるように憑着が解けた。服が破れ、剥き出しの肌は腫れ上がり、シューシュー音を立てて白い煙をあげていた。取り巻く者たちは、その姿に動揺した。
「無茶はせぬことだ。無理に憑着を続ければ、やがては体に癒着し、聖魔に取り込まれるぞ」
 サジバは表情を変えず憑魔甲を回収すると、新たな挑戦者を募った。他の者がたじろぐ中、ゼロとメロディーが名乗り出た。
「ボクがやるよ」
「アタシも」
 止めに入ろうとオロオロする両親を他所に、二人は見よう見まねで憑魔甲の準備をした。憑魔甲の中央には、8つまで繭を格納できるターレットホルダーが付いている。ゼロとメロディーは、自分たちの魔攻陣カプセルから繭を移し入れた。ホルダーを回し、使う繭を正面に据えると、憑魔甲を前方に構え聖魔を出現させた。ゼロは、角と牙を生やした鬼のようなナックルチューを出した。一方メロディーは、耳と目が大きくリスを彷彿させる妖精のようなミミリーナを選んだ。ゼロはそれを見て文句を言った。
「何だよメロディー。合体するからって、外見で聖魔を選ぶなよな〜」
「余計なお世話です〜」
 緊張感のないふたりに、フレア=キュアが怒った。
「こら、アンタたち。遊びじゃないのよ!」
「ハーイ」
 勿論ふたりとも遊びのつもりなど無い。憑魔甲に右手を乗せ発動させると、ふたりともアッサリと成功させた。ゼロは重厚な甲冑を着込んだ大男のようである。試しにパンチを繰り出してみる。重そうなこぶしが唸りを上げて空を引き裂く。岩ぐらい粉々に砕きそうだ。見る者はそのパワーに圧倒された。逆にメロディーの方は、極めてスリムな出で立ちであった。足取りは羽根のように軽く、頭には仮面のような物をかぶっている。総てを見通す大きな複眼と、どんな小さな音でも聞き分ける耳を持っていた。
「そんな太い腕、当たんなきゃ全然意味無いわよ」
 メロディーはゼロの周囲を飛び回り挑発した。ゼロはメロディーを捕まえようと腕を伸ばした。だがミミリーナの力を得たメロディーは、ゼロの腕の軌道を完全に見切り、からかうようにすり抜けて見せた。
「こいつ!」
 ゼロはムキになって捕まえにかかった。だが、俊敏な動きのメロディーに翻弄されてしまう。
「何て動きだ」
「すげえ、目がついていかねえ!」
「これなら確かに、新種聖魔もメガカルマも目じゃねえな!」
 魔攻衆の面々は、憑魔陣の威力に改めて肝を潰した。サジバは、ゼロたちの適性を見て取ると、ふたりに近付いて言った。
「お前たちは、だいぶ使えそうだな。今度は、縛装を試してみろ」
 縛装とは、憑着した上から別の聖魔を装備する技である。憑魔陣の真骨頂は、どの聖魔をベースに装備し、どの聖魔で機能強化するか、その組み合わせにある。縛装には、上下半身、両腕、武装が選択できる。ふたりとも、ターレットホルダーには、まだ繭が残っている。
「おい、サジバ。いくら何でも縛装はまだ無理だ」
 カフーが止めに入った。サジバも実はそう考えていた。憑魔陣が甘くないことを教えるために、ワザとふたりにけしかけたのだ。だが、そんなサジバの予想を、ゼロとメロディーは覆してしまった。
「縛装!」
 ゼロは、最速の飛行型聖魔ゴージェットを上半身に追加した。肩から背中にかけて、まるでジェット機のような翼が付いた。メロディーは刀の生えた巨大キノコの聖魔タケゾーを右腕に追加した。刀の生えた大きな円形のシールドが、華奢な右腕に装着された。ふたりのシギルには、聖魔の文様が追加されていた。
「お? うわ! 何だ──?」
「やだ、ちょっとコレ重い〜!」
 ふたりとも、縛装した聖魔の力をコントロール出来ずにいた。ゼロは大きな体を翼の推進力に振り回され、メロディーは重い右腕に身動きが取れなかった。だが、上手く扱うことは出来なくても、ふたりのシギルは、変わらず安定して回っていた。
「この──!」
 ゼロは力ずくでコントロールしようとジタバタ飛び跳ねている。一方メロディーも、何とか動かそうとするうち、円形のシールドが回転し始め、闘技場内を走り始めてしまった。
「ウワ──!」
 見物人たちは逃げまどい、大混乱が起きた。カフーは慌てて自分の憑魔甲から狼男のようなブルメンを呼び出し、漂着した。続けて、人型のタコのようなタッコンキューを呼び出し、左腕に縛装する。飛び跳ねるゼロを力で押さえ込み、左腕の触手でメロディーを絡め取る。
「よし、二人とも、憑魔陣を解除するんだ」
 何とかコントロールを取り戻したふたりは、ようやく憑魔陣を解除した。シギルが弾け、元の姿に戻ると、勢い余ってそのまま地面に転がった。
「アイテテテ……」
 カフーはホッと溜め息を吐くと、自分も憑魔陣を解除した。
「まったく。いきなり縛装を使うなんて。どこもケガは無いかい?」
 カフーはふたりの手を取り、助け起こした。その時、ふたりの手の甲にある竜のアザが目にとまった。
『おや? この紋章……どこかで……』
 カフーの脳裏に、かつて自分が魔攻衆になった頃に聖魔の森で出会った、水の竜のカルマだったキュアの姿が浮かんだ。青い肌をしたカルマ・キュアの額には、ゼロたちと同じ紋章が描かれていた。
『まさか。ただの偶然だな。このふたりはジルの甥だし、そもそもキュアには血縁も無いんだから』
 カフーは、一瞬脳裏で重なったカルマ・キュアとゼロたちを、疑うことなく否定した。
「ありがとう。一時はどうなるかと思っちゃった」
 メロディーは苦笑いをしながら、自分の頭をコツンと叩いた。ギャラリーもようやく落ち着きを取り戻した。だがそんな中、サジバは真剣な表情でゼロとメロディーをジッと見ていた。
『バカな。いかな魔攻衆と言えど、ナギでない者が、これほど容易く聖魔に馴染めるというのか!?』
 サジバは、ゼロとメロディーの示した適性に、異様なものを感じるのだった。
 そしてサジバ以上に驚いていたのは、シドとフレアであった。ふたりは周囲に聞かれぬよう、小声で疑問を口にした。
「あのふたり……いったい、どうなってるの?」
「まさか僕らは……偶然ではなく、呼ばれるべくしてここへ来たとでも言うのか?」
 ふたりは子供たちのあっけらかんとした様子を見つめながら、一家を覆う運命の影を感じ、恐怖するのだった。

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For the best creative work