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 act.16 ゲヘナパレ (前編)
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 メロディーの川下りは天候にも恵まれ、拍子抜けするほど順調に進んだ。コロニーの外は手付かずの自然が続いていた。夜は無理をせず船を岸に着け、テントを張って一夜を明かす。星を読み現在位置を地図で確認する。川は多少蛇行しているが、2007年の地図とのズレはそれほど大きくはない。ガガダダのあるコロニーの規模は不明だが、このまま行けば午前中には圏内に入るに違いない。
「まあ、うまくいって当たり前か。エルリムも聖霊も、もうじき倒せることは歴史上決まってるんだし、もうすぐ方法も見つかるって事ね。楽勝楽勝」
 エルリムのいない後世の歴史を知っているメロディーは、旅の成功を楽観視し、ぐっすりと眠りについた。だが後日、その考えの甘さを思い知らされることになるとは、まだ知る由も無かった。
 翌朝、メロディーは、朝日と共に出発した。風が逆方向に吹き始めたため帆は使えなかったが、川の流れは充分にあり、船は快調に進んでいく。川幅も広くなり、300メートルぐらいありそうだ。六分儀を使い現在地点を割り出そうとしたとき、突然、川面が大きくうねり始めた。風も穏やかで天気は良いのだが、目に見えて流れが乱れ、船が右に左にと首を振る。川下から波頭が向かってきた。メロディーは必死に舵を取ったが、小さな船は木の葉のように振り回された。
「もー! 何よ、これ〜!」
 波しぶきが船を洗う。揺れが激しく、まともに操舵できない。メロディーがギャーギャー騒いでいると、突然背後から声が響いた。
「慌てるな! 大丈夫だ、メロディー」
 棺の蓋が開き、シド=ジルとフレア=キュアが出てきた。いつの間にかコロニー領域に入り、ふたりが目覚めたのだ。シド=ジルは、水中モーターを再起動させると、メロディーに代わって舵を握った。推力で水のうねりをねじ伏せ、ようやく船が安定した。
「これは海嘯だな。満潮の時間にぶつかったんだろう。この川は勾配の緩い感潮河川だから、影響が上流まで及ぶんだ」
「あなた、あれ!」
 棺の縁に掴まっているフレア=キュアが、前方の川岸を指さした。そこには、草に覆われた石組みの塔が立っていた。
「昔の灯台のようだな。脇に小さな支流が見える。行ってみよう」
 シド=ジルは舵を切ると、灯台跡が示す支流へと船を入れた。そこは石垣で護岸工事された広い運河だった。600年の歳月で石垣はかなり崩れていたが、航行に支障はない。
「ガガダダの宮殿には堀があったらしい。もしかすると、このまま都市部まで行けるかもしれないぞ」
 水は澄み、川魚が沢山泳いでいる。運河の両側には雑木林が迫り、長く人の手が離れていることを物語っていた。どれくらい進んだだろうか。突然木々がまばらになり、視界が開けた。
「町だ!」
 運河の両脇には船着き場が並び、その向こうには倉庫のような崩れた建物が続いている。おそらく昔は、海運の拠点だったのだろう。更に船を進めると、遠くに高い塔が見えてきた。シド=ジルは慌てて正史写本を取り出すと、王宮の図を確認した。
「あった、これだ! ゲヘナパレ錬金術師工房、ゲヘナの塔!」
 一行は船を岸壁に着けると近くの高台に登り、そこからゲヘナパレ帝国首都ガガダダの全容を望んだ。そこには、バスバルスを遙かに凌ぐ、廃墟の古代都市があった。町の建物はことごとく破壊され、草木に覆われている。ゲヘナの塔も上半分が失われ、背後に続く王宮は見る影もない。聖魔戦争の結果であることは間違いなかった。
「こりゃ酷い……」
「パパ。あれ、何かしら?」
 メロディーは、全長が20メートルはある紫色の蜘蛛のような物を指さした。頭は無く、蟹のような鋭い甲殻の足が、中央の胴体の周りに何本も生えている。構造的には、外骨格を持ったヒトデと言った方が近そうだ。小山のような胴体には、レンズのような目が幾つも並んでいる。シド=ジルは正史写本をめくり、該当する記述を探した。
「あれは……破滅の蟲ヨブロブだ!」
 帝国の終焉を綴った記述に、襲来の様子が描かれている。帝都最後の日、空を無数のオニブブが覆い、地上ではヨブロブが破壊の限りを尽くし、ガガダダは廃墟と化したという。目の前に見えるそれはとうに死に絶えており、破壊された町と共に瓦礫のように朽ちていた。よく見るとヨブロブの死骸は、町中に存在した。ゲヘナの塔の影にも、王宮の向こうにも見える。おそらく、夥しい数のヨブロブが帝都を襲い、町を破壊した後、死に絶えたのだろう。これは明らかに、エルリムがゲヘナパレに下した神罰の跡だ。
「これがエルリムの……神様のやることなの?」
 これまでメロディーはエルリムに対し、漠然とした危機感しか持っていなかった。だが今、目の前にあるかつての惨劇を目の当たりにして、メロディーはエルリムに対する疑念と強い憤りをいだくのだった。
「半壊とはいえ、ゲヘナの塔が残っていたとはラッキーだな。錬金術師工房なら、聖霊を倒した当時の技術が残っているかもしれない」
 シド=ジルは、メロディーとフレア=キュアの肩を叩くと、ゲヘナの塔を目指して歩き始めた。

 雑草やツタに覆われた瓦礫の街を歩いていく。昆虫や鳥以外、動く物は何もない。通りにはひしゃげたフロートカーや豪華な彫像の列が続き、かつての繁栄を彷彿させる。ゲヘナパレ帝国400年、この都市は栄華を誇ったのだ。そしてパレル歴383年、アルカナ伝説にあるメネク王子とアルカナの死をきっかけに、エルリムは森に聖魔を放ち、聖魔戦争が勃発した。パレル歴389年、反撃に転じた帝国錬金術師たちは、聖霊の殲滅に成功したが、森の神エルリムを倒すまでには至らず、エルリムが放った滅びの蟲オニブブと破滅の蟲ヨブロブによって、ゲヘナパレ帝国は崩壊したのである。
 メロディーは、漠然とした疑問を感じていた。そして廃墟の町を通るうち、それは明確な疑念へと凝固していった。
「ねえパパ。これだけの破壊の跡なのに、死体が全然見あたらないわ」
「そりゃあ、オニブブが眠らせた人々を持っていったからだろう」
 メロディーは歩みを止め、シド=ジルに向き直ると、改めて尋ねた。
「それって変じゃない? オニブブを使えばみんな眠らせることが出来たんだし、町を壊す必要なんて無いじゃない。だいたいガガダダは、回廊封鎖で封印されて、復興することも出来なかったんだし。ゲヘナパレ以前の文明は、オニブブで3回も滅ぼされているのに、どうしてゲヘナパレ帝国だけ、聖魔やヨブロブを使ったのかしら?」
 シド=ジルとフレア=キュアは顔を見合わせた。廃墟の様子を見ても、壊さなければならない特別な物があったとは思えない。そもそも、オニブブに対する対抗手段は当時にも存在せず、錬金術師たちにもゲヘナの結界以外打つ手が無かったのだ。そしてその事は、魔攻衆についても同じで、オニブブの襲撃を受ければ為す術はない。にもかかわらず、現在の七聖霊も、オニブブではなく聖魔やメガカルマを使っている。
「オニブブは、エルリムでさえも、そう簡単には扱えないということなのかな……」
「オニブブには、何か特別な意味があるのかもしれないわね」
 勿論、シドにもフレアにも、その答えは分からない。三人は、謎を解くためには、何かとても重要なピースが欠けていると感じるのだった。

 メロディーたちは崩れた大門を抜け、ゲヘナの塔へと続く大広場へ出た。王宮地区の前面は、ゲヘナパレ帝国を支えた錬金術師たちの総本山であるゲヘナの塔がそびえており、ここが事実上のゲヘナパレ帝国中枢であった。
「パパ!」
 メロディーは塔の基部に繋がる建物を指さした。無数の石柱の陰から、ぞろぞろと何か出てくる。人型のもの、四つ足のもの、鳥のようなもの。数十体はいるだろう。緩く広い石段を、ゆっくりこちらに向かって降りてくる。
「聖魔? いや、違う。あれは、造魔だ!」
 生物を模してはいるが生き物ではない。石とも金属ともつかぬ材質で出来たロボットだ。メロディーは両親を守るように咄嗟に前に飛び出すと、憑魔陣を発動させた。
「メロディー!」
 前面にいた数体の造魔が襲いかかってくる。メロディーは縛装した鋭利なヨーヨーを巧みに操り、造魔の攻撃をかわしながら次々と切り刻んだ。最初の集団を瞬時に撃退すると、メロディーは塔の下に向かって叫んだ。
「あんた誰? 出てきなさいよ!」
 石柱の陰から、顎髭を蓄えた赤毛の男が現れた。戦士の風格漂う堂々たる男だ。だが、彼には足が無かった。腰から下には、自分の足代わりに造魔の下半身が付いていた。
「良い腕だ。だが、その程度では、塔に近づくことはできんぞ」
 達人だ。男の自然体の構えから、桁外れの実力がビリビリと伝わってくる。メロディーの憑魔陣は、まだ聖魔5体が限度だ。それでもここはやるしかない。メロディーは両親を下がらせると、自分に出来る最大の装備に縛装した。男はサックスのような大きな笛を取り出し、奏で始めた。その途端、男の姿が蒼い翼竜聖魔へ変わり、付き従っていた造魔たちも聖魔と合成された姿に変わった。シド=ジルは、その奇妙な術に驚いた。
「あれじゃまるで繭使いの術じゃないか! ……まてよ。あの大きな縦笛、顎髭……まさか、そんな……だが……」
 見覚えがあるわけではない。ジルの記録に、特徴のよく似た人物が一人いるのだ。だがその彼は、300年も前の人物だった。
 メロディーが突進すると、合成造魔たちが迎え撃った。合成造魔の攻撃は、先ほどとは比べものにならない。メロディーの攻撃は跳ね返され、逆にジリジリと押されていく。メロディーは防戦一方になり後退していった。だが、ある程度下がると、合成造魔たちも攻撃を止め、男の元へと下がり始めた。見ると聖魔を憑依した男は、石段の下から動こうとしない。メロディーは再び攻撃を仕掛けた。するとまた合成造魔が反撃に転じ、押し返される。激しい攻撃にメロディーのシギルがぶれ始めた。よろけ、地面に転がったメロディーに合成造魔が襲いかかった。
「メロディー!」
 だが、合成造魔の攻撃は僅かに手前で空振りし、再び男の元へと戻っていった。
「どういうこと? ……まさか」
 メロディーは不安定になった憑魔陣を解除すると、腰のナタに手を掛けながら男の方へ歩き始めた。再び合成造魔が襲ってくる。メロディーは素早く背後に飛び退き、さっきの場所で止まった。合成造魔の攻撃はギリギリ届かず、メロディーの目の前で空を切る。メロディーは確信しスックと立つと、ジッと男を見た。男は憑依を解き、フッと笑みを浮かべた。
「ほう。もう見切ったか。如何にもこの術はそこまでが限度。私もこれ以上前には進めない。今はこの塔の守護がわたしの役目。これでお前たちも、塔には辿り着けないとわかったろう。戻ってシゼに伝えろ。用があるならお前自身が来いと」
「シゼ? シゼって誰よ?」
 メロディーは聞き返した。男は怪訝な表情をすると付け加えた。
「あれからもう300年。ナギの里もとうに滅んだはず。シゼの手下以外、この地を訪れるはずが無かろう」
「300年だって!?」
 シド=ジルは思わず身を乗り出した。
「まさか、君は青の繭使いコリスか? レバントの師匠だったという。僕たちはケムエル神殿から来た」

 メロディーたちは、ゲヘナの塔のテラスへ案内された。見晴らしが良く、ガガダダの町を一望できる。おそらくかつては、ここで錬金術師たちが、くつろぎながら議論を戦わせていたのだろう。ジルの意識が感慨深げに辺りを見渡している。丸いテーブルを囲み、造魔が出してくれた昼食を取りながら、シド=ジルはケムエル神殿で起きたこれまでの出来事、この旅の目的をコリスに語った。
「まさかレバントが死んだとは……」
「集結の時を迎えて、レバントは竜神ケムエルの力を得て不死となったと聞いたけど、あなたはなぜ不死となったんです? それに、さっきのシゼというのは……」
 シド=ジルの問いに、コリスは悲しげな笑みを浮かべた。
「君たちに憑魔陣を伝えたという予言者シだが、シの俗名はシゼと言う。偉大な祖先ギにあやかって予言者などと名乗っているのだろうが、宗家の者ではあっても予言者などではない。もっとも、あいつも不死となり、それなりに力を身に着けたのは事実だが」
 コリスは、集結の時の後、いったい何が起きたのか、メロディーたちに語り始めた。

 * * *

 300年前、親子の繭使いリケッツとレバントが、それぞれ「闇の選ばれし者」「光の選ばれし者」として相まみえ、「光と闇の鎮魂曲」を奏で、聖魔の森を時空の狭間へ封印した。そして時空の狭間への入り口となったケムエル神殿を、不死となったレバントに預け、力を失ったナギ人は、族長ニに率いられ安住の地へと旅立ち、ナギの隠れ里を作った。隠れ里には、多くの繭使いも同行した。繭使いはナギ人との血縁者が多く、レバントの両親であるリケッツ、フィオ夫婦や、青の繭使いコリスも、隠れ里に移り住んだ。
 族長ニには、息子が一人残っていた。もともとニには、四人の息子と四人の娘がいた。だが、長兄三人は、黒繭を紡いで闇の使徒となり、「闇の選ばれし者」リケッツの下僕となって運命に殉じた。そして四人の姉もまた、繭使いの妻となって皆非業の死を遂げている。
 ナギ宗家を継ぐ者として唯一生き残った末子のシゼは、七人の兄姉の死を深く悲しみ、エルリムを呪い、人間を呪っていた。シゼは、隠れ里で穏やかに死を待つ事に我慢できず、父ニと衝突を繰り返していた。まだ13歳と幼いシゼを憂い、族長ニは義理の兄にあたるコリスにシゼを預けた。そしてコリスは、シゼを連れて旅に出たのである。
 コリスは故郷ゴランの遺跡などを回り、シゼの姉たちの墓に花を手向けた。道中、コリスは妻ラーの思い出話や人間たちの暮らしについて語り、シゼに世界の広さを教えた。そしてふたりは、偉大なるナギの祖先予言者ギが若い頃に暮らしたゲヘナパレ帝国首都ガガダダの遺跡を訪れた。
「ギ様も若い頃はナギと人との融和を願い、ここで錬金術師たちと学ばれたという。錬金術師たちは、聖魔や聖霊と戦い、そしてエルリムに敗れた。ギ様がケムエル神殿に2つの結界を作られたのも、もしかすると錬金術師たちの意志を引き継いだ故かもしれないな」
 コリスはゲヘナの塔から廃墟の帝都を望みながら、古人の決意に思いをはせた。だが、まだ少年だったシゼには、コリスの思いは伝わらなかった。むしろ彼の興味は、工房に残されたゲヘナの業に向いていた。そしてシゼはコリスの忠告を無視して遺跡を探り、「賢者の石」を見つけたのだ。
 賢者の石は、ゲヘネストの英知を蓄積したライブラリーであった。かつて錬金術師たちは、獲得した知識をこれに集め、お互いの脳に直接流し共有することで、科学技術を加速的に進歩させていた。シゼは賢者の石がまだ動くことを知ると、密かにそれに触れ、ゲヘナの業に関する膨大な知識を手に入れたのだ。シゼは、その力に驚喜した。獲得した知識を元に次々と古代の技術を紐解くにつれ、まだ幼いシゼの中に、純真な野心が膨らんでいった。
「何をしている!」
 コリスはシゼがゲヘナの秘術「時騙しの鏡」を動かそうとしているところを見つけ、それを止めようとした。そしてその時、揉み合うふたりは時騙しの鏡の光を浴び、不死となってしまった。
「不死となったナギ宗家のボクがゲヘナの業を使えば、もはやエルリムだって恐れることはない。ボクは神になったんだ!」
 造魔とナギ宗家の能力を操るシゼは、力でコリスを圧倒した。シゼはコリスを出し抜き、錬金術師たちがエルリム封印のために研究していた結界装置「時空のアギト」へ閉じこめようとした。間一髪それに気付いたコリスだったが逃げ切ることができず、下半身だけ閉鎖時空の中へ取り込まれてしまった。
「シゼ!!」
 もはやシゼを止められないと悟ったコリスは、ついに彼に繭使いの技を放った。だがコリスには、シゼを殺すことは出来なかった。シゼは傷ついた体を引きずりコリスから逃れると、ガガダダを去り何処かへと消えてしまった。

 * * *

 コリスは話し終えると、メロディーたちを工房の研究室へ案内した。研究室の中は、跡形もなくメチャメチャに破壊されていた。
「酷い……」
「シゼは逃げるとき、わたしが追ってこれぬよう、ここを破壊していったのだ」
 メロディーはその光景に愕然とした。英知の集大成である賢者の石は、粉々に砕け散っていた。他の装置もことごとく壊されている。広い研究室の中にあるのは、瓦礫の山だけだった。メロディーは時騙しの鏡の残骸の前に立ち、ふてくされて呟いた。
「不死の技術まであったなんて、どんだけ進んだ文明よ」
 コリスは、破片を手にしながら説明した。
「時騙しの鏡は、厳密には失敗作だったようだ。錬金術師たちは聖霊の不死を研究してこれを作ったようだが、人間には効果が無かったらしい。だが、聖霊の血を引くナギ人には、効果があったがね」
 コリスはここで300年の間残された遺跡を調べ、断片的ながら多少のゲヘナの業を会得していた。だがそれでも、時空のアギトを解除する方法までは見つけられなかった。
「これが時空のアギト……」
 フレア=キュアは唖然としながらそれを見つめた。模様が描かれた黒曜石の台の上に青白い光球が浮かんでいる。そしてその中に、コリスの下半身だけが囚われていた。シド=ジルたちは知る由もないが、その球体は大きさこそ違うものの、2007年の玉座の間でシドとフレアが囚われている球体とよく似ているのだった。
「わたしはシゼを闇から救うことが出来なかった。シゼを止めるのはわたしの責任だ。だが、これがある限り、わたしの体はゲヘナの塔から離れられない。そのため、わたしはこうしてシゼが舞い戻った時のために、ここで番をしているのだ」
 コリスは沈痛の面持ちで語った。
 メロディーは辺りを見回しながら途方に暮れた。工房がこの有様では、どうやって聖霊やエルリムを倒す方法を見つければいいのだろう。ケムエル神殿では、ゼロたちが帰りを待っている。もしかしたら、森の帰還が始まっているかもしれない。神殿を出て既に2週間。もう時間はほとんど残されていなかった。

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