PART Y
12月の終わりに
12月中旬に一時極端に体重が落ち、具合が悪くなったものの、その後はなんとか持ちこたえ、1週間ほどでとりあえず元気は回復した。体重はまだ少ないが一応これで安心して新年を迎えられる。しかし、嘴の回りや羽の荒れは相変わらずだ。若鳥なのだから、溌剌としていなけりゃいけないのに、まるで老鳥である。このまま前と同じ飼い方をしていたら、今は持ち直したものの、またズルズルと悪くなっていくかもしれない。原因は何だろう???私の乏しい知恵と回らない頭をふりしぼったって、答えが出てくるわけはない。でも、ひょっとしたら栄養剤に頼りすぎていたのではないだろうかとひらめいた。ともすると、「栄養が足りないのでは」という強迫観念に悩まされ、ついつい薬をいろいろと添加したり、栄養剤配合の餌ばかりを使っていたが、かえってこれがよくなかったのかもしれない。人間だって薬漬け医療が見直されている時代だ。小さな鳥にはかえって負担だったのかもしれない。ただし、これは私の想像にすぎない。でも、試してみる価値はありそうだ。
ひなたぼっこをするといつも羽を思いきり広げ、セミのような形になる。尾羽はまだ短い。
そこで、添加物はいっさい加えず厳選した材料のみで飼料を作っているという、国内のK社に連絡して詳しい説明をうかがうと、やはり栄養剤に頼りすぎるのはよくないとのご意見だった。わが意を得たり!虫についても「生きていてこそ虫です」という言葉は妙に説得力があり、ここに賭けてみよう!と決意する。すぐに送られてきたすり餌を見て驚いた。色もにおいも今まで使っていたものとまるで違う。それに同じK社の「さえずりの素」という補助栄養食(これは薬品ではなく、天然素材でできたすり餌のようなもの。ピーナツ粉の親戚と思われる。もちろん無添加。)をちょっと混ぜる。後は青菜をたっぷりと虫である。虫もミミズとミルワーム、いずれも生きているものを与える。ちょっと勇気のいる冒険であるが、まあ、調子が悪いようならすぐにまた元に戻せばいいか……という開き直りは私の人生のモットー!
誤解を恐れずに言うならば、こんなふうにいろいろ「実験」してみるべきだと私は思っている。野鳥の育て方はまだまだ確立されていない。愛玩用として輸入されているものならばともかく、それ以外の野鳥については本当に分からないことが多い。しかも、ムクドリではうまくいったことがホトトギスには全く通用しない。それぞれの種によって大きく異なるものなのだ。動物園等の施設でも、獣医さんでも知らないことが多く、手探り状態であるというのが実情である。だから、何かの縁で人に育てられることになった野鳥からいろいろなことを学びたいのである。今もし黒棒を育てるのによい餌が見つかれば、きっと今後の大きなヒントになることだろう。こんなことを言うと動物実験だといって過激な団体から突き上げをくうかもしれないが、広い視野で見れば、野生動物を救護する意義の一つはたしかにそこにある。……と柄にもなくエラソーなことを書いてしまった。赤面。
新しい年!
自然食主義の餌に変えてから、2週間たった。今のところかなりよい方向に向かっているように思われる。実は今まであまりの恐ろしさに事実を書くことができなかったのだが、12月に具合が悪くなったとき、体重は何と34gまで落ちていたのだった。それ以前1ヶ月ぐらい、ちょっと量るのをサボっていたので(反省!)直前の体重は分からないが、それまでは50g前後はあった。しかし、いくらなんでも34gは少なすぎる。ここまで落ちたらウトウト羽をふくらませて寝込むのは当たり前だろう。その直後の2〜3日は栄養たっぷりの人口餌と大量のミルワーム、冷凍毛虫、ミミズでとにかく体重を戻そうとした。1週間かかって40gまで回復したものの、それ以上は増えない。ところが餌を変えたとたん、3日で47gにまで戻った。
きれいになってきた黒棒
そして、更に驚いたことに1週間目ぐらいから、脚に何か生えてきた。ギョッとしてよくよく見ると、脚の薄皮が剥がれて落ちているのである。人間の角質みたいなものなのだろうか。それから、嘴の回りも少しずつきれいになってきた。さらに、急に羽が伸びはじめてきた。ただ、また抜ける羽も出てきた。古い、汚かった羽が抜けて、新しい羽になるのならばよいのだが……。しかし、まだとても完全な姿とは言い難いし、アイリングや脚の色も不自然なままである。今の段階ではまだ結論は出せない。もうしばらく続けて様子を見ることにする。
ボロボロだった翼もきれいに揃った 止まっているときに、
羽を広げていることがある。
下から見ると模様がきれい。
尾羽だけは情けないが……