八海山で八海山を呑もう!登山行
次の朝、銘酒『八海山』をゲット出来ないまま、ロープウェイ駅を偵察。
………………!!!!!!!!!♪♪♪♪♪
頭の中ファンファーレが鳴り響く!!
お土産物屋に光り輝く八海山がずら〜っと置いてあるではないか!!我らが銘酒『一人娘』の姿はどこにもない!
ここまでは手が回ってなかったのだ。
さすがに八海山ロープウェイ駅の土産物屋に、しつこく『一人娘』が置いてあったら新潟県酒造協会に
抗議するところであった。
四合瓶をゲットし気分良くロープウェイに乗り込む。燃えるような紅葉の山肌を這うようにゴンドラが着実に
高度を上げていく。いよいよ念願の八海山登山旅の始まりに胸を躍らせるのであった。
ロープウェイを降り65リットルザックを肩に背負い込み歩き出す。晩秋のキリッとした山の風が頬に当たり心地よい
まさに日本の秋の風景と風情に包まれ僕達はゆっくりとゆっくりと、しかし着実に歩を進めていくのであった。
久しぶりの山行にジワっと汗がにじみ出る。それを山の爽やかな空気がクールダウンしてくれる。
女人堂を超え約2時間のゆっくりとした時間を楽しみ本日の幕営目的地の千本桧小屋に到着。さっそく幕営準備にかかる、
すでにシーズンオフなので閉鎖した山小屋の脇にテントを張る事にする。テントは山岳テントのエアーライズだ。
気温はかなり低くなりつつある。予想ではマイナス5度にはなるだろう。今回はダウンシュラフのマイナス15度まで
OKのものを持ってきた。しかし横田隊員はスリーシーズン用である。ゴアテックスのレインウェアーを上下着込み、
ウールの手袋をして寒さ対策。
日本海側に沈み行く夕日に越後の山々はシルエットに浮かび上がり、雲海の中に広がる山々の様子はまるで
海に浮かぶ島のように見えた。晩秋の風景と刻々と変わり行く夕景の色が混ざり合い神秘的な風景が我々を包み込んでいった。
さっそくガスコンロに火を付け調理開始!と言っても、すき焼きセットのアルミ鍋を乗せてグツグツやるだけである。
ご飯もグツグツ温めるだけ。その間、ウイスキーで乾杯!銘酒『八海山』も少々呑んでみるが、頂上で乾杯用に残して
おかなければならないのである。
山はいつもウィスキーだ。多くの液体を持っていけばその分重量が重くなる。少しの量で酔える
濃いアルコールが最適なのである。でもやっぱりキリッ!と冷えたビールが呑みたくなるものだ。
日本アルプスの大きな山小屋ならかなり値段は高いがいつでもギンギンに冷えたビールが飲めるのだ。
山で飲む酒は下界で飲む酒とは一味も二味も違うのだ!こうしてスローな時間を過ごして下界を見下ろしてると、
時に人間がちっぽけな存在に思えてくる。ここから見る街は箱庭みたいに小さく見え人間社会のルールや
人間関係なんかがどうでもいい事の様に思える。だから僕はこんな風景や時間を求めて旅に出るのだろう。
横田隊員が夕暮れの山々の風景をカメラにおさめている。やがて紺碧の夜が訪れ、満点の星達が明るいほどに
頭上に光り輝いている。水平線のずっとずっと向こうまで星達が瞬いている。そんな神秘的な光景を無言に見つめ、
ただただウィスキーを口に運ぶだけなのであった。
エアーライズは1〜2人用テントだが男の大人2人が寝るにはかなり狭い、互い違いに寝ないと金縛り状態になるのだ。
僕はダウンのシュラフでマイナス5度の中下着姿で「あ〜!暑い、暑い!!」横田隊員はスリーシーズン用なので
「寒い!寒い!」テント内はまさに南国パラダイスと北の雪国状態の異様な状況になったのだった。
その後横田隊員はダウンのシュラフを購入したのは言うまでもない。
次の朝簡単な朝食を作り、装備を整え出発!いよいよ難所が続く八つ峰にチャレンジだ!稜線が凍り付いてる。
軽アイゼンを登山靴に装着して慎重に稜線を歩く。しばらく歩くと、いきなり道がない!!??行き止まりか?
目の前の岩にペイントされた道案内の矢印……
??!!!
なんと右とか左とかじゃなく真上?なのだ。
垂直に切り立つ岩!ここを登れってか?
まさに3Dワールドなのである。ここからがエキスパートルート。下が迂回路。迷わず迂回路にする。
凍りついた岩稜を登ってはいけないのだ。垂直の壁を登るのは体にも精神にもよくない。
我々は軟弱にもただ八海山で八海山を飲めればそれでいい!
迂回路と言っても経験のない一般登山者はこれ以上進んではいけない!又道がなくなり今度は3Dの下に矢印。
断崖絶壁に取り付けられた簡単なはしご。「マジですか〜!全然迂回路じゃありませんよ〜」
と横田隊員と顔を見合わせ。汗汗状態。