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一桁のビジネスマン《行動心理資料》より

【行為を理解する】

{上司を見る目}×{行動を観察する}×{洞察力をそだてる}
 人間のコミュニケーションと行為を、理解しようとする分野に、コミュニケーション語用論という研究があります。
狙いは、人間のコミュニケーションと行為を、抽象化して形式を明らかにし、コミュニケーション体系の基本に、しようとする考えです。

 この語用論での人間のコミュニケーションは、デジタルコミュニケーション(言語を用いた言葉)と、アナログコミュニケーション(表情・態度・行動など)の均衡のとれた併用で、行われているとしております。
 言葉による意志の表示には、言葉のもつ意味の通りの論理性と、言語を組み立てて言葉に言い表そうとする感情の二面性があります。ですから、表裏が一つにならない限り、偏ったコミュニケーションは判断を誤る原因になります。

 しかし、人間には、自己知覚(フェルトセンス)といった自分の心の内と、外部の他人との関係に反応する感覚があります。この機能は言葉がなくても単体のコミュニケーション機能です。つまり、アナログ部分を機能させる仕組みの要素になります。
 もし、上役が、一言も言わないで、自分を執務室に招き入れて、扉を締めたなら、次の中の、どちらかの意思に正しく反応させることが出来ます。

@ 上役は機嫌が良く、自分に内緒の話をしようとしている。
「その他の人々」に対して扉を締める事により、貴方とは親しいから何を話しても大丈夫だという事を示している。非常に好調だ。

A 上役がむっつりした気分でいるときには、機嫌が良くない事が解る。
 このとき上役が自分に、
「お前を一人にして、私の権力を十分に思い知らせてやろう」
と言っているのだ。

 心理学では、人間の行動は、目的と、対象となるもの(人の場合もある)について、何らかの関係づけられたとき、目的を達成しようと関係するものに働きかけます。
 従って、扉を締める行動は、上役自身が自分の立場を信じていないため、これから言おうとしている事を、他の誰かにも聞かれたくないと言う、アナログ信号(表情、態度、行動による情報)に理解されます。
 おそらくは、心にとがめるうしろめたい事があるので、扉を締めることによって、自分の立場が、確かなものになると思っているのです。

 自分の立場が思ったほど、確かでないのでは、思い通りになりませんから、気が塞ぎます。
もし、上役が貴方の部屋には入ってきて、貴方の顔を見ないで話し始めたら、こう言っているのです。
「自分は、いい男だと言うことを君に示す為に、こうしている。君は、私がもっと良く監督できるように、私のオフィスにきて貰いたい」

 上役が、貴方に課題を手渡していいます。
「急がなくても良い」
「何処でも君のスケジュールの空いてところに入れてくれたまえ」
 この場合、上役の意味しているのは、
「他の仕事は全部お預けにして、この仕事に取りかかれ」
 ということです。

 もし上役が
「そんなことはどうでもいいことだ」
 といえば、実際には
「これは困ったことだ」
 といっているのである。

 上役は本当のことを言ってるのでしょうか。必ずしもそうとは限りません。
 例えば、管理者の○○さんは、課の経費を切り詰める厳しい運動を行うと発表しました。そして、休まずに一生懸命にそれを実行しました。
 実際には、普通以上に、緊急で、経費節減するな理由など全くなかったのです。

○○さんは、ただ自分の上役に、良く思われたかっただけです。
 実行力があり、困難な決定をも下し、それを実行する厳格な人間に、思われたかったのです。そして、自分の野望を達成するために、部下を利用したのです。
○○さんは、そのことを部下に言うでしょうか?

 上役の行動を理解することは、その言うこと(デジタル言語:意味のある言葉を使用)に注意するようにすれば、難しいことではありません。
 重要なのは、上役の行動(アナログ言語:意味のある動作)である。行動の方が言葉より重要なのです。
 言葉はしばしばカモフラージュであったり、胡麻化しであったりする場合があります。

 しかし、行動は注意深く軽々しくありません。
 人間のコミュニケーション・ツールである言語は、言葉(意味のある言語:デジタル言語)と、態度(表情・動作による意志表示:アナログ言語)が均衡されて成立します。
 ですから、上役の言うことだけを受け入れるのではなく、その行動を研究することによって、上役より鋭い目で洞察することが出来るのです。

           つづく

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